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志貴、腐りました

その2、志貴姉に相談する

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 Q.志貴が腐ってから1か月、魔窟にある腐れ本を読み漁った結果どうなったでしょう。


「実際のBLカプのイチャコラを見てみたい!」


 A.BLウォッチャーに覚醒しました。


 でもどうすればいいんだ?強引な攻めに戸惑い恥じらう受け(逆でも可)、誰も居ない教室や保健室で激しい睦み合い……色んなシチュエーションをこの目で見てみたい!
 しかしそんな美味しいシチュエーションなんかそこら辺にゴロゴロ転がっているワケないしなぁ……

 という事で姉の部屋に行き相談することに。

「……弟よ、何故そっちの方向に行った?」

「さあ?」

 そう言われてもと半目で見てくる姉にこてりと首を傾げる。

「あんたには無理だわ」

「なんで⁉」

「自分の見た目を見てごらん!!金髪に近い茶髪!涼しげな青い瞳!白い肌!ハーフを存分に活かしたイケメンが目立って影に隠れてBLウォッチが出来るわけないだろうが!寧ろ何故熱くそそり勃つ肉棒を受け入れてアンアン言う方に行かなかったんだよ!!」

 ビシッと指を差され中2が口にしないような言葉を浴びせられる。どうやら姉はかなり発酵が進んでいるようだ。

「そう言われてもなぁ……3次元で見てみたいと思ったんだもん」

「バカめ!BLウォッチャーというものは茶色っぽい黒髪に明るい茶目!ハーフという高スペックを活かしきれなかったモブ顔!そんな私みたいな人間がなるものなのよ!」

 胸を反らせドヤァと言い切る姉は実に男らしい。

「姉振り切りすぎじゃね?」

「切なさの山などとうに越したわ!」

 化粧映えするからいいのよ!とぷいと顔を逸らす姉はそこまでモブ顔ではないと思う。……多分。でもスッピンになった時に惨劇がおきるんじゃ……ブルブル

「……弟よ、お前今失礼な事を考えなかった?」

「さあ?でも実際見てみたいんだよ」

「そう言われてもそうそうお目にかかれないわよ」

「そこなんだよなぁ」

 そんな美味いシチュエーションを見たら家族が騒いでいるだろうから本当に無いんだろう。

「……まあ無いワケではない。ちょうど志貴くらいの子じゃないとダメだけど」

「ナニソレ⁉」

 そんな美味しい場所があるのかと身を乗り出すと、難しい表情をして顔を寄せて小声で

「でもこれは諸刃の剣……失敗したら身の保証は出来ないわ」

 ゴクリと喉を鳴らすと姉は机の引き出しから数冊取り出し目の前に広げる。

「……学校のパンフレット?」

「チッチッチッチッ、これは中高一貫校、しかも男子校のパンフレット……いや聖書!私がリサーチして厳選した男子校パラダイス聖書バイブル!ここに入ればアハンウフン見放題間違いなし!さあどれにする⁉」

 スイッチが入った姉がテンション高く説明してくる。確かに厳選したと言うだけあってBL本によくある男子校・寮生活・高偏差値・生徒の殆どが良家の学校だ。よくまあ見つけたよなぁ。その執念が我が姉ながら怖い。

「特にオススメなのはこれ!」

「……何々行成ゆきなり学園?いやココ偏差値・授業料・寮費バリ高なトコじゃん!」

 姉が高々とかかげたパンフレットは厳選された物の中でダントツ綺羅びやかな装丁をされた冊子だった。

 そりゃそうだ、名家のご子息様が通われるやんごとなき学校で偏差値も高い。冊子を開くと綺麗な校舎にホテルのような寮、レストラン並の学食。年間の授業料と寮費を合わせたら大卒1年目の年収より高い。それなのに1学年200人いるんだが⁉

「あ……姉、授業料で俺の好きなきなこのおはぎが何個買えるんだ……⁉」

「う◯い棒より計算面倒くさいな⁉テンパっておかしな方に行くなし!それよりもパンフに載ってる生徒がみんな綺麗な顔してるトコを見なさい!」

 あまりの金額に動揺してしまったが姉の言う通り捲っても捲ってもイケメンパラダイスだ。

「おおっ凄い」

「でしょ?それにほらココ、この手つきと目線……ピンとくるものがあるわ」

 そう指をさす先には生徒会室で会長と副会長が書類を受け渡している写真が。姉のBLセンサーにビンビンに引っかかるらしい。

「会長の柔らかい笑み!副会長のはにかむ表情!書類を持つ指先が触れそうな距離!隠そうとしても隠しきれない写真から溢れる親密さ!……志貴、夜の会長は獣よ……」

「姉、妄想激しい……」

「おバカ!BLウォッチャーはそこまで見抜く力があるのよ!」

「なるほど!」(※そんな力はありません)

「BLウォッチャーの道は1日にしてならずよ!」

「姉カッコイイ!!」



 2度目のビシッと指差しをくらい間違って姉を尊敬してしまった志貴はまだ小6、その年で人生がまたあらぬ方向へ脱線してしまったようだ。
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