51 / 79
学園祭編
学園祭1日目④
しおりを挟む
「ま…まあ……あげはさんの言った通りでしたね」
「だね……」
腕を擦りながら言う一ノ蔵さんに同意する。あげは姉ぇが「あの理事長の甥ならやりかねない」と今回生徒会と風紀に弁当と飲み物を差し入れしてくれたんだよね。だからさっき一ノ蔵さんが配ったペットボトルはインペリアルからの差し入れだ。それ以外は学園祭の最中口にするなと厳命されている。
まあ、いくら番っていて抑制剤を飲んでても口内摂取してしまえばどうしようもないからだ。特にαは発情になってしまえば番じゃなくても襲う可能性があるからな。
「やっほー休憩終了したよー」
「お腹すいたー」
「「………ん?」」
番の子を構い倒してきた双子が部屋の空気がおかしい事に気付く。実行委員が持って来たお弁当をジップロックに入れ赤い字で「食べるなキケン」と書いていた裕司が説明すると「やべーあいつ」「ボコッてくる?」なんてヤバいこと言って拳をにぎにぎし始めたからめっちゃ止めた。即戦闘態勢ってあの双子戦闘民族か?
「それより少し早いですがお昼にしましょう」
オレ達が双子を止めるのを頑張っていた傍らで一ノ蔵さんが弁当を配っていた。冷静だな。
「「わーい」」
余程お腹が空いていたのかあっさりと席に座り双子が弁当の蓋を開ける。切り替えが早いのは唖然としたけど助かった。オレ達も席に座り早めの昼食にする。普通の弁当より大きいと思っていたら懐石弁当だった。花の形の人参や蓮根と里芋の煮物、ブリの照焼、細切り大根のたらこ和え、ローストビーフ、海老しんじょ、こごみの天ぷら、松茸ご飯……学園祭の差し入れにしては豪華じゃね?
「うまーい」
「「夕凪」の懐石弁当ですか。豪勢ですね」
皆んな口に合ったようで幸せそうに食べている。うん、美味しいよな。ここたまに撮影でケータリングするけどどれも美味しいんだよな。まあ、この前そこに高野豆腐にイチゴソースかけたの置いといてあげは姉ぇに追いかけられたけどな!その後佳兄ぃにお仕置きされたのは………思い出したくない。ブルリ
「……ところでお弁当なんですが、かなり余ってるんですよね」
そう言われて見ると弁当が山積みになっている。ひーふーみー……30個くらいある。
「風紀に持って行ってないんじゃないの?」
「いえ、風紀分は椿さんが持って行かれました」
「えー、じゃあ何だろ?注文し過ぎたのかな?」
あげは姉ぇが個数間違えたのか?あの人きっちりしてるから無さそうだけどなぁ。スタッフが注文したのかな?
「残してても仕方ないから食べたい人が食べればいいんじゃない?」
「「やった、食べる!」」
「俺も」
言い切るより早く双子と裕司がいそいそと弁当を取る。おい裕司、3個も取って食べ切れるのか?食べ盛りだから大丈夫?まー若いわねぇ。
さすがに全ては消費できないからと残りは風紀と廊下の入口にいる親衛隊に持って行くことに。風紀は体を使うだろうし、親衛隊は学園祭の時まで出入りする生徒をチェックしてくれてるから差し入れの差し入れだ。
食べ終え双子が弁当を持って行っている間に午後の見回りの確認をしていく。実行委員がやれればいいんだけど、講堂や体育館での催し物の裏方をやったりするのでそこまで手が回らないらしい。まあ、見回りといっても風紀と違いパトロールではなくクラスや部活の催し物の不備が無いかの確認なので主に教室を巡回する。午前中は特にトラブルは無かったみたいだけど毎年何かしらはあるらしい。
「くれぐれも1人で行動するなよ。特にマナ」
「うえっ?」
やだー、信用されてませんことよ奥様!体育館倉庫の事もあるし心配してるのも分かるから真面目に頷いておく。裕司が引っ付いているだろうし今回は大丈夫だろう。
「愛加様、おれが…むぐ……ついてるから…モグ…だいじょうぶれふよ」
うおぉぉぉい、裕司まだ弁当食べてたんかい!腹壊すぞ!よくそんなちっこい(本人には言えない)体でそんなに入るな!
