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2人
2人①
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理久君に平日の夜でもいいか聞いてみた。そして翌週の木曜、名刺に書いてあった店を訪ねた。
店で見る姿は雰囲気が違って見えた。手際よくハサミを動かし髪を切り、カット、ヘアカラー、ヘアパックをフルコースで施術してくれた。その間、私達はお互いについて話した。蓮の話も少し出た。理久君は楽しそうに話す。きっとお客さんからも人気があるだろうなと思った。
「すごい、髪ツヤツヤになった」
「仕上げにコテで少しだけ巻くね」
そう言ってイメージするように毛先を手で持ち上げた。そして丁寧にスタイリングをしてくれて、最後に三面鏡を広げた。
「どう?似合うと思うんだけど」
「ありがとう、この感じ好き。せっかく綺麗にしてもらったのに帰るだけなんてもったいないね」
「…そうだね。髪型の写真撮らせてもらっていい?夕夏ちゃんにも送るよ」
「うん」
巻いていたケープを外してもらった。椅子が回転して立ち上がろうとすると急にふらついてバランスを崩した。
「大丈夫?」
「ごめん、立ちくらみがして」
理久君は支えてくれた手を離した。
「そこの壁のところに立ってもらっていい?」
「わかった」
照明がちょうどよく当たるその場所に立つと、理久君は携帯電話のカメラで角度を変えながら何枚か写真を撮った。
「いい感じ。ほら」
「え、撮るのうまいね」
「そう?」
「うん。美容師さんってすごいね」
「そう言ってもらえると嬉しい」
「今度からここにカット来ようかな」
「まじで?」
「うん」
「気つかってない?」
「ううん。ほんとに」
「ありがとうございます!」
理久君は照れるように自分の髪を触った。
土曜は蓮に会いに行った。髪を切ったのを気付いてくれて理久君のカットモデルをしたことを話した。髪色も似合ってると言ってくれて嬉しかった。蓮はなんとなく顔色が良くない。体調が悪いのか聞くと何もないと答えた。でも、手話をする指は時々止まり、息をするのが苦しそうに見えた。
「ねえ、大丈夫そうに見えないよ。看護師さん呼んでくる」
立ち上がった私の手首を蓮が掴んだ。
“ 待って 本当に大丈夫だから よくあること ”
「え?」
“ 実は 心臓が少し 悪いらしい ”
「…」
“ すぐに退院できないのは それがあるから ”
私はショックを受けた。何も言えずにいると蓮は笑ってみせた。
“ 大丈夫 いまのところ 深刻な症状じゃないから ”
「でも」
“ 退院したら 2人でどこかいこう 歩けるように頑張るから ”
「…うん」
蓮はゆっくりと深呼吸をした。それから最近読んでる本の話をした。でも、内容がほとんど頭に入ってこない。蓮は手を止めて私の目を見た。
「どうしたの?」
“ 夕夏 疲れてない? ”
「疲れてないよ、大丈夫。そんな顔してた?」
蓮は頷いた。
「元気だよ。あ、これ何?」
話を変えようと棚にあったオレンジ色のノートを指差した。それはA4くらいのスケッチブックだった。
“ 兄貴が持ってきた ”
「何か描いたの?」
“ まだ何も ”
「そうなんだ。蓮って家具のデザインやってたんだよね?柳瀬さんから聞いたの」
“ うん ”
話をしているうちに蓮の顔色は良くなってきた。でも、頭の片隅では心配が渦を巻いている。
店で見る姿は雰囲気が違って見えた。手際よくハサミを動かし髪を切り、カット、ヘアカラー、ヘアパックをフルコースで施術してくれた。その間、私達はお互いについて話した。蓮の話も少し出た。理久君は楽しそうに話す。きっとお客さんからも人気があるだろうなと思った。
「すごい、髪ツヤツヤになった」
「仕上げにコテで少しだけ巻くね」
そう言ってイメージするように毛先を手で持ち上げた。そして丁寧にスタイリングをしてくれて、最後に三面鏡を広げた。
「どう?似合うと思うんだけど」
「ありがとう、この感じ好き。せっかく綺麗にしてもらったのに帰るだけなんてもったいないね」
「…そうだね。髪型の写真撮らせてもらっていい?夕夏ちゃんにも送るよ」
「うん」
巻いていたケープを外してもらった。椅子が回転して立ち上がろうとすると急にふらついてバランスを崩した。
「大丈夫?」
「ごめん、立ちくらみがして」
理久君は支えてくれた手を離した。
「そこの壁のところに立ってもらっていい?」
「わかった」
照明がちょうどよく当たるその場所に立つと、理久君は携帯電話のカメラで角度を変えながら何枚か写真を撮った。
「いい感じ。ほら」
「え、撮るのうまいね」
「そう?」
「うん。美容師さんってすごいね」
「そう言ってもらえると嬉しい」
「今度からここにカット来ようかな」
「まじで?」
「うん」
「気つかってない?」
「ううん。ほんとに」
「ありがとうございます!」
理久君は照れるように自分の髪を触った。
土曜は蓮に会いに行った。髪を切ったのを気付いてくれて理久君のカットモデルをしたことを話した。髪色も似合ってると言ってくれて嬉しかった。蓮はなんとなく顔色が良くない。体調が悪いのか聞くと何もないと答えた。でも、手話をする指は時々止まり、息をするのが苦しそうに見えた。
「ねえ、大丈夫そうに見えないよ。看護師さん呼んでくる」
立ち上がった私の手首を蓮が掴んだ。
“ 待って 本当に大丈夫だから よくあること ”
「え?」
“ 実は 心臓が少し 悪いらしい ”
「…」
“ すぐに退院できないのは それがあるから ”
私はショックを受けた。何も言えずにいると蓮は笑ってみせた。
“ 大丈夫 いまのところ 深刻な症状じゃないから ”
「でも」
“ 退院したら 2人でどこかいこう 歩けるように頑張るから ”
「…うん」
蓮はゆっくりと深呼吸をした。それから最近読んでる本の話をした。でも、内容がほとんど頭に入ってこない。蓮は手を止めて私の目を見た。
「どうしたの?」
“ 夕夏 疲れてない? ”
「疲れてないよ、大丈夫。そんな顔してた?」
蓮は頷いた。
「元気だよ。あ、これ何?」
話を変えようと棚にあったオレンジ色のノートを指差した。それはA4くらいのスケッチブックだった。
“ 兄貴が持ってきた ”
「何か描いたの?」
“ まだ何も ”
「そうなんだ。蓮って家具のデザインやってたんだよね?柳瀬さんから聞いたの」
“ うん ”
話をしているうちに蓮の顔色は良くなってきた。でも、頭の片隅では心配が渦を巻いている。
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