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生徒会編
久しぶりに登校したら転入生がとんでもない主張をしてきた
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今回は久しぶりに愛加視点です。
「あー、学校久しぶりー」
1か月近くぶりの登校になるも1限目には間に合わず、それならばと校門からゆっくりと宏太と歩いている。
校門から校舎まではかなり距離がある。6月なので道路脇の花壇は季節ごとに入れ替えがされていて今はグラデーションがかった紫陽花が咲き誇っている。
昨日は何とか夜にチカに会えたけどよっぽど疲れていたのかイチャイチャしている間にチカが寝てしまい、朝早く寮に戻って行ったのでお互いちょっと不完全燃焼だ。
「久しぶりすぎて皆んなオレらのこと忘れてないかなー?」
「大丈夫でしょ。それより今大変なことになってるみたいだからそっちに気がいってるかもね。でも気をつけないと」
「……あー、チカや白畑から聞いてるアレ?αが狙われてるんだからオレより宏太が気をつけろよ」
「大丈夫、惟親さんが平気なら僕も平気だよ」
安心させるように頭を抱き寄せられキスされるが不安なものは不安なのだ。
ポカポカと宏太の胸を叩いていると、後ろからどさりと何かが落ちる音がしたので振り返ると1人の生徒が立っていた。
「MANAたん………!」
「えっ?」
190はありそうながっしりとした体。長めの前髪は金髪で、それを後ろに流すようになであげ刈り上げている。顔は険があるけど整っていて何個もピアスを着けている風貌はヤンキーだ。
そんな生徒がオレを見て呆然としながらも頬を染めている。
「あっ、そのっ……MANA-CAのデザイナー兼モデルのMANAですよね⁉おおおおお俺大ファンなんですっ!!」
うそーん、ソッコーバレたー!
というか今のオレマスクに濃い色付きの眼鏡かけてかなりの不審者スタイルで顔も分からないと思うんだけど⁉
「何故だ、何故分かったぁぁぁ!!」
「わっ、怒った顔もかわっ……」
見上げる形で詰め寄るオレに狼狽える生徒。かわってなんだかわって⁉
「ちょっと愛加落ち着いて」
「うおっ、コウもいるっ!」
後ろから抱きしめられ香るフェロモンに少しすつ落ち着いてくる。宏太のことを「コウ」と呼んだことからこの前配信したライブの招待客だということが分かった。
そういえばいた、1人だけ学園の人が。バレたくないから招待するのを悩んだけど、初めての購入者だったしフルコンプコレクターだったから無下に出来なかったんだよなぁ。それに一度会ってるし。
少し考えてからその生徒をずいっと見上げる。
「ちょっとお願いがあるんだけど」
「お願い⁉MANAたんが俺にお願い⁉なななななんでしょう⁉」
「騒がれたくないからボクとコウが学園に通っていることナイショにしてほしいんだ」
眼鏡を下にずらし上目づかいでお願いする。
「………ナイショ……」
「うん、ナイショ☆」
「ナイショですねっ!分かりましたっ!」
サービスでにっこり営業スマイルをしたけどマスクしてたの忘れてたわ。まあマスク姿でも分かる人なら大丈夫だろう。
「じゃっ、そういうことで。またね竜司サン」
「なっ、MANAたんが俺の名前を………」
いたく感激して立ち尽くしている竜司を残し宏太と校舎に入るとちょうど1限目終了の音が鳴った。
「姫ぇ~王子ぃ~」
クラスから選択授業だった他のクラスの生徒がぞろぞろと出てきて、その波が終わったタイミングで中に入ると、久しぶりの井上が手を広げ駆け寄って来る。
「ぐえっ」
「井上久しぶり」
がっつり宏太に顔面を押さえられている井上がカエルを潰したような声を出している。そういうタイプじゃなかったんだけど、番になってから寄って来る相手にちょっと容赦がなくなった気がする。
「王子ヒドい~」
「愛加に抱き着こうとしてたから。仕方ないよね」
「えー、今俺抱き着こうとしてた?…うん!してたな俺、すまん!」
手を合わせごめんポーズをとる井上に、後ろからオレを抱いた状態で気をつけてねと言う宏太は通常運転に戻ったようだ。
ふと、井上の後ろを見ると白畑が机に座っているのが見える。オレと宏太が休む前よりやつれていて、目の下にも隈ができている。
「白畑大丈夫?」
「ああ、久しぶり。大丈夫」
青白い顔なのにほんのり頬が赤い。どう見ても大丈夫に見えない。
「大丈夫じゃないだろ。保健室行った方がいいんじゃないか?」
話には聞いてたけど恋人の貴島が転入生にべったりなのが影響してるんだろう。αだからΩのフェロモンに惹かれるのは仕方ないことかもしれないけど、それだけであんなに想い合っていた2人がぷつりと切れるのが悔しい。
「熱とか無いから平気。僕もαだからΩのフェロモンに惹かれるのは分かるんだ。あの微妙な匂いに持ってかれたかと思うと落ち込むけどああなっても貴島のこと好きだから……」
困り顔で弱々しく笑う白畑はαというよりΩのように庇護欲をそそる。
「わー、そんな顔すんなよー。オレが守ってやるからー」
ぎゅうぎゅうと白畑を抱きしめるオレの後ろで「いいのか?」「白畑はいいの」「差別!」って聞こえてきたけど宏太的がダメでもオレは白畑を抱きしめるぜ!