1個目を食べた時の勢いのまま3個目に突入した裕司を呆れながら見ていると、チカの携帯が鳴る。普段この時間帯に鳴らない携帯が鳴るという事は大体が悪い知らせである。
「何だ。……分かった」
誰から来たのか分からないけど相手に言われたんだろう、通話をスピーカーに切り換える。
「……聞こえるか?吉永だ。今実行委員から電話があって実行委員数人が発情期を起こしたらしい」
「「「ええっ⁉」」」
「連絡が来たばかりだから原因は不明だが、交代で休憩していたらΩの生徒が次々とヒートになってαの生徒も発情を起こしかけているらしい」
うわっ、ヤバいじゃん!実行委員が使っている部屋は確か中央棟の4階、2、3階が部活の催し物とかで使われていたハズ。バリケードで上がれないようにしてるけどフェロモンが下の階まで来てしまったら意味をなさない。
「既に椿やβの風紀を向かわせて保険医にも連絡済みだが人手が足りん。そこに八重樫の弟いるんだろ?そいつを寄越せ」
「ふぁ~い、いきま……むぐっ!」
「……何だ今の間抜けな声は」
お前呑気に弁当食ってるから喉に詰まらせるんだぞ!しかも吉永さんの声がワントーン低くなったし!
「分かった、裕司を向かわせる」
「頼む」
通話が切れたと同時に双子が慌てて戻って来る。どうやら風紀に弁当を持って行った時に連絡が来て聞いたようだ。
「まずいな……αが発情を起こしかけてるならβじゃ押さえきれないかもしれん」
そうなんだよな。ただでさえ力が強いαがラットを起こすと同じαでも押さえ込むのが大変らしい。
「俺が行こう。五月雨兄妹、宏太、相沢もだ。一ノ蔵はΩのヒートにあてられるかもしれないからここで待機、マナもだ」
「いや、オレも行く」
「ダメだ。ラットのαは危険だ」
「分かってる!でも同じΩが急なヒートで苦しんでいるんだ!一緒に行く!」
集団発情期なんて聞いた事がない。多分強制発情期だ、パニックを起こしてるかもしれない。それなのにαやβに触られるなんて辛いはずだ。ここは譲れない。
「……裕司、マナを守れ」
「まかふぇてくらさい」
まだ食ってんのか!ほっぺパンパンにして敬礼すんな。
「行くぞ」
「「おー」」
腕を振り回しながら駆け出す双子を追いかける。止めるんだ、戦いに行くんじゃないんだぞ。って聞かないか。
さて、大変な事になったぞ。
「だね……」
腕を擦りながら言う一ノ蔵さんに同意する。あげは姉ぇが「あの理事長の甥ならやりかねない」と今回生徒会と風紀に弁当と飲み物を差し入れしてくれたんだよね。だからさっき一ノ蔵さんが配ったペットボトルはインペリアルからの差し入れだ。それ以外は学園祭の最中口にするなと厳命されている。
まあ、いくら番っていて抑制剤を飲んでても口内摂取してしまえばどうしようもないからだ。特にαは発情になってしまえば番じゃなくても襲う可能性があるからな。
「やっほー休憩終了したよー」
「お腹すいたー」
「「………ん?」」
番の子を構い倒してきた双子が部屋の空気がおかしい事に気付く。実行委員が持って来たお弁当をジップロックに入れ赤い字で「食べるなキケン」と書いていた裕司が説明すると「やべーあいつ」「ボコッてくる?」なんてヤバいこと言って拳をにぎにぎし始めたからめっちゃ止めた。即戦闘態勢ってあの双子戦闘民族か?
