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出会い
出会い⑰
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「ごめんなさい」
涙の止まらない宮園さんが可愛く見えた。普段はあんなに堂々としてるのに、やっぱり女の子なんだなと思った。
「ねえ、誰か携帯鳴ってない?」
安西さんが周りを見る。耳を澄ませるとマナーモードの音が黒い鞄から聞こえていた。宮園さんは鞄から携帯電話を取り出して目を丸くした。
「彼氏です…」
携帯は鳴り続けている。
「出なよ」
安西さんに促されて宮園さんは電話に出た。小さな声で時々返事をする宮園さんの顔を見て、事態は良くなっているということがわかった。そして宮園さんは電話を切った。
「…謝られました」
「よかったじゃん」
「彼氏が、夜ごはん一緒に食べようって」
「何時に待ち合わせ?」
「いま用事終わってこの近くの駅にいるらしいです」
「そうなの?じゃあすぐ行かないとね」
「…すいません、ご飯食べに来といて」
「いいのいいの」
「先輩すいません、先に出ます」
「気にしないで。良かったね」
「ありがとうございます」
宮園さんが出てから暫くはケーキを食べながら他愛もない話をした。柳瀬さんも安西さんも、蓮とのことは何も聞かなかった。
「私もそろそろ帰ります」
「まだゆっくりしていってもいいよ?」
安西さんはミランちゃんを抱っこしながら言った。
「最近ちょっと寝不足で。今日も楽しかったです、ありがとうございました」
「橋詰さんがいい時にまた遊びに来てね」
「はい」
鞄を持って玄関に向かうとインターホンが鳴った。応答するために柳瀬さんは部屋へ走った。それでドアを開けずに待った。柳瀬さんは戻ってくると明るい表情で言った。
「リクだって」
「リク君?」
安西さんは美蘭ちゃんを抱えながら鍵を開けドアを押した。
「こんばんは」
目の前に立っている人には見覚えがあった。向こうも私の顔を見て気付いたようだった。
「リク、どうしたんだよ。週末は仕事じゃなかったか?」
「ここんとこ連勤が長かったんで休みもらったんです。これ、プレゼント。もうすぐ美蘭ちゃん誕生日ですよね?」
大きな紙袋を渡されて柳瀬さんと安西さんは喜んだ。
「えー、ありがとう。よかったら上がっていって」
「このあと用事あるんで、また今度来ます」
リクという人は私のことをじっと見た。そして私は会釈した。
「もしかして、リクと橋詰さんって知り合い?」
柳瀬さんが聞いた。私は口を開いた。
「前に病院で会いましたよね」
「ああ、はい」
「そうだったんだ。リク、車で来てるだろ?駅までこの子送ってくれないか?」
「いいですよ」
急で慌てた。
「でも、用事があるってさっき…」
「俺も駅の方行くから大丈夫っすよ」
「…ありがとうございます」
「ちなみに、リクと橋詰さんも同じ歳だよ」
柳瀬さんがそう言って私たちはお互いを見た。
涙の止まらない宮園さんが可愛く見えた。普段はあんなに堂々としてるのに、やっぱり女の子なんだなと思った。
「ねえ、誰か携帯鳴ってない?」
安西さんが周りを見る。耳を澄ませるとマナーモードの音が黒い鞄から聞こえていた。宮園さんは鞄から携帯電話を取り出して目を丸くした。
「彼氏です…」
携帯は鳴り続けている。
「出なよ」
安西さんに促されて宮園さんは電話に出た。小さな声で時々返事をする宮園さんの顔を見て、事態は良くなっているということがわかった。そして宮園さんは電話を切った。
「…謝られました」
「よかったじゃん」
「彼氏が、夜ごはん一緒に食べようって」
「何時に待ち合わせ?」
「いま用事終わってこの近くの駅にいるらしいです」
「そうなの?じゃあすぐ行かないとね」
「…すいません、ご飯食べに来といて」
「いいのいいの」
「先輩すいません、先に出ます」
「気にしないで。良かったね」
「ありがとうございます」
宮園さんが出てから暫くはケーキを食べながら他愛もない話をした。柳瀬さんも安西さんも、蓮とのことは何も聞かなかった。
「私もそろそろ帰ります」
「まだゆっくりしていってもいいよ?」
安西さんはミランちゃんを抱っこしながら言った。
「最近ちょっと寝不足で。今日も楽しかったです、ありがとうございました」
「橋詰さんがいい時にまた遊びに来てね」
「はい」
鞄を持って玄関に向かうとインターホンが鳴った。応答するために柳瀬さんは部屋へ走った。それでドアを開けずに待った。柳瀬さんは戻ってくると明るい表情で言った。
「リクだって」
「リク君?」
安西さんは美蘭ちゃんを抱えながら鍵を開けドアを押した。
「こんばんは」
目の前に立っている人には見覚えがあった。向こうも私の顔を見て気付いたようだった。
「リク、どうしたんだよ。週末は仕事じゃなかったか?」
「ここんとこ連勤が長かったんで休みもらったんです。これ、プレゼント。もうすぐ美蘭ちゃん誕生日ですよね?」
大きな紙袋を渡されて柳瀬さんと安西さんは喜んだ。
「えー、ありがとう。よかったら上がっていって」
「このあと用事あるんで、また今度来ます」
リクという人は私のことをじっと見た。そして私は会釈した。
「もしかして、リクと橋詰さんって知り合い?」
柳瀬さんが聞いた。私は口を開いた。
「前に病院で会いましたよね」
「ああ、はい」
「そうだったんだ。リク、車で来てるだろ?駅までこの子送ってくれないか?」
「いいですよ」
急で慌てた。
「でも、用事があるってさっき…」
「俺も駅の方行くから大丈夫っすよ」
「…ありがとうございます」
「ちなみに、リクと橋詰さんも同じ歳だよ」
柳瀬さんがそう言って私たちはお互いを見た。
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