ざわざわと教室の入口付近の廊下が騒がしくなったと思ったらけたたましい声が聞こえてくる。顔を向けていないけど分かる。これか、チカを『運命』と呼ぶ転入生は。
「あ~~~!!お前初めて見る顔だな!」
早速宏太が目をつけられたようだ。ざわりと不穏な空気になったのも気にせず宏太の目の前に来てキラキラした目で見上げている。その姿はモジャモジャ瓶底眼鏡ではなく、サラサラな金髪青目の美少年。どうやらモジャ眼鏡はやめたようだ。
「誰?」
チカから聞いていて知ってるのに初めましての様を見せる宏太は「鼻の奥が痛ぇ」とぼそりとこぼす。
「俺は立花樹、お前格好いいな!名前何て言うんだ?」
「言いたくない」
耐えきれなくなったようで宏太がオレを後ろから抱き込み、項に顔を埋め新鮮な空気を肺に取り込むように匂いを嗅ぎ始める。
「あ~愛加の匂い、癒やされる」
「なっ⁉無視するな!俺が美少年過ぎて見れないのか!?」
確かにΩらしい美少年だけど自信と傲慢さが出ていてちょっと引く。周りはいつものことなのか冷めた目で見ているが、転入生の後ろに控えている取り巻きは頷いている。控えめは日本人の美徳だぞ。
「あ゙?」
さっきから普段と違う宏太が出てきすぎじゃないか?そんな宏太も好きだけどな!つーか、項がくすぐったいですよ宏太サン。
「美少年過ぎて見れないなら慣れろよ!だって俺とお前『運命』だろ!」
「「「「はあっ!?」」」」
(何言ってんだお前⁉)
後にクラスの一生徒が言う。
「二度目のクラスの心が一つになった瞬間だった」と。
「何言ってるんだ貴様。貴様ごときが運命なわけが無いだろう。僕の運命は愛加だ」
「ひょっ!」
後ろ!後ろ!冷気が後ろから流れて来るんですけど⁉見なくても分かる宏太のチカモード。チカと宏太、激怒するとそっくりなんだよなぁ。それに顔は能面になっているに違いない。威圧フェロモン出してないけど周りが青ざめてるもんな。
「愛加って誰だよ⁉あっ、お前か、皆んなが言ってた姫川ってブサイク!」
「ひえっ…」
別に転入生に気圧されたわけではない。宏太の怒りのボルテージが上がったのが分かったからだ。やめてくれ転入生、これ以上油を注ぐと威圧フェロモンを出すから!
「誰が姫のことブサイクって言ったんだ?ブサイクはお前だろ。性格ブサイクが顔に出てるぞケケッ」
「なっ⁉美少年の俺に向かってなんだと⁉お前βのくせに生意気だぞ!」
井上が気をそらしたことによって少しだけ宏太が纏う空気が軽くなった。勇者だな井上、後で購買でパンを買ってしんぜよう。
それより白畑がさっきより頬が赤くなり呼吸が荒くなっているのが心配だ。貴島も転入生の後ろで立ってるけどチラチラと白畑を見ている。やっぱり心配してる……?