「それより少し早いですがお昼にしましょう」
オレ達が双子を止めるのを頑張っていた傍らで一ノ蔵さんが弁当を配っていた。冷静だな。
「「わーい」」
余程お腹が空いていたのかあっさりと席に座り双子が弁当の蓋を開ける。切り替えが早いのは唖然としたけど助かった。オレ達も席に座り早めの昼食にする。普通の弁当より大きいと思っていたら懐石弁当だった。花の形の人参や蓮根と里芋の煮物、ブリの照焼、細切り大根のたらこ和え、ローストビーフ、海老しんじょ、こごみの天ぷら、松茸ご飯……学園祭の差し入れにしては豪華じゃね?
「うまーい」
「「夕凪」の懐石弁当ですか。豪勢ですね」
皆んな口に合ったようで幸せそうに食べている。うん、美味しいよな。ここたまに撮影でケータリングするけどどれも美味しいんだよな。まあ、この前そこに高野豆腐にイチゴソースかけたの置いといてあげは姉ぇに追いかけられたけどな!その後佳兄ぃにお仕置きされたのは………思い出したくない。ブルリ
「……ところでお弁当なんですが、かなり余ってるんですよね」
そう言われて見ると弁当が山積みになっている。ひーふーみー……30個くらいある。
「風紀に持って行ってないんじゃないの?」
「いえ、風紀分は椿さんが持って行かれました」
「えー、じゃあ何だろ?注文し過ぎたのかな?」
あげは姉ぇが個数間違えたのか?あの人きっちりしてるから無さそうだけどなぁ。スタッフが注文したのかな?
「残してても仕方ないから食べたい人が食べればいいんじゃない?」
「「やった、食べる!」」
「俺も」
言い切るより早く双子と裕司がいそいそと弁当を取る。おい裕司、3個も取って食べ切れるのか?食べ盛りだから大丈夫?まー若いわねぇ。
さすがに全ては消費できないからと残りは風紀と廊下の入口にいる親衛隊に持って行くことに。風紀は体を使うだろうし、親衛隊は学園祭の時まで出入りする生徒をチェックしてくれてるから差し入れの差し入れだ。
食べ終え双子が弁当を持って行っている間に午後の見回りの確認をしていく。実行委員がやれればいいんだけど、講堂や体育館での催し物の裏方をやったりするのでそこまで手が回らないらしい。まあ、見回りといっても風紀と違いパトロールではなくクラスや部活の催し物の不備が無いかの確認なので主に教室を巡回する。午前中は特にトラブルは無かったみたいだけど毎年何かしらはあるらしい。
「くれぐれも1人で行動するなよ。特にマナ」
「うえっ?」
やだー、信用されてませんことよ奥様!体育館倉庫の事もあるし心配してるのも分かるから真面目に頷いておく。裕司が引っ付いているだろうし今回は大丈夫だろう。
「愛加様、おれが…むぐ……ついてるから…モグ…だいじょうぶれふよ」
うおぉぉぉい、裕司まだ弁当食べてたんかい!腹壊すぞ!よくそんなちっこい(本人には言えない)体でそんなに入るな!
