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「何が届いたの?」
キッチンに戻ってきた健司へ拓人が尋ねた。
「ネットで注文した商品だよ」
健司は荷物をソファに置いた。
「ねえ、残りも全部出来たよ。見てこれ!」
拓人が手のひらに乗せているのは、いびつな形をしたコロッケだった。
「星型だよ」
パン粉をまぶした時に角が崩れたのか、星とも丸ともいえない形が健司の目におかしく映った。
「星か…すごいな。それも揚げような」
健司がそういうと拓人は大きく頷いた。
「拓人、そのコロッケのトレー持って来てくれるか?」
「うん!」
健司が再びガスコンロに点火しようとした瞬間、後ろで大きな音がした。拓人がパン粉のついたままの手でトレーを運び、あと一歩のところでうっかり床にぶちまけてしまった。
「あ~」
健司は手を止めて床に屈みコロッケを拾い始めた。
「ごめんなさい」
拓人が呟く。
「先にその手を洗いなさい」
「…はい。ごめんなさい」
拓人が流しで手を洗っている間にコロッケは元通りトレーに並べられた。さっきまで楽しそうにしていた拓人が落ち込むのを見て健司は不憫に思った。
「油で揚げるからバイ菌は気にしなくていいぞ」
そう言って笑い立ち上がった、その時視界が歪みバランスを崩した健司は咄嗟に台に手を付こうとした―――――――――
拓人が見たのは天ぷら鍋が引っ繰り返り父親の手腕に油が掛かる光景だった。健司は過ってガスコンロに手をつき体重を預けてしまったのだ。
「ゔゔっ」
床に倒れ込んだ健司に拓人は近付いた。
「お父さん!?」
聞いた事のない鈍い声で唸りながら熱さと痛みに耐える健司を見て拓人はパニックになった。「どうしよう… 僕、僕………」
健司は拓人に電話の子機を持ってくるよう言った。調理のために捲っていた部分が諸に油を被り皮膚はみるみる変色していく。心臓から全身に渡って激しく鼓動している。
。子機を持ってきた拓人に119番を押させ、水を掛けるのも恐ろしくなるほど尋常ではない痛みに震えながら受話器の向こうに住所を伝えた。
健司が目を覚ますとベッドの横には拓人が座っていた。
拓人は真っ赤な目をこすり涙を滲ませた。
「お父さん、ごめんなさい」
健司はゆっくりとした瞬きで頷いた。
「お前は何も悪くない」
部屋のドアが開き看護師が入ってきた。
「原さん!良かった、思ったより早く目が覚めましたね」
「…すみません、どうなったんでしょうか」
「手術は無事に済んでます。先生呼んできますね」
看護師は点滴を確認すると部屋を出た。5分程して医者が来た。
「まだ痛みはひどいと思いますが鎮痛剤を打ってます。1週間ほど入院が必要です」
「入院ですか」
「他にご家族は?」
「妻が他界しているのでうちは息子と2人なんです」
「親戚の方に連絡は取れますか?」
「親戚とは疎遠で…」
「そうですか」
医者は拓人がいることを考慮して一旦話を終わらせた。
「息子さん、今夜はどうしましょうか」
「今夜だけ、ここに泊まらせてもらえませんか?後のことは少し考えます」
「わかりました、事務にそう言っておきます」
「ありがとうございます」
医者が出た後、瞼を重そうにしている拓人に健司は一緒にベッドで横になるよう言った。
キッチンに戻ってきた健司へ拓人が尋ねた。
「ネットで注文した商品だよ」
健司は荷物をソファに置いた。
「ねえ、残りも全部出来たよ。見てこれ!」
拓人が手のひらに乗せているのは、いびつな形をしたコロッケだった。
「星型だよ」
パン粉をまぶした時に角が崩れたのか、星とも丸ともいえない形が健司の目におかしく映った。
「星か…すごいな。それも揚げような」
健司がそういうと拓人は大きく頷いた。
「拓人、そのコロッケのトレー持って来てくれるか?」
「うん!」
健司が再びガスコンロに点火しようとした瞬間、後ろで大きな音がした。拓人がパン粉のついたままの手でトレーを運び、あと一歩のところでうっかり床にぶちまけてしまった。
「あ~」
健司は手を止めて床に屈みコロッケを拾い始めた。
「ごめんなさい」
拓人が呟く。
「先にその手を洗いなさい」
「…はい。ごめんなさい」
拓人が流しで手を洗っている間にコロッケは元通りトレーに並べられた。さっきまで楽しそうにしていた拓人が落ち込むのを見て健司は不憫に思った。
「油で揚げるからバイ菌は気にしなくていいぞ」
そう言って笑い立ち上がった、その時視界が歪みバランスを崩した健司は咄嗟に台に手を付こうとした―――――――――
拓人が見たのは天ぷら鍋が引っ繰り返り父親の手腕に油が掛かる光景だった。健司は過ってガスコンロに手をつき体重を預けてしまったのだ。
「ゔゔっ」
床に倒れ込んだ健司に拓人は近付いた。
「お父さん!?」
聞いた事のない鈍い声で唸りながら熱さと痛みに耐える健司を見て拓人はパニックになった。「どうしよう… 僕、僕………」
健司は拓人に電話の子機を持ってくるよう言った。調理のために捲っていた部分が諸に油を被り皮膚はみるみる変色していく。心臓から全身に渡って激しく鼓動している。
。子機を持ってきた拓人に119番を押させ、水を掛けるのも恐ろしくなるほど尋常ではない痛みに震えながら受話器の向こうに住所を伝えた。
健司が目を覚ますとベッドの横には拓人が座っていた。
拓人は真っ赤な目をこすり涙を滲ませた。
「お父さん、ごめんなさい」
健司はゆっくりとした瞬きで頷いた。
「お前は何も悪くない」
部屋のドアが開き看護師が入ってきた。
「原さん!良かった、思ったより早く目が覚めましたね」
「…すみません、どうなったんでしょうか」
「手術は無事に済んでます。先生呼んできますね」
看護師は点滴を確認すると部屋を出た。5分程して医者が来た。
「まだ痛みはひどいと思いますが鎮痛剤を打ってます。1週間ほど入院が必要です」
「入院ですか」
「他にご家族は?」
「妻が他界しているのでうちは息子と2人なんです」
「親戚の方に連絡は取れますか?」
「親戚とは疎遠で…」
「そうですか」
医者は拓人がいることを考慮して一旦話を終わらせた。
「息子さん、今夜はどうしましょうか」
「今夜だけ、ここに泊まらせてもらえませんか?後のことは少し考えます」
「わかりました、事務にそう言っておきます」
「ありがとうございます」
医者が出た後、瞼を重そうにしている拓人に健司は一緒にベッドで横になるよう言った。
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