「会長にも貴様は『運命』とのたまったらしいな。なのに僕にも『運命』とは」
嘲るように宏太が言うと転入生が顔を真っ赤にする。
「知ってたのか!それは…その、……そうあれだ!『運命の番』が2人いるんだ俺は!一流のΩだからな!一流のα2人が運命でもおかしくないだろ!」
「「は?」」
おっと、宏太とハモってしまった。α2人とΩ1人の番は稀だけどいる。現にオレとチカと宏太がその関係だ。病院でもきちんと検査して証明されているし、学園に出してはいないけど番証明の正式な書類だってある。チカと宏太を『運命』と言ってる転入生のフェロモンに惹かれていない2人を見れば違うのは明らかだ。
違うと分かっていても勝手にオレの番を『運命』と言う転入生が気に食わない。
「あのさ、さっき宏太も言ったけどオレと宏太は『運命』なんだよ。お前じゃない。会長だってそうだ。ものすご~く迷惑だって言ってたぞ」
凄んで言ったつもりだったけど、後ろから宏太に抱きしめられてる状態では迫力はほぼない。
「うるせぇブサイク!俺が運命だって言ったら運命なんだよ!お前ブサイク過ぎてマスクと眼鏡してんだろ!」
「!!」
あーあ、威圧する範囲を絞る理性は残ってるみたいだけど宏太がキレて威圧フェロモンを出してしまった。目の前2m先のヤツらが固まっているし、遠巻きに見ているクラスメイトも息を飲んでいるのが分かる。まあオレは今マスクにサングラスじゃないけど色眼鏡で全く顔が見えてない状態だしな。今取れにくいボディペイントを顔までしてるから隠してるけどあの自信なら顔見せてもブサイクって言われそうだな。
「まあまあ、ブサイクって言われてもしょうがないじゃん?今モロ不審者だし?」
「愛加ぁ~優しすぎ」
ポンポンと抱きしめている腕を宥めるように叩くとすりすりと頭に頬を寄せてくる。
「ブサイクに…ブサイクって言って何が……悪いんだ……ひいっ!」
青ざめながらも気力で言い放つのは凄いけどさらに強くなった威圧で尻もちをついてしまった。
「ちょっ、宏太威圧フェロモンが強すぎるって!広範囲に出てる出てる!」
焦っててしてしと強く腕を叩き宏太にやめろと合図をしていると、後ろでどさっと音がして首だけ振り返ると白畑が床に倒れていて肩で息をしている。
「白畑⁉」
あの呼吸、震え、表情。あれをオレは知っている。嘘だろ、だって、だって白畑は………
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
久々(?)に新キャラ竜司が出てきました!
彼は番外編ヨンスタライブで愛加を天使呼ばわりしていた人物です。
フルネームは樫木竜司、3年生でα。イカつく圧があり、お金持ち学校には珍しい喧嘩っ早いヤンキーで取り巻きがいます。
愛加のファンで普段口が悪いのに愛加の事になると語彙力がおかしくなり、口調も丁寧になります。
「あー、学校久しぶりー」
1か月近くぶりの登校になるも1限目には間に合わず、それならばと校門からゆっくりと宏太と歩いている。
校門から校舎まではかなり距離がある。6月なので道路脇の花壇は季節ごとに入れ替えがされていて今はグラデーションがかった紫陽花が咲き誇っている。
昨日は何とか夜にチカに会えたけどよっぽど疲れていたのかイチャイチャしている間にチカが寝てしまい、朝早く寮に戻って行ったのでお互いちょっと不完全燃焼だ。
「久しぶりすぎて皆んなオレらのこと忘れてないかなー?」
「大丈夫でしょ。それより今大変なことになってるみたいだからそっちに気がいってるかもね。でも気をつけないと」
「……あー、チカや白畑から聞いてるアレ?αが狙われてるんだからオレより宏太が気をつけろよ」
「大丈夫、惟親さんが平気なら僕も平気だよ」
安心させるように頭を抱き寄せられキスされるが不安なものは不安なのだ。
ポカポカと宏太の胸を叩いていると、後ろからどさりと何かが落ちる音がしたので振り返ると1人の生徒が立っていた。
「MANAたん………!」
「えっ?」
190はありそうながっしりとした体。長めの前髪は金髪で、それを後ろに流すようになであげ刈り上げている。顔は険があるけど整っていて何個もピアスを着けている風貌はヤンキーだ。
そんな生徒がオレを見て呆然としながらも頬を染めている。
「あっ、そのっ……MANA-CAのデザイナー兼モデルのMANAですよね⁉おおおおお俺大ファンなんですっ!!」
うそーん、ソッコーバレたー!
というか今のオレマスクに濃い色付きの眼鏡かけてかなりの不審者スタイルで顔も分からないと思うんだけど⁉
「何故だ、何故分かったぁぁぁ!!」
「わっ、怒った顔もかわっ……」
見上げる形で詰め寄るオレに狼狽える生徒。かわってなんだかわって⁉
「ちょっと愛加落ち着いて」
「うおっ、コウもいるっ!」
後ろから抱きしめられ香るフェロモンに少しすつ落ち着いてくる。宏太のことを「コウ」と呼んだことからこの前配信したライブの招待客だということが分かった。
そういえばいた、1人だけ学園の人が。バレたくないから招待するのを悩んだけど、初めての購入者だったしフルコンプコレクターだったから無下に出来なかったんだよなぁ。それに一度会ってるし。
少し考えてからその生徒をずいっと見上げる。
「ちょっとお願いがあるんだけど」
「お願い⁉MANAたんが俺にお願い⁉なななななんでしょう⁉」
「騒がれたくないからボクとコウが学園に通っていることナイショにしてほしいんだ」
眼鏡を下にずらし上目づかいでお願いする。
「………ナイショ……」
「うん、ナイショ☆」
「ナイショですねっ!分かりましたっ!」
サービスでにっこり営業スマイルをしたけどマスクしてたの忘れてたわ。まあマスク姿でも分かる人なら大丈夫だろう。
「じゃっ、そういうことで。またね竜司サン」
「なっ、MANAたんが俺の名前を………」
いたく感激して立ち尽くしている竜司を残し宏太と校舎に入るとちょうど1限目終了の音が鳴った。
「姫ぇ~王子ぃ~」
クラスから選択授業だった他のクラスの生徒がぞろぞろと出てきて、その波が終わったタイミングで中に入ると、久しぶりの井上が手を広げ駆け寄って来る。
「ぐえっ」
「井上久しぶり」
がっつり宏太に顔面を押さえられている井上がカエルを潰したような声を出している。そういうタイプじゃなかったんだけど、番になってから寄って来る相手にちょっと容赦がなくなった気がする。
「王子ヒドい~」
「愛加に抱き着こうとしてたから。仕方ないよね」
「えー、今俺抱き着こうとしてた?…うん!してたな俺、すまん!」
手を合わせごめんポーズをとる井上に、後ろからオレを抱いた状態で気をつけてねと言う宏太は通常運転に戻ったようだ。
ふと、井上の後ろを見ると白畑が机に座っているのが見える。オレと宏太が休む前よりやつれていて、目の下にも隈ができている。
「白畑大丈夫?」
「ああ、久しぶり。大丈夫」
青白い顔なのにほんのり頬が赤い。どう見ても大丈夫に見えない。
「大丈夫じゃないだろ。保健室行った方がいいんじゃないか?」
話には聞いてたけど恋人の貴島が転入生にべったりなのが影響してるんだろう。αだからΩのフェロモンに惹かれるのは仕方ないことかもしれないけど、それだけであんなに想い合っていた2人がぷつりと切れるのが悔しい。
「熱とか無いから平気。僕もαだからΩのフェロモンに惹かれるのは分かるんだ。あの微妙な匂いに持ってかれたかと思うと落ち込むけどああなっても貴島のこと好きだから……」
困り顔で弱々しく笑う白畑はαというよりΩのように庇護欲をそそる。
「わー、そんな顔すんなよー。オレが守ってやるからー」
ぎゅうぎゅうと白畑を抱きしめるオレの後ろで「いいのか?」「白畑はいいの」「差別!」って聞こえてきたけど宏太的がダメでもオレは白畑を抱きしめるぜ!
ざわざわと教室の入口付近の廊下が騒がしくなったと思ったらけたたましい声が聞こえてくる。顔を向けていないけど分かる。これか、チカを『運命』と呼ぶ転入生は。
「あ~~~!!お前初めて見る顔だな!」
早速宏太が目をつけられたようだ。ざわりと不穏な空気になったのも気にせず宏太の目の前に来てキラキラした目で見上げている。その姿はモジャモジャ瓶底眼鏡ではなく、サラサラな金髪青目の美少年。どうやらモジャ眼鏡はやめたようだ。
「誰?」
チカから聞いていて知ってるのに初めましての様を見せる宏太は「鼻の奥が痛ぇ」とぼそりとこぼす。
「俺は立花樹、お前格好いいな!名前何て言うんだ?」
「言いたくない」
耐えきれなくなったようで宏太がオレを後ろから抱き込み、項に顔を埋め新鮮な空気を肺に取り込むように匂いを嗅ぎ始める。
「あ~愛加の匂い、癒やされる」
「なっ⁉無視するな!俺が美少年過ぎて見れないのか!?」
確かにΩらしい美少年だけど自信と傲慢さが出ていてちょっと引く。周りはいつものことなのか冷めた目で見ているが、転入生の後ろに控えている取り巻きは頷いている。控えめは日本人の美徳だぞ。
「あ゙?」
さっきから普段と違う宏太が出てきすぎじゃないか?そんな宏太も好きだけどな!つーか、項がくすぐったいですよ宏太サン。
「美少年過ぎて見れないなら慣れろよ!だって俺とお前『運命』だろ!」
「「「「はあっ!?」」」」
(何言ってんだお前⁉)
後にクラスの一生徒が言う。
「二度目のクラスの心が一つになった瞬間だった」と。
「何言ってるんだ貴様。貴様ごときが運命なわけが無いだろう。僕の運命は愛加だ」
「ひょっ!」
後ろ!後ろ!冷気が後ろから流れて来るんですけど⁉見なくても分かる宏太のチカモード。チカと宏太、激怒するとそっくりなんだよなぁ。それに顔は能面になっているに違いない。威圧フェロモン出してないけど周りが青ざめてるもんな。
「愛加って誰だよ⁉あっ、お前か、皆んなが言ってた姫川ってブサイク!」
「ひえっ…」
別に転入生に気圧されたわけではない。宏太の怒りのボルテージが上がったのが分かったからだ。やめてくれ転入生、これ以上油を注ぐと威圧フェロモンを出すから!
「誰が姫のことブサイクって言ったんだ?ブサイクはお前だろ。性格ブサイクが顔に出てるぞケケッ」
「なっ⁉美少年の俺に向かってなんだと⁉お前βのくせに生意気だぞ!」
井上が気をそらしたことによって少しだけ宏太が纏う空気が軽くなった。勇者だな井上、後で購買でパンを買ってしんぜよう。
それより白畑がさっきより頬が赤くなり呼吸が荒くなっているのが心配だ。貴島も転入生の後ろで立ってるけどチラチラと白畑を見ている。やっぱり心配してる……?
「会長にも貴様は『運命』とのたまったらしいな。なのに僕にも『運命』とは」
嘲るように宏太が言うと転入生が顔を真っ赤にする。
「知ってたのか!それは…その、……そうあれだ!『運命の番』が2人いるんだ俺は!一流のΩだからな!一流のα2人が運命でもおかしくないだろ!」
「「は?」」
おっと、宏太とハモってしまった。α2人とΩ1人の番は稀だけどいる。現にオレとチカと宏太がその関係だ。病院でもきちんと検査して証明されているし、学園に出してはいないけど番証明の正式な書類だってある。チカと宏太を『運命』と言ってる転入生のフェロモンに惹かれていない2人を見れば違うのは明らかだ。
違うと分かっていても勝手にオレの番を『運命』と言う転入生が気に食わない。
「あのさ、さっき宏太も言ったけどオレと宏太は『運命』なんだよ。お前じゃない。会長だってそうだ。ものすご~く迷惑だって言ってたぞ」
凄んで言ったつもりだったけど、後ろから宏太に抱きしめられてる状態では迫力はほぼない。
「うるせぇブサイク!俺が運命だって言ったら運命なんだよ!お前ブサイク過ぎてマスクと眼鏡してんだろ!」
「!!」
あーあ、威圧する範囲を絞る理性は残ってるみたいだけど宏太がキレて威圧フェロモンを出してしまった。目の前2m先のヤツらが固まっているし、遠巻きに見ているクラスメイトも息を飲んでいるのが分かる。まあオレは今マスクにサングラスじゃないけど色眼鏡で全く顔が見えてない状態だしな。今取れにくいボディペイントを顔までしてるから隠してるけどあの自信なら顔見せてもブサイクって言われそうだな。
「まあまあ、ブサイクって言われてもしょうがないじゃん?今モロ不審者だし?」
「愛加ぁ~優しすぎ」
ポンポンと抱きしめている腕を宥めるように叩くとすりすりと頭に頬を寄せてくる。
「ブサイクに…ブサイクって言って何が……悪いんだ……ひいっ!」
青ざめながらも気力で言い放つのは凄いけどさらに強くなった威圧で尻もちをついてしまった。
「ちょっ、宏太威圧フェロモンが強すぎるって!広範囲に出てる出てる!」
焦っててしてしと強く腕を叩き宏太にやめろと合図をしていると、後ろでどさっと音がして首だけ振り返ると白畑が床に倒れていて肩で息をしている。
「白畑⁉」
あの呼吸、震え、表情。あれをオレは知っている。嘘だろ、だって、だって白畑は………
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
久々(?)に新キャラ竜司が出てきました!
彼は番外編ヨンスタライブで愛加を天使呼ばわりしていた人物です。
フルネームは樫木竜司、3年生でα。イカつく圧があり、お金持ち学校には珍しい喧嘩っ早いヤンキーで取り巻きがいます。
愛加のファンで普段口が悪いのに愛加の事になると語彙力がおかしくなり、口調も丁寧になります。
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