5 / 21
本編
会長と風紀委員長にしっかり顔バレしました
しおりを挟む
「さあ、俺たちに話してもらおうか」
テーブルを挟んで向かい側に長い腕と足を組み横柄な態度で座っている人物、風紀委員長の如月緋色と生徒会長の黒主青藍が俺を含め4人を見つめる。
寮の1階にある共用スペースで唯一鍵がかかる会議部屋に連れて来られたのは他からの邪魔が入らないためだろう。それに夕方前とはいえここに来るまで誰にも会わなかったのは、外で遭遇した時に俺たちのために電話をして人払いをしてくれたのだと思う。とてもありがたかったが、念のため俺はフードを目深に被って歩いた。
「その前にお前たちの事を教えなさい。それからこちらの事情を話すか決めるわ」
こちらも姉さんがスラリとしたおみ足を組み、シャープな顎をくいっとし話せと促す。
これまた母親譲りの話し方と普段のきゃぴりんとした雰囲気を消した女王様のような装いだ。こうなった姉さんには俺と智也は敵わないので大人しくしているに限る。
女王様な姉さんと何を考えているか分からないアルカイック·スマイルの兄さんを見やり如月はため息を一つ吐き出す。
「……俺は風紀委員長の如月だ。こっちは生徒会長の黒主。言うなればこの学園でのトップの2人だ。ここの学園の風習を知って隠しているのか事情があってなのか……理由がどうあれ分かればこちらも対処してやろう」
「ふうん……ねえお前、何で志摩の素顔を知っての?」
姉さんが鋭く会長を見つめ駐車場で俺の素顔を見て名前を呼んでいたことに言及する。
「そっ、それはたまたま見る機会があって……でもちらっとしか見ていない」
「志摩?」
「アレハフカコウリョクデスオネエサマ」
急に話を振られて驚きながらも話した会長にオネエサマの絶対零度の瞳が俺を貫く。ああ、怖くて言葉がカタコトになってしまう。
「で、それを誰かに話した?」
「いや、事情があるのかと誰にも話してない」
「……頭は悪くないようね」
不敵な笑みを湛え姉さんと兄さんがこそこそと話し合っている。
「……そうねお前たち、今から言うことは他言無用よ」
「もしそれが守れないなら黒主だろうが如月だろうが社会的に抹殺するからそのつもりで」
「ふっ……お前らに俺たちの家が潰せるとは思えないがな」
こういう事を言う時の2人は本気だ。しかも風紀委員長も負けてない。あまりの怖さに俺の喉がひゅっと鳴る。
「志摩、顔を出しなさい」
姉さんに言われ目深に被っていたフードを恐る恐る外しメガネを取る。
「………!!」
「その顔……桜宮真尋か⁉」
会長と風紀委員長が目を見開き、息を呑み驚いている。
白磁の肌に形の良い眉、左目の下にあるホクロが特徴の大きめの切れ長の目、通った鼻筋に小ぶりの唇。男と分かるのに母親である桜宮真尋瓜二つの顔。それが俺の顔だ。
「この子の本名は桜宮志摩、女優の桜宮真尋の息子で一目見たら分かってしまうくらいそっくりすぎるのよ。こんな綺麗な顔だもの小さい頃から周りが騒がしくてね。特に小学校高学年から女子の追っかけやら奪い合いや私物を盗まれたり大変だったのよ。それに男子からの妬み嫉みが酷くて……」
「他にもあるけど……だから地元の子が行かない山奥の男子校を選んで顔を隠すような髪型とメガネにしてるんだよ。あと智也が守ってくれてる」
そうこの顔、希代の美貌と演技力を持つ女優であり母親である桜宮真尋に似た顔のせいで事件は起きるし家に押しかけられたりして精神的に疲れた俺は智也と調べ遠くの高校を選んだ。その時も先生に受験先を秘密にしてもらい、卒業式も混乱を招くからと欠席したんだ。
「……だから顔バレはしたくない、と。そして俺たちにそれを協力しろということか」
「もし素顔がバレた場合はどうするんだ?」
「守りなさい。それが出来ないなら海外にでも転校させるわ」
「えっ⁉」
驚いて姉さんを見ると本気の目をしていた。その時は本当に転校させる気だ!
「……分かった、残念ながら生徒会は親衛隊を黙らせることしか出来ない。他は緋色、風紀で荒木を守ってくれ」
「ああ、風紀で責任を持って対処しよう」
学園のトップである2人の言葉に姉さんが満足そうに頷く。
会長の言う親衛隊とは人気のある生徒のファンクラブみたいなもので、生徒を守る為の組織らしいが、過激なところだと性的なことを含む制裁をしたりするらしい。そんなところに目を付けられたらお先真っ暗である。
「……ところで荒木と大膳が付き合っていると耳にしたんだが……」
「「ないないないない」」
会長が言いづらそうに聞いてくるのに間髪入れず智也と否定する。
「俺オカン属性と付き合う趣味ないし。そもそも智也はどノーマルだからな」
「ホントそんなウワサマジ勘弁だな」
顔を見合わせ爆笑すれば何故か会長がほっとした表情を見せる。よく分からなくてこてりと頭を傾げると、口に手を当て横を向く。その耳は赤くなっている。
「ところで姉さんと兄さんは時間大丈夫?」
「あ~、明日も仕事があるから早く帰って寝ないとぉ。睡眠不足はお肌に大敵よぉ」
「そうだね、名残惜しいけどまた来るよ」
棘々しい雰囲気をがらりと変えいつものきゃぴりんとした姉さんと柔らかい笑顔の兄さんにぎゅうぎゅうと抱きしめられ、蛙のようなうめき声が出てしまう。
そんな姿を微笑ましそうに見ているオカン智也。見てないで助けろよ!
話もまとまり、部屋を全員で出ると目立つからと俺と智也だけ先に部屋を出ることにする。姉さんと兄さんは会長と委員長が校門まで送ってくれるらしい。
「荒木」
部屋を出ようとする俺を会長が呼び止め何かあったら俺か緋色に連絡しろとラインの交換を智也と一緒にする。
その時の間近で見た会長はエロオーラと付けている香水の匂いとでくらくらしてしまうくらい格好良かった。それに委員長の声が腰にクるくらいエロくてヤバかった。
こりゃモテるわ2人とも。
テーブルを挟んで向かい側に長い腕と足を組み横柄な態度で座っている人物、風紀委員長の如月緋色と生徒会長の黒主青藍が俺を含め4人を見つめる。
寮の1階にある共用スペースで唯一鍵がかかる会議部屋に連れて来られたのは他からの邪魔が入らないためだろう。それに夕方前とはいえここに来るまで誰にも会わなかったのは、外で遭遇した時に俺たちのために電話をして人払いをしてくれたのだと思う。とてもありがたかったが、念のため俺はフードを目深に被って歩いた。
「その前にお前たちの事を教えなさい。それからこちらの事情を話すか決めるわ」
こちらも姉さんがスラリとしたおみ足を組み、シャープな顎をくいっとし話せと促す。
これまた母親譲りの話し方と普段のきゃぴりんとした雰囲気を消した女王様のような装いだ。こうなった姉さんには俺と智也は敵わないので大人しくしているに限る。
女王様な姉さんと何を考えているか分からないアルカイック·スマイルの兄さんを見やり如月はため息を一つ吐き出す。
「……俺は風紀委員長の如月だ。こっちは生徒会長の黒主。言うなればこの学園でのトップの2人だ。ここの学園の風習を知って隠しているのか事情があってなのか……理由がどうあれ分かればこちらも対処してやろう」
「ふうん……ねえお前、何で志摩の素顔を知っての?」
姉さんが鋭く会長を見つめ駐車場で俺の素顔を見て名前を呼んでいたことに言及する。
「そっ、それはたまたま見る機会があって……でもちらっとしか見ていない」
「志摩?」
「アレハフカコウリョクデスオネエサマ」
急に話を振られて驚きながらも話した会長にオネエサマの絶対零度の瞳が俺を貫く。ああ、怖くて言葉がカタコトになってしまう。
「で、それを誰かに話した?」
「いや、事情があるのかと誰にも話してない」
「……頭は悪くないようね」
不敵な笑みを湛え姉さんと兄さんがこそこそと話し合っている。
「……そうねお前たち、今から言うことは他言無用よ」
「もしそれが守れないなら黒主だろうが如月だろうが社会的に抹殺するからそのつもりで」
「ふっ……お前らに俺たちの家が潰せるとは思えないがな」
こういう事を言う時の2人は本気だ。しかも風紀委員長も負けてない。あまりの怖さに俺の喉がひゅっと鳴る。
「志摩、顔を出しなさい」
姉さんに言われ目深に被っていたフードを恐る恐る外しメガネを取る。
「………!!」
「その顔……桜宮真尋か⁉」
会長と風紀委員長が目を見開き、息を呑み驚いている。
白磁の肌に形の良い眉、左目の下にあるホクロが特徴の大きめの切れ長の目、通った鼻筋に小ぶりの唇。男と分かるのに母親である桜宮真尋瓜二つの顔。それが俺の顔だ。
「この子の本名は桜宮志摩、女優の桜宮真尋の息子で一目見たら分かってしまうくらいそっくりすぎるのよ。こんな綺麗な顔だもの小さい頃から周りが騒がしくてね。特に小学校高学年から女子の追っかけやら奪い合いや私物を盗まれたり大変だったのよ。それに男子からの妬み嫉みが酷くて……」
「他にもあるけど……だから地元の子が行かない山奥の男子校を選んで顔を隠すような髪型とメガネにしてるんだよ。あと智也が守ってくれてる」
そうこの顔、希代の美貌と演技力を持つ女優であり母親である桜宮真尋に似た顔のせいで事件は起きるし家に押しかけられたりして精神的に疲れた俺は智也と調べ遠くの高校を選んだ。その時も先生に受験先を秘密にしてもらい、卒業式も混乱を招くからと欠席したんだ。
「……だから顔バレはしたくない、と。そして俺たちにそれを協力しろということか」
「もし素顔がバレた場合はどうするんだ?」
「守りなさい。それが出来ないなら海外にでも転校させるわ」
「えっ⁉」
驚いて姉さんを見ると本気の目をしていた。その時は本当に転校させる気だ!
