上 下
6 / 79
入学編

帝作戦勝ち

しおりを挟む
 前半愛加視点、後半南城視点です。



 生徒会補助……うん、無理。
 だって今年からモデの仕事をするし。そうなると学校を休む事も多くなる。迷惑かけちゃうもんね。

「無理ですよー。モデル活動で学校を休む事が多いと思うし」

「僕も同じですね」

 断るオレらに野田さんにしては珍しくへにょりと眉尻を下げちらりと会長を見ると、会長ため息を1つ吐き

「大丈夫だ。補助だから簡単な仕事ばかりだし他にも人を入れる予定だ」

「だったらそっちに……」

「それに今日の騒動みたいなのが起きても生徒会の肩書きがあれば手を出せない」

「あれは会長が原因ですけど⁉あんなコトしなきゃ目立つ事はなかったんですけどね⁉」

 ねぇ宏太、という思いを込めて横を見ると成る程って顔してる!成る程じゃないからな!正気に戻れ!

 あ、オレバカだから無理だった。

「あんな騒動起こしたらこれから食堂で食べるだけで注目されてしまうだろうな」

「会長のせいじゃん」

「そこでだ、生徒会や各委員長副委員長は中二階にある別フロアで周りを気にせず食べられるぞ」

「えっ?」

 それは魅力的……って騙されるなオレ!

 聞けば人気者の生徒会が同じ場所で食べると騒ぎになるからと12年前に作られたらしい。
 それを作らなければいけなくなるくらいってどんだけその時の生徒会は人気だったんだろう。

「仕事はパソコン1つあればできますから生徒会ここに入り浸る必要はないですよ」

「う」

「お前中等部で文化祭のクラスの出し物が面倒だって言ってたろ。生徒会なら断れるぞ」

「あう」

 バレてる。同じ中等部だったからクラスの連中から逃げまくってたのがバレバレだ。ネコカフェという名のネコ耳メイドなんかしたくないっつーの!でもあの時は逃げ切れなかった。近くに目をギラギラさせた宏太裏切り者がいたからな!

「何なら週一で杏仁奢るぞ」

「はうっ」

 ダメだ、大好物に揺れるなオレ!学校では目立つのんびりしたい!

「……宏太、今なら俺が持っている姫川の門外不出の写真(ネコ耳メイド)をつけよう」

「やらせて頂きます」

「おーーーい!!」

 宏太が落ちた!姫川の権力を駆使して撮らせなかったハズなのに何故ネコ耳メイド黒歴史を会長が持ってるんだよ!!

「安心して。僕と2人でやるんだから大丈夫だよ、ねっ」

 不安なんじゃないんだよ!ただでさえモデルの仕事で注目浴びるから学校くらいは目立ちたくないんだよ!
 写真貰うのがそんなに嬉しいのか?めっちゃ笑顔だ。堕天した天使の笑顔も眩しいな、おい!

「墜ちたな」

 会長のドヤ顔に頬を膨らませムッとしているとかたわらにあった紙袋から輝く(オレにはそう見えた)白い容器を取り出し見せつける。

「そっ……それは羊羊亭の杏仁豆腐…!」

「そうだ、羊羊亭の杏仁だ。食べたかろう」

 杏仁!しかも羊羊亭!食べ歩いて見つけた至高の一品!プルンプルンの白い滑らかな甘い口溶け……揺れる…いや目立たない学校ライフ……

「しかも今なら3個あるぞ」

「3個も……!」

 あぁ、寮生活だから食べられなくなったと思って諦めてたのに。それが目の前に。

「そうそう、来月から食堂で食べられるよう生徒会から申請しようかと思ってるんだが」

「喜んで補助やらせて頂きまっす!!」

 負けた。杏仁の誘惑に負けた。あれの誘惑に勝てるものがあったら教えてほしい。

「だからちょうだい」

「では隣の資料室で補助の説明だ」

 杏仁に釣られふらふらと会長に続き宏太と資料室の扉を閉める時に野田さんの「片付けたら帰る」という声が聞こえた。


 ◇◇◇

 Side 南城ここは

 クソクソクソクソクソ!

 何なんだアイツは!食堂で帝様に口を拭われたり、親衛隊長の僕を差し置いてこれから傍にいるだと⁉

 あームカつく!!

 親衛隊の部屋にある椅子を苛立ちのまま蹴り上げると、周りにいた隊員達がビクッと体を震わせ怯えているが、知ったこっちゃない。

「まあ落ち着けよ」

「これが落ち着いてられるかよ」

 僕が蹴り上げる椅子を直しながら副隊長の稲瀬が椅子を薦めるので、ムカムカしながらもドカリと腕と足を組みながら座わる。
 稲瀬は親衛隊の中で唯一帝様に傾倒していないヤツだ。僕が帝様の親衛隊を作る時に「南城が心配だから」と入った変わり者だ。隊員から僕のストッパーって言われてるらしいけど殆ど止められた事がない。ま、止められても聞かないけどな。

「帝様に口拭われたヤツがこれから傍にいるってどういう事だよ!帝様の隣は僕だっつーの!」

 ダン!と机を拳で叩くとまた周りがビクつく。いちいちビクついてバカじゃねーの?

「二宮出身の隊員に聞いたけど帝様が姫川、北大路を懇意にしてるのは有名な話だったそうだよ」

「知ってるよ!入学してくる前に写真だって見たさ!全然僕とタイプが違った!クソムカつく」

「あー、南城は可愛い系で姫川は美人系だもんね」

「それに隣にいた北大路だって帝様とはタイプが違うイケメンじゃねぇか、ズルすぎるだろ!」

「ズルいって……彼は姫川の運命らしいから隣にいてもおかしくないでしょ」

 そうだ、あんなイケメンが運命なのに帝様まで……余計ムカつく。親衛隊を結成した時に優しくしてくれたからいけると思ってぐいぐい行ったのに「調子に乗るな」って言われて解散か、付き合う希望を持たずに存続させるか迫られてしまった。
 さすがに傍に居られなくのは困るから受け入れたけど諦めてなかった。だから帝様に寄って来る羽虫共を蹴散らして傍にいたのに。

「南城の考えてる事分かるから言うけど最初から希望はなかったよ。傍から見てても帝様は一瞬も南城を見てなかったし」

 うるせぇ。そんなの姫川の写真を見た時に分かったわ。茶色いふわふわの髪に大きな瞳に華奢な体つき。庇護欲をそそるΩの特徴そのものの僕とは違う凛とした佇まい。背だって僕より10cm高い。αって言われても通用しそうな見た目。

 ガジガジと親指の爪をかじる手を取られ握られる。他のヤツにやられたら振りほどくけど、稲瀬だからやらない。長い付き合いで一番の理解者だから。
 髪を長く伸ばし殆ど見えない目が心配気な色を出しながらも辛辣な事を言う。

「帝様に媚びた態度とるの止めたら?元々性格悪いのが余計悪く見えるよ」

 カチンときて鼻に皺を寄せ睨む。

「これから帝様の目に映るのは姫川だけだよ。諦めたら?」

「はあ?諦める訳ないだろ。あんな好みの人間そうそういないんだよ」

「もう1年も振り向かれてないじゃん」

 いや、まだ手はある。北大路だっけ?アイツが他のΩに言い寄られたら運命なんだ、姫川だって気が気じゃなくて帝様から遠のくだろ。
 そこで帝様を僕が慰めれば……いけんじゃね?

「また変な事考えてそうだから言うけど失敗するよ」

「エスパーか」

「南城が分かり易く顔に出てるんだよ。まあ、何か行動するなら俺に言って?」

 まあ稲瀬に手伝わせればより上手くことが進められるかもな。フフ……待っててくださいね帝様。




 ☆ミニ情報☆
 愛加は杏仁豆腐が一番好物。中でも羊羊亭の杏仁豆腐が好きすぎて大量に購入して家族から「買いすぎ。もう食べられない・・・ウプッ」とヒンシュクを買った過去有り。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話

ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。 βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。 そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。 イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。 3部構成のうち、1部まで公開予定です。 イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。 最新はTwitterに掲載しています。

処理中です...