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東京
東京⑭
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「機材の使い方とかは勉強してるんですけど、実践はできてません」
「……」
「仕事としてさせてもらってるのは料理の撮影とかで」
「あーもういい」
北見は長い溜息をついた。
「来週火曜」
次の言葉を待ったが北見は冷ややかな表情のまま拓人の顔を見ている。
「あの、それは何の日程ですか?」
「新入りは朝7時出社。スケジュールとかはさっき一緒に入ってきた木下が教える」
「…すみません、まだ今の職場に退職するって言ってないんです」
「だから?」
「ちょっと、来週から入るのは難しいです…」
北見は鋭い眼光で瑠香を見た。
「瑠香、こいつやる気あんのか?」
「北見さんお願いっ!あたしがいきなり話したから都合つかなくって」
北見はわざとらしく大きな溜め息をついた。
「いつから入るつもりだ?」
「最短でも8月末に辞めるので、9月からお世話になれたらと思ってます」
「試用期間」
重低音ある声が響いた。北見はその先を続けた。
「やる気あんなら採用するまでの間、休みの日はうちに来い。アシスタントで使えるか見てやる」
拓人は一瞬ひるんだ。
「シフト制なので、曜日がバラバラなんですけど大丈夫でしょうか」
「ああ。誰かしら撮影してるからお前がスケジュールに合わせて現場にくればいいだけだ」
「…はい」
「なんだその返事は?やりたくねぇなら言えよ。簡単に入れると思うなよ」
瑠香は咄嗟にフォローした。
「ちょっと北見さん怖いよ~。大丈夫、この子絶対頑張れるから」
「頑張ればできるとかじゃねんだよ」
「わかってるって~。ね?」
「はい」
覇気のない返事が気に入らない様子の北見だったが、やがて見下すように鼻で笑った。
「とりあえず来週からだ。木下に連絡させるから今日は帰れ」
「わかりました。面接していただいてありがとうございました」
拓人と瑠香は立ち上がりドアに向かった。出る前に一礼しようと拓人が振り返ると北見は言った。
「試用期間は無給な」
どんな表情をしているか口元を見るだけでわかった。
「わかりました。失礼します」
そっとドアを閉めた。妙な緊張感が余韻を残している。瑠香は軽やかな足取りで早速事務所の出口へと向かって行く。周りを見渡すとさっきまでいた社員らは何人かいなくなっていた。こちらを見る者はおらず、ただパソコンのマウスをカチカチと鳴らす音が聞こえている。
「失礼します」
出口に立った拓人の声が響いた。
「……」
「仕事としてさせてもらってるのは料理の撮影とかで」
「あーもういい」
北見は長い溜息をついた。
「来週火曜」
次の言葉を待ったが北見は冷ややかな表情のまま拓人の顔を見ている。
「あの、それは何の日程ですか?」
「新入りは朝7時出社。スケジュールとかはさっき一緒に入ってきた木下が教える」
「…すみません、まだ今の職場に退職するって言ってないんです」
「だから?」
「ちょっと、来週から入るのは難しいです…」
北見は鋭い眼光で瑠香を見た。
「瑠香、こいつやる気あんのか?」
「北見さんお願いっ!あたしがいきなり話したから都合つかなくって」
北見はわざとらしく大きな溜め息をついた。
「いつから入るつもりだ?」
「最短でも8月末に辞めるので、9月からお世話になれたらと思ってます」
「試用期間」
重低音ある声が響いた。北見はその先を続けた。
「やる気あんなら採用するまでの間、休みの日はうちに来い。アシスタントで使えるか見てやる」
拓人は一瞬ひるんだ。
「シフト制なので、曜日がバラバラなんですけど大丈夫でしょうか」
「ああ。誰かしら撮影してるからお前がスケジュールに合わせて現場にくればいいだけだ」
「…はい」
「なんだその返事は?やりたくねぇなら言えよ。簡単に入れると思うなよ」
瑠香は咄嗟にフォローした。
「ちょっと北見さん怖いよ~。大丈夫、この子絶対頑張れるから」
「頑張ればできるとかじゃねんだよ」
「わかってるって~。ね?」
「はい」
覇気のない返事が気に入らない様子の北見だったが、やがて見下すように鼻で笑った。
「とりあえず来週からだ。木下に連絡させるから今日は帰れ」
「わかりました。面接していただいてありがとうございました」
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「試用期間は無給な」
どんな表情をしているか口元を見るだけでわかった。
「わかりました。失礼します」
そっとドアを閉めた。妙な緊張感が余韻を残している。瑠香は軽やかな足取りで早速事務所の出口へと向かって行く。周りを見渡すとさっきまでいた社員らは何人かいなくなっていた。こちらを見る者はおらず、ただパソコンのマウスをカチカチと鳴らす音が聞こえている。
「失礼します」
出口に立った拓人の声が響いた。
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