【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

ヴィルside５

部屋には布も置いてあった

「この沢山の布は？」

「私、趣味でお仕着せなどを時々縫っております」

「これもお嬢様が縫ってくださったんです。裾のフリルが可愛らしくて気に入っております」

侍女は自分の着ている服の裾を広げて見せた

「何と器用な‥
王女がそのような事をするなど驚いたな」

「私は王女とは名ばかりですから。閉じ籠っているので暇つぶしの趣味ですわ。
刺繍も好きです」

そう言って自分の使っているハンカチを広げて見せた
ピンクの薔薇と蝶が刺繍してある

「これは素晴らしい出来栄えだな。
貰ってもいいかい？」

「えっ？」

アリアンとの繋がりが欲しくなった

「では、ヴィルドルフ様の為に刺繍いたします」

「いや、これがいい」

アリアンは困った顔をしていた
アリアンが持っていた物が欲しかった
俺はそのハンカチを自分のポケットにしまった
アリアンはさらに困った顔をしたが可愛すぎる
宝物にしよう

「さぁ、今日はもう帰るよ。
明日また会って欲しい。約束してくれアリアン、君に会いたい」

それから毎日約束させ離宮に会いに行った
美しく賢いアリアンに夢中になっていた
周りの者達も皆俺の変わりように驚いていた
母にアリアンを妃にしたいことを告げると婚約の準備をしておくと言ってくれた
俺は幸せすぎて少し浮かれていただろう
キーラには時々重すぎると言われた
なぜだろう
アリアンの使ったハンカチを貰って毎日頬ずりして寝ていることか？
それとも記録係に連れてきた絵師にアリアンの絵を何枚もこっそり描かせていることか？
別に重くはないだろう
アリアンは俺の精神安定剤だ、癒しというものだろう
これでも抑えている
普通だと言ってもキーラは時々睨む
主君に対して不敬であろう
あいつはすぐに水を差す
側近としては優秀だが、時々邪魔だ