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学園祭編

お披露目と項の跡

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 今回は三人称視点





 観客はただただ息をするのも忘れ見つめる。


 ステージ下から昇降装置に乗りせり上がる最中「あげは姉ぇめっちゃハードル上げんじゃん!」や「え、オレが出てってImperialの名が落ちない?」など愛加が考えていたとは誰も思わないだろう。

 スポットライトで照らされた愛加のかんばせは、髪飾りやネックガードから垂れ輝く装飾品が霞むほどの美しさだった。

 先ほどステージで話していたあげはが豪華絢爛な美しさとすれば、愛加は穢れたものを寄せ付けない荘厳で静謐せいひつな美しさが漂う。

 その愛加が従えるように手を取り両脇に立つのは、精悍で色気をかもす青年と温和な雰囲気の青年。2人共ため息をつきたくなるような肉体美を持ち、愛加をいつくしむような眼差しを向けている。

 シャラン……

 シャラン……

 歩く度に鳴るアンクレットだけが響く中、俯きがちな目線で愛加達は淡く光るフットライトとスモークが焚かれたランウェイをゆっくり移動していく。

 先端までたどり着いた惟親と宏太は愛加に体を寄せ、艶めかい手つきで華奢な脇腹やももへと這わせる。2人の首に前から腕を回す愛加に上半身や腕にペイントされた蔦が絡みつくように見え、観客は見てはいけないものを見ている気分になるが目を逸らせないでいた。

 そして2人が項へ顔を寄せネックガードの上から噛み付く仕草をし、顔を上げ恍惚の表情でか細く漏らす愉悦の声に、会場から喉を鳴らす音があちこちから聞こえてくる。

 暫くして穏やかな表情に変えた愛加の指先がネックガードを外すと、そのきめ細やかな肌に甘噛みをし舐め吸い付く行為を繰り返す2人を見て周りは違和感を覚える。

 項はΩの急所であり番以外に触られる事を嫌がる箇所。たとえ番を得ていなくても、こうも好きにさせているのは不自然ではないか。しかも2人のαらしき青年にだ。αやβなら特に気にする事ではないが、愛加はΩと周知されている。だとすればこのパフォーマンスは何なのか。それは次の動作で明らかとなる。

 愛加がくるりと背を向けさらした項にくっきりと2つの噛み跡があったのだ。

 一気にざわつく観客を気にもとめず2人は噛み跡に重ねるように甘噛みをし、これは自分の噛み跡だと主張するよう指で撫でている。

「えっ、噛み跡が2つ?」

「本物?」

「マジで?」

「番って1人じゃないの?」

「稀に『運命の番』が2人いるらしいよ」

「MANAたん最高♡」

 1人通常運転で変な事を言っているのがいるが、皆一様に驚き大きくなったざわめきが愛加が振り向きにっこりと笑い、シャラシャラとステージに戻って行く音で小さくなっていく。


「皆様これにてImperial✕宮中学園生徒会コラボのファッションショーは終了となります。
 それと諸事情につき同時にImperialのモデルとして活躍する事となる姫川愛加の番の公表をさせて頂きました。詳しくはImperialのHPにアップしてありますのでご覧下さい。
 それと今回のショーは1週間限定配信とさせて頂きます。
 それでは皆様お足元に気をつけてお帰り下さい」

 3人が完全にステージから姿を消すと場内が明るくなりあげはが再度ステージに上がって締め、一礼をし舞台袖へ下がって行く。



 ファッションショーが終わった会場にいる観客の反応は2つに分かれていた。ショーの余韻に浸る者、愛加の2つの噛み跡で騒ぐ者は一向に座ったまま会場を後にする気配は無い。一方我先にと会場を出る者達は皆早くスマホを受け取り情報をと、荷物を預かっている受け付けに殺到していた。

 もちろん樫木竜二は余韻に浸っている側である。

 その日ネット検索ワードが「Imperial」「姫川愛加モデル」「噛み跡2つ」「運命の番が2人」が上位を占めたという。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 安定の樫木竜二w
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