1個目を食べた時の勢いのまま3個目に突入した裕司を呆れながら見ていると、チカの携帯が鳴る。普段この時間帯に鳴らない携帯が鳴るという事は大体が悪い知らせである。
「何だ。……分かった」
誰から来たのか分からないけど相手に言われたんだろう、通話をスピーカーに切り換える。
「……聞こえるか?吉永だ。今実行委員から電話があって実行委員数人が発情期を起こしたらしい」
「「「ええっ⁉」」」
「連絡が来たばかりだから原因は不明だが、交代で休憩していたらΩの生徒が次々とヒートになってαの生徒も発情を起こしかけているらしい」
うわっ、ヤバいじゃん!実行委員が使っている部屋は確か中央棟の4階、2、3階が部活の催し物とかで使われていたハズ。バリケードで上がれないようにしてるけどフェロモンが下の階まで来てしまったら意味をなさない。
「既に椿やβの風紀を向かわせて保険医にも連絡済みだが人手が足りん。そこに八重樫の弟いるんだろ?そいつを寄越せ」
「ふぁ~い、いきま……むぐっ!」
「……何だ今の間抜けな声は」
お前呑気に弁当食ってるから喉に詰まらせるんだぞ!しかも吉永さんの声がワントーン低くなったし!
「分かった、裕司を向かわせる」
「頼む」
通話が切れたと同時に双子が慌てて戻って来る。どうやら風紀に弁当を持って行った時に連絡が来て聞いたようだ。
「まずいな……αが発情を起こしかけてるならβじゃ押さえきれないかもしれん」
そうなんだよな。ただでさえ力が強いαがラットを起こすと同じαでも押さえ込むのが大変らしい。
「俺が行こう。五月雨兄妹、宏太、相沢もだ。一ノ蔵はΩのヒートにあてられるかもしれないからここで待機、マナもだ」
「いや、オレも行く」
「ダメだ。ラットのαは危険だ」
「分かってる!でも同じΩが急なヒートで苦しんでいるんだ!一緒に行く!」
集団発情期なんて聞いた事がない。多分強制発情期だ、パニックを起こしてるかもしれない。それなのにαやβに触られるなんて辛いはずだ。ここは譲れない。
「……裕司、マナを守れ」
「まかふぇてくらさい」
まだ食ってんのか!ほっぺパンパンにして敬礼すんな。
「行くぞ」
「「おー」」
腕を振り回しながら駆け出す双子を追いかける。止めるんだ、戦いに行くんじゃないんだぞ。って聞かないか。
さて、大変な事になったぞ。
68
お気に入りに追加
175
あなたにおすすめの小説
【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
第12回BL大賞奨励賞いただきました!ありがとうございます。僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して、公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…我慢の限界で田舎の領地から家出をして来た。もう戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが我らが坊ちゃま…ジュリアス様だ!坊ちゃまと初めて会った時、不思議な感覚を覚えた。そして突然閃く「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけにジュリアス様が主人公だ!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。だけど何で?全然シナリオ通りじゃないんですけど?
お気に入り&いいね&感想をいただけると嬉しいです!孤独な作業なので(笑)励みになります。
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
番に囲われ逃げられない
ネコフク
BL
高校の入学と同時に入寮した部屋へ一歩踏み出したら目の前に笑顔の綺麗な同室人がいてあれよあれよという間にベッドへ押し倒され即挿入!俺Ωなのに同室人で学校の理事長の息子である颯人と一緒にα寮で生活する事に。「ヒートが来たら噛むから」と宣言され有言実行され番に。そんなヤベェ奴に捕まったΩとヤベェαのちょっとしたお話。
結局現状を受け入れている受けとどこまでも囲い込もうとする攻めです。オメガバース。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
元ベータ後天性オメガ
桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。
ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。
主人公(受)
17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。
ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。
藤宮春樹(ふじみやはるき)
友人兼ライバル(攻)
金髪イケメン身長182cm
ベータを偽っているアルファ
名前決まりました(1月26日)
決まるまではナナシくん‥。
大上礼央(おおかみれお)
名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥
⭐︎コメント受付中
前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。
宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。
僕はただの妖精だから執着しないで
ふわりんしず。
BL
BLゲームの世界に迷い込んだ桜
役割は…ストーリーにもあまり出てこないただの妖精。主人公、攻略対象者の恋をこっそり応援するはずが…気付いたら皆に執着されてました。
お願いそっとしてて下さい。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
多分短編予定
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる