花びらは掌に宿る

小夏 つきひ

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赤⑬

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「夕夏?」
テレビを観ていたタケルがこっちを向いた。
「何?」
「テレビ見てる?」
「見てるよ」
テレビなんてどうでもいい。さっきの事があまりにも衝撃的で頭が混乱したままだ。
「もう寝るけど、大丈夫?」
「大丈夫って?」
「なんかあれから元気ないからさ…」
「気にしないで。今日はありがとね、サプライズ嬉しかった」
「喜んでもらえて良かった。遥人君と莉奈ちゃん、ずっと前から楽しみにしてくれてたんだ」
「そうなんだ、今度お礼しなきゃね。本当に嬉しかった」
そう言うとタケルは口元に笑みを浮かべ、自分の布団に入って横になった。
少ししてから私は部屋の電気を消した。テレビは消せない、気が紛れそうなものが必要だからだ。
サプライズのおかげでせっかく気持ちが明るくなったところだったのに、どうしてこうタイミングよく嫌な事が起こるのだろう。さっき外灯の下で見たストーカーの顔は確かにナオさんだった。
安西さんが最後に会社へ来た時、私の書類立てに入れていった封筒には私とタケルの写真が入っていた。あれもナオさんが撮ったもの?―――――
聞けば全てを話してくれるかもしれない。聞いたところで解決に繋がるかはわからない、でも、これが今の私にできる事だ。

ナオさん、写真を撮られた事は怒ってません。でも、理由を知りたいです。

メールを送信した。暗い部屋にテレビの眩しい光が広がっている。どうせ眠れないと思いコーヒーを淹れるため台所に入った。ヤカンを火にかけて沸騰するまでの間、ナオさんとの思い出を振り返った。出会いは智香に誘われた合コンだった、そのナオさんがどこでどう横山さんと繋がっていたのか。すべての写真はナオさんが撮っていた?……
熱いマグカップを持って部屋に入った。携帯電話に通知は来ない。


首が痛くて目を覚ますと朝になっていた。ベッドに背をもたれたまま眠ってしまっていた。座って寝た事を後悔してベッドで横になった。このまま寝坊したらまずいと思い、アラームをセットしようと枕元の携帯電話に手を伸ばした。
ナオさんからメールが来ている。

嫌な思いさせてごめん。話したい事があるから会ってくれないかな?

鼓動が激しくなっていく、動きのぎこちない指で返信を打った。

いつ会えますか?

メールは深夜3時に入っていたようだ。数分待っても返信はなく仕度のためシャワーを浴びる事にした。タケルはぐっすり寝ている。今日はゆっくり昼から店に出ると言っていた。起こさないようにそっと横を通り浴室へ向かった。

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