ゴールドレイン

小夏 つきひ

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咲 21

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週末が明けて5日ぶりに登校した拓人は自分の席に他の生徒が座っているのを見て驚いた。
「あ、原君おはよう」
「…おはよう」
「原君休んでる間に席替えあって、今ここ僕の席」
周りを見渡した、確かにそれぞれ席が変わっている。
「原君の席あっち」
指さしたのは一番前の列だった。
「ありがとう」
「先生の真ん前で最悪やな」
教壇の前にある自分の席まで歩きランドセルを下すと教室の入り口から何人かの生徒が走って入ってきた。
その後ろの方を咲が歩いているのを見て拓人は思わず呼びかけそうになった。
咲もそれに気が付き目が合った、しかし、すぐに俯いてしまい窓際の方へ行き席に座った。


放課後、まだ明るい夏の日差しがグランドを照らしているなか拓人はひとり歩いていた。
門を出たあたりで後ろから声がした。
「原君!」
振り向くと女子生徒が2人走ってこちらに向かってきた。手提げの中から大きめの巾着袋を出すとその口を開けて何かを取り出した。
「これ、この前おばあちゃんがくれたお菓子返す」
「え」
「お母さんが返して来いって」
「…どうして?」
「あの子と遊ぶなって言われてるから」
拓人は自分の悪口を真正面で言われたような気になったがすぐに多重子の言葉を思い出した。
「あの子って誰のこと?」
2人はその一言に対して眉を顰めた。
「原君、もしかして知らんの?」
「何のこと?」
「原君の親戚にコウタって子おるやん、その子のことやけど」
拓人には全くわからない。
「え!それも知らんの?なら火事のことわからんはずやわ」
「火事…」
いつかの会話が脳裏に蘇る。
「こっち来て!大きい声で言われへんから」
2人は気分が高揚した様子で拓人に手招きをし学校の門から遠ざかった。周りに誰もいないのを確認すると声を潜めて話し始めた。
「あのな、一昨年の夏にコウタっていう子が悪戯して火事起こしたんよ」
もう1人の女子生徒が興奮気味に言った。
「火付けられた所はな、早川さんのお父さんがやってたお店やってん」
拓人は動揺した、いくつもの疑問が浮かんでくる。
「なんで早川の店なの?」
「コウタって子が人の家に石投げて遊んでて、それを早川さんが駄目やでって言ったら怒ったみたい」
「そんなことで?」
「うん、びっくりするやろ?」
「早川のお父さんって、無事なの?」
「ううん。煙吸って意識がなくなって、でもこのへんの病院だと治療ができないから遠くの病院に入院してるんだって」
「早川って…」
そう言いかけて拓人は口を閉じた。
「それからあたしらみんな、コウタって子と遊ぶなってお母さんらに言われてるんよ」
「ねえ原君ってさ、ほんとに何も知らないの?」
「どういう意味?」
その後女子生徒から話を聞いた拓人は拳を握り立ち尽くした。
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