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うっかり渡っちゃった編

ジークフリート玉藻に遭遇する

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 僕はジークフリート。アマンベール王国の第一王子だ。

 美丈夫の国王と美しい王妃から良いとこ取りで産まれた僕は顔が物凄く良い事を自覚している。

 ふわふわの金髪にマリンブルーのような碧眼、将来美形を保証された顔。あまりの顔面の良さに心配した両親が24時間態勢で護衛をつけているくらいだ。

 そして4歳になった先日、弟が産まれた。小さくてぽよぽよしていて可愛かった。

 弟が産まれて一ヶ月、母上の体調も良くなったという事で久しぶりに庭園で両親と一緒にお茶をしている時に、鳴き声が聞こえたような気がした。

「何か・・・・・・聞こえる」

「ん?どうした?」

 遠くから鳴き声が聞こえてくると言ったけど、父上や母上には聞こえていないようだった。

 気のせいかもとお茶を楽しんでいてもやはり僕の耳には聞こえてくる。気になった僕は護衛を連れ声の方へと行ってみることにした。

 どんな危険があるか分からないがここは王宮、結界が張られているのでそこまで危ないことはないだろう。それでも護衛は警戒し、僕の行動を止めてくる。

「お待ち下さい王子!」

「大丈夫だって。こっちから鳴き声が聞こえてくるから確認するだけだって」

「魔獣の子かもしれません!」

王宮ここに出るわけないだろう」

 今まで王宮に魔獣が現れたことなどないのだ、心配しすぎだなと歩みを進める。
 鳴き声が近くなると聞こえなくなってしまった。

「あれっ?鳴き声が止んだ」

 立ち止まり辺りをキョロキョロして気配を探る。

「ほら、もう居ないんですよ」

「こっちだ!」

「ジークフリート様!」

 ガサガサと近くの整えられている垣根を強引に分け広げ見えたのは僕よりも小さい見たこともない可愛い子だった。

 さらさらとしたプラチナの髪に涙を溜めている金色の大きな目、白い肌にぷっくりとした唇と頬は桜色。可愛い。可愛すぎる!世の中にこんな可愛い子がいるなんて!どこの貴族の子だろうか。プラチナの髪は珍しいから調べたらすぐに分かるかもしれない。とりあえず名前だけでも!

「君は・・・・・・だれ?」

 なるべく優しく話しかけたけど、目を見開き驚いて声が出ないようだった。

「驚かせちゃった?ごめんね。僕はジークフリート、君の名前を教えて欲しいな」

「玉藻・・・・・・」

 タマモはビクビクしながらも小さな声で名前を教えてくれた。声も可愛い。

「タマモ?タマモって言うんだね。君とっても可愛いね!どこの子?・・・・・・あれ?犬みたいな耳がついてる。尻尾も」

 よく見るとタマモの頭に犬みたいな耳とお尻に尻尾がついている。本人はわけが分からないようできょとんとしている。その顔物凄く可愛いんだけど!

「王子離れて下さい!魔獣の一種かもしれません!」

 そう言って護衛が僕を庇おうとするけど、タマモの可愛いさに顔が緩んでいる。

「お前な・・・・・・そのデロデロにフヤケた顔をどうにかしてから言うんだな」

「だって王子~怪しいけど可愛いんです!でも仕事だから捕まえないと!」

 捕まえるという言葉にタマモの体が跳ねる。恐怖のあまり耳と尻尾が垂れてしまった。こんな小さなタマモを怖がらせるなんて護衛め、減給だ。

「待て。タマモが怯えている」

 護衛を片手で止め大丈夫だと頭を撫でる。触った瞬間はビクッとしたが、撫でると気持ち良かったのか耳がぴこぴこと動き、尻尾がユラユラ揺れている。

「何かわっ・・・・・・この耳ってホンモノ?」

「ふわっ!」

 ぴこぴこ動くのが気になって耳を触ったら、くすぐったかったのか可愛い声が。

 ここで僕は決心する。

 この子を誰にも渡したくない、囲おうと。

「・・・・・・おい」

「はいっ!」

「この子・・・今すぐ連れて帰るから!」

「了解しましたぁ!!」

「???」

 状況を理解していないのかタマモが首をこてりとする。ナニソレ可愛い!護衛が片手で顔を覆って天を向いて唸っている。分かるぞ、破壊力バツグンだったよな。

「タマモ立てる?」

 手を差し出すとおずおずと僕の手をぎゅっと握って立ち上がる。やはり僕より小さい。

 パンパンと土や草がついた服を払うとそのま手を引く。まずは両親に一緒にいる許可を貰わないといけない。

「大丈夫、僕の家に連れて行くだけだから」

 不安そうな顔しているタマモに安心させるように笑いかけぎゅっと手を握る。

 もう逃さないからね。
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