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疑惑
疑惑④
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次の日、出社すると安西さんの姿がなかった。経理の山下さんは眉間に皺を寄せて言った。
「今日1人欠員だから、後回しでいいのは置いといてこっちの作業手伝って」
「安西さんどうかしたんですか?」
「体調不良みたいよ。体が怠いんだってさ、夏バテくらいで休まないで欲しいけど」
部長を見ると明らかに苛立っている。
「橋詰さん、ちょっと」
柳瀬さんが書類の入ったクリアファイルを差し出した。「これ昨日行った会社の契約更新書類。処理してくれるかな」
「わかりました」
受け取った時、指先に違和感を感じて傾けるとファイルの下に封筒が重なっていた。柳瀬さんの目を見てそれが例の物だとわかった。
「部長、最後5時のアポに行ったら今日はそのまま直帰します」
柳瀬さんは部長に会釈して鞄を手に持ち事務所を出た。私はデスクの引き出しに封筒を入れた。
今朝はタケルに家の鍵を渡しておいた。いつまでも家にいるだけじゃ精神的に参るかもしれないと思ってスーパーでの買い物を頼んだ。スーパーには何度か一緒に行った事がある。何かあった時の為にテレフォンカードを渡した。テレフォンカードなんて初めて買った。仕事中、携帯電話をサイレントにして着信がないか時々チェックした。公衆電話だと折り返しができないため掛かってきた時に出なければいけない。心配事がまた1つ増えた。
給湯室でカップ麺にお湯を注いで休憩室へ移った。昨日は帰ってから何もする気が起きなかった。お風呂に入った後、髪も乾かさずにベッドに倒れ込み俯せで考え込んでいた。タケルはそんな私に何も聞かず、敷き布団の上でテレビを見ていた。どうして智香と隆平が知り合いなのか、肝心な事を聞きそびれた。隆平が何を思ったか気になる。あの修学旅行の日から私は花絵と隆平を避け続けた。高校、大学、そして今日までずっと・・・
ふとした瞬間に蘇る2人との思い出は過去の事と割り切り振り払ってきた。その度に空虚が押し寄せて私は自分が分からなくなる。隆平への感情が何なのかすら曖昧になってきた。
誰もいない休憩室でテーブルにカップ麺を置き、おにぎりを取り出した。携帯電話で動画を見ていると突然着信画面が表示された。公衆電話じゃなく、お母さんからだった。
「もしもし」
「夕夏!?」
母の興奮気味な声にぎょっとした。
「あんた、大変よ!」
「声大きいよ。何?」
「結婚するのよおー!花絵ちゃんが!」
「・・・」
「それが相手聞いて驚くわよ~」
得たいの知れない不安が込み上げる。
「ちょっと待って、今仕事の合間だから電話切っていい?」
「え、お昼休憩じゃないの?」
「切るよ」
続きを言いたげな母の言葉を遮り無理やり電話を切った。花絵の結婚相手を聞くのに心の準備が出来なかった。偶然隆平と再会した事が何かの知らせなんじゃないかと思って恐くなった。
カップ麺の蓋を開けると湯気があがった。麺がふやけるのを気にせず私は智香にメールを打った。
「今日1人欠員だから、後回しでいいのは置いといてこっちの作業手伝って」
「安西さんどうかしたんですか?」
「体調不良みたいよ。体が怠いんだってさ、夏バテくらいで休まないで欲しいけど」
部長を見ると明らかに苛立っている。
「橋詰さん、ちょっと」
柳瀬さんが書類の入ったクリアファイルを差し出した。「これ昨日行った会社の契約更新書類。処理してくれるかな」
「わかりました」
受け取った時、指先に違和感を感じて傾けるとファイルの下に封筒が重なっていた。柳瀬さんの目を見てそれが例の物だとわかった。
「部長、最後5時のアポに行ったら今日はそのまま直帰します」
柳瀬さんは部長に会釈して鞄を手に持ち事務所を出た。私はデスクの引き出しに封筒を入れた。
今朝はタケルに家の鍵を渡しておいた。いつまでも家にいるだけじゃ精神的に参るかもしれないと思ってスーパーでの買い物を頼んだ。スーパーには何度か一緒に行った事がある。何かあった時の為にテレフォンカードを渡した。テレフォンカードなんて初めて買った。仕事中、携帯電話をサイレントにして着信がないか時々チェックした。公衆電話だと折り返しができないため掛かってきた時に出なければいけない。心配事がまた1つ増えた。
給湯室でカップ麺にお湯を注いで休憩室へ移った。昨日は帰ってから何もする気が起きなかった。お風呂に入った後、髪も乾かさずにベッドに倒れ込み俯せで考え込んでいた。タケルはそんな私に何も聞かず、敷き布団の上でテレビを見ていた。どうして智香と隆平が知り合いなのか、肝心な事を聞きそびれた。隆平が何を思ったか気になる。あの修学旅行の日から私は花絵と隆平を避け続けた。高校、大学、そして今日までずっと・・・
ふとした瞬間に蘇る2人との思い出は過去の事と割り切り振り払ってきた。その度に空虚が押し寄せて私は自分が分からなくなる。隆平への感情が何なのかすら曖昧になってきた。
誰もいない休憩室でテーブルにカップ麺を置き、おにぎりを取り出した。携帯電話で動画を見ていると突然着信画面が表示された。公衆電話じゃなく、お母さんからだった。
「もしもし」
「夕夏!?」
母の興奮気味な声にぎょっとした。
「あんた、大変よ!」
「声大きいよ。何?」
「結婚するのよおー!花絵ちゃんが!」
「・・・」
「それが相手聞いて驚くわよ~」
得たいの知れない不安が込み上げる。
「ちょっと待って、今仕事の合間だから電話切っていい?」
「え、お昼休憩じゃないの?」
「切るよ」
続きを言いたげな母の言葉を遮り無理やり電話を切った。花絵の結婚相手を聞くのに心の準備が出来なかった。偶然隆平と再会した事が何かの知らせなんじゃないかと思って恐くなった。
カップ麺の蓋を開けると湯気があがった。麺がふやけるのを気にせず私は智香にメールを打った。
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