「……分かった、残念ながら生徒会は親衛隊を黙らせることしか出来ない。他は緋色、風紀で荒木を守ってくれ」
「ああ、風紀で責任を持って対処しよう」
学園のトップである2人の言葉に姉さんが満足そうに頷く。
会長の言う親衛隊とは人気のある生徒のファンクラブみたいなもので、生徒を守る為の組織らしいが、過激なところだと性的なことを含む制裁をしたりするらしい。そんなところに目を付けられたらお先真っ暗である。
「……ところで荒木と大膳が付き合っていると耳にしたんだが……」
「「ないないないない」」
会長が言いづらそうに聞いてくるのに間髪入れず智也と否定する。
「俺オカン属性と付き合う趣味ないし。そもそも智也はどノーマルだからな」
「ホントそんなウワサマジ勘弁だな」
顔を見合わせ爆笑すれば何故か会長がほっとした表情を見せる。よく分からなくてこてりと頭を傾げると、口に手を当て横を向く。その耳は赤くなっている。
「ところで姉さんと兄さんは時間大丈夫?」
「あ~、明日も仕事があるから早く帰って寝ないとぉ。睡眠不足はお肌に大敵よぉ」
「そうだね、名残惜しいけどまた来るよ」
棘々しい雰囲気をがらりと変えいつものきゃぴりんとした姉さんと柔らかい笑顔の兄さんにぎゅうぎゅうと抱きしめられ、蛙のようなうめき声が出てしまう。
そんな姿を微笑ましそうに見ているオカン智也。見てないで助けろよ!
話もまとまり、部屋を全員で出ると目立つからと俺と智也だけ先に部屋を出ることにする。姉さんと兄さんは会長と委員長が校門まで送ってくれるらしい。
「荒木」
部屋を出ようとする俺を会長が呼び止め何かあったら俺か緋色に連絡しろとラインの交換を智也と一緒にする。
その時の間近で見た会長はエロオーラと付けている香水の匂いとでくらくらしてしまうくらい格好良かった。それに委員長の声が腰にクるくらいエロくてヤバかった。
こりゃモテるわ2人とも。
23
お気に入りに追加
176
あなたにおすすめの小説
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
浮気性のクズ【完結】
REN
BL
クズで浮気性(本人は浮気と思ってない)の暁斗にブチ切れた律樹が浮気宣言するおはなしです。
暁斗(アキト/攻め)
大学2年
御曹司、子供の頃からワガママし放題のため倫理観とかそういうの全部母のお腹に置いてきた、女とSEXするのはただの性処理で愛してるのはリツキだけだから浮気と思ってないバカ。
律樹(リツキ/受け)
大学1年
一般人、暁斗に惚れて自分から告白して付き合いはじめたものの浮気性のクズだった、何度言ってもやめない彼についにブチ切れた。
綾斗(アヤト)
大学2年
暁斗の親友、一般人、律樹の浮気相手のフリをする、温厚で紳士。
3人は高校の時からの先輩後輩の間柄です。
綾斗と暁斗は幼なじみ、暁斗は無自覚ながらも本当は律樹のことが大好きという前提があります。
執筆済み、全7話、予約投稿済み
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
告白してきたヤツを寝取られたらイケメンαが本気で囲ってきて逃げられない
ネコフク
BL
【本編完結・番外編更新中】ある昼過ぎの大学の食堂で「瀬名すまない、別れてくれ」って言われ浮気相手らしき奴にプギャーされたけど、俺達付き合ってないよな?
それなのに接触してくるし、ある事で中学から寝取ってくる奴が虎視眈々と俺の周りのαを狙ってくるし・・・俺まだ誰とも付き合う気ないんですけど⁉
だからちょっと待って!付き合ってないから!「そんな噂も立たないくらい囲ってやる」って物理的に囲わないで!
父親の研究の被験者の為に誰とも付き合わないΩが7年待ち続けているαに囲われちゃう話。脇カプ有。
オメガバース。α×Ω
※この話の主人公は短編「番に囲われ逃げられない」と同じ高校出身で短編から2年後の話になりますが交わる事が無い話なのでこちらだけでお楽しみいただけます。
※大体2日に一度更新しています。たまに毎日。閑話は文字数が少ないのでその時は本編と一緒に投稿します。
※本編が完結したので11/6から番外編を2日に一度更新します。
貧乏Ωの憧れの人
ゆあ
BL
妊娠・出産に特化したΩの男性である大学1年の幸太には耐えられないほどの発情期が周期的に訪れる。そんな彼を救ってくれたのは生物的にも社会的にも恵まれたαである拓也だった。定期的に体の関係をもつようになった2人だが、なんと幸太は妊娠してしまう。中絶するには番の同意書と10万円が必要だが、貧乏学生であり、拓也の番になる気がない彼にはどちらの選択もハードルが高すぎて……。すれ違い拗らせオメガバースBL。
エブリスタにて紹介して頂いた時に書いて貰ったもの
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる