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それ貴族として基本だから

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 そろそろ本題にと誰もが思っていると、その空気を察した国王が王妃と側妃を窘める。2人共さすがにこれではいけないと思ったようだ。

「さてライノール、今宵の卒業パーティーで愚かにもイリスリアに嘘の罪を着せ婚約破棄を申し渡した、相違ないな?」

「陛下、イリスリアに婚約破棄を言い渡しましたが彼女は本当にマリアに嫌がらせをしたのです!」

 猿ぐつわを外されたライノールは唾を飛ばしながら訴える。その隣でまだ猿ぐつわを咬まされているマリアは頭を縦に振り肯定している。

「ではどんな嫌がらせをされたのだ?」

「廊下を走らないや必要以上に男性の体に触れない、食事のマナーが汚いなどみんなの前でマリアを貶めたのですよ!それを嫌がらせじゃなくて何と言うのですか!」

「いや、貴族として基本的な事だろ」

 部屋にいる誰もが思った事をルクレがボソリと言う。
 貴族は急いでいても早歩きまでしかしないし、男女共に婚約者でない者と過度な触れ合いは避ける。食事のマナーなど幼い頃から徹底的に指導される為、酷い場合注意されてしまう。それを指摘されても普通は自分の行いを反省するものだが、2人はどうやら違ったようだ。

「うるさい!お前はそうやっていつもお高くとまっているが俺が王太子や国王になったら王宮から追い出してやるからな!」

 フンス、と鼻息荒くわめくライノールにみんなポカンをする。どうやら先ほどのルクレが行った宣言をスポーンと忘れているようだ。

「いや、さっき僕が宣言したけど君は平民になったんだけど。あ、マリア嬢と結婚して婿養子に入るから男爵籍になるのかな?」

「はあ⁉」

「君、卒業パーティーの会場で書類にサインしたよね?あれイリスリアとの婚約破棄の書類とマリア嬢との婚姻届、慰謝料請求の書類なんだけど」

「したけどなんだよ慰謝料請求って!」

「それはそうでしょ。イリスリアには全く非がないんだから」

「だからマリアに嫌がらせを・・・・・・」

「それ、嫌がらせじゃなく至極真っ当な注意だから」

 言えば反論され、ライノールは腹立たしげにルクレを睨む。いつも自分の言う事に涼しげに反論してくるルクレがライノールは嫌いだった。

「それに根本的な所が間違ってるよ。今回の婚約破棄が無くてもライノール、君は立場上王太子になれないんだよ」
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