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生徒会編

立花樹

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 俺は立花樹、Ωだ。

 社長である日本人の父とモデルだったイギリス人の母の間に産まれた所謂いわゆるハーフだ。勝ち組を保証された人生だが、さらに金髪青目の美少年という付加価値爆上げの容姿で、蝶よ花よと育てられた。

 オモチャが欲しいと言えば買ってくれるし、遊園地に行きたいと言えば連れて行ってもらえる。気に入らないヤツは少し俺がグチをこぼすだけで周りが排除してくれる。

 俺が望めば何でも手に入った。俺が王様だ!

 愛らしい華奢な見た目からバース性が分かる前からΩだろうと思われ幼い頃からβの護衛がつけられていたが、それがストレスで少しでも気に入らなければクビにしていたから護衛はコロコロ変わった。それで親に窘められもしたが、潤んだ瞳で訴えれば何も言わなくなった。

 小学校に上がると護衛は学校に入れない為、送迎と外出以外居なくなる。その開放感はあったが、今度は同級生や上級生などが俺の周りに群がってきた。可愛いや綺麗など褒めそやす。当たり前だけど言われるのは好きだからもっと言えと思ってた。
 学校のヤツらは護衛とは別の鬱陶しさがあったが、俺の言う事なら何でも聞く奴隷のようで楽しかった。

 チヤホヤされるのが当然だと思っていたのに少し学年が上がると、時たま言う事を聞かないヤツが出てきた。そんな時癇癪を起こし物や周りにあたるようになったけど、皆んな俺が一番だと宥めてくれるので満足していた。

 俺が何をやっても許される―――だから言う事を聞かないヤツには暴れて俺が一番だと分からせる。
 そうしていたら何故か何度も転校するようになった。
 親に聞いても「気分転換だよ」としか言われずそんなものかと半年~1年ごとに転校を繰り返していた。

 中学に入る前に行ったバース検査でやはりΩである事が判明。その頃には美少年っぷりに磨きがかかり、学校では当たり前だけど敵なしの存在感を周りに見せつけていた。

 ヒートがきた時もαを選り取り見取り……と言いたかったけど、ここで問題が生じた。
 今までもそうだけど転校を何度も重ねていたのに何故か毎回αやΩらしい生徒がほとんどいなかったのだ。いても俺の足元にも及ばない少し可愛いだけのΩや、ずば抜けて格好いいとはいえないαしか見かけたことがなかった。
 仕方ないのでその中で一番見栄えが良いαにヒートの相手をさせたが、不満だった。

 この一流の俺を相手するのは一流のαじゃなければいけない。

 その不満を親にぶつけるが困った顔をされただけだった。

 それに俺には不満がもう一つあった。
 父親が社長なのでよくパーティーがあり、家族で出る機会もあった。幼い頃にはいたのだが大きくなる頃には大人しかいないパーティーにしか参加させてくれなくなったのだ。

 弟や妹は同年代がいるパーティーに参加していると後から聞いて、腹立たしくて大暴れしたら、俺がΩで美少年過ぎてαが寄って来すぎるからだと言われれば納得するしかなかった。
 だって美少年過ぎると自負しているから。

 高校に入ったら俺はどうやらやらかしたらしく、入学早々転校しなくてはいけなくなってしまった。
 ヒートの相手を番がいるαとヤったのがいけなかったらしい。番のΩが俺の父親の会社役員の娘だったようで揉めたみたいだ。
 俺が転校と慰謝料という形で決着したらしい。

 また転校かと鬱憤を溜めていた時に親戚から宮中《みやなか》学園に転入しないかと打診があった。
 親戚は学園の理事をやっているようで詳しい話しを聞くと、宮中学園は上流階級の優秀なαβΩの子息子女が通っていて設備も一流だから俺に合うのではとの事だった。

 一流の生徒に一流の学校……俺にぴったりだ。

 そこは小等部からあるらしく、何でうちの親は最初からそこに通わせてくれなかったんだ!と憤ったけど地元からは遠く、それなら仕方ないと納得した。

 ただ、そこに通うなら変装してほしいと言われた。俺が美少年過ぎるかららしい。確かにそうだから渋々だけど従うことにした。モジャモジャのカツラと瓶底眼鏡はダサかったけど滲み出る美貌は隠せないし。
 それとα抑制剤を毎日飲んで欲しいとも言われた。一流の俺の為にあるような薬だとこっちは快諾した。

 転入初日の朝、玄関で案内してくれるヤツが待っていた。副会長で野田と言うらしい。眼鏡をかけた優男風でかなりの美形だった。これなら他のヤツも期待できそうだ。
 早速野田は俺のフェロモンにあてられたようで態度が甘くなった。クラスでも担任や数人のαに効いてるみたいで、これなら今巷で流行っている王道学園にならって一流のαだけ揃えたハーレムが出来そうだと内心ほくそ笑んでしまった。だって今変装してるしな!

 そう思っていたのにフェロモンが全く効かないヤツらがいた。

 同じクラスの白畑楓。一見Ωにも見える中性的な美人顔をしているが、αらしい。俺を見て微妙な顔をするだけで全く近づいて来ない。不思議に思って番がいるのかと聞くといないらしい。
 さらに生徒会役員のほとんどが無反応だった。

 その中にいた!俺に相応しいαが!これは運命だ!

 背が高くαらしい躯体、目力が強いワイルド系の超絶美形。薄い唇の左下にあるホクロが色気をプラスしている。

 しかし俺の中のΩが歓喜しているというのに生徒会長だという帝惟親は俺のフェロモンに喜ぶどころか逆の反応を見せている。

 何故だ!何で効かない⁉絶対一流のαなのにフェロモンが効かないなんて……
 親戚に電話して効かないと喚き散らしたらその日のうちに別の抑制剤を持ってきた。

 これで大丈夫だと思ったら生徒会室で威圧されてしまい出禁になってしまった。そのイライラを物や生徒にぶつけること1週間、やっと食堂で再会できた。

 嬉しさのあまり抱き着こうとしたら頭を押さえられ名前を呼ぶなと言われれ俺に何も感じなしい臭いと言われてしまった。しかも運命をただの一目惚れ呼ばわりだ。

 そんな訳ない!俺が欲しいと思ったんだ!この頭のモジャモジャと眼鏡がいけないんだ!取ったらお前だって惚れるはずだ!

 ………おかしい。誰も驚かないし惟親に至っては無表情だった。

 周りから俺の美貌を称賛する声が聞こえない。……姫川って誰だ?俺よりも美形だと⁉そんなヤツ見た事ない。

 満也に聞くと俺と同じクラスのΩで今は仕事で休んでいるらしい。写真はないのかと聞いたら撮らせない事で有名で、隠れて撮ってもどこからともなく黒服のヤツが来て消させるらしい。
 なんだそれ、ヤバいヤツか⁉

 写真を撮らせないという事はブサイクなのか?食堂で言ってたあれは俺が美少年過ぎて強がりで周りが言ってるだけか。

 じゃあソイツが登校したら俺の美貌を見せつけ優越感に浸ってやる。

 そして今は嫌がっているみたいだけど俺に惚れないわけがないからな。惚れさせてやるぞ惟親!




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 今回は自己中勘違い転入生回でした~

 途中、αとセックスの話が出てきますが樹はビッチではありません。ヒートを治めるのにするだけなので経験はそんなにないです。
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