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五がんばり目~ヤンデレ君にご注意~
第40話 顧問と条件
しおりを挟む放課後、森本は約束通り数学準備室前で待っていると松城がやってくる。
「お待たせ。」
鍵を開けて入ると室内には資料や本が大量に置かれていて、机の上も埋まっているほどだ。
「さて、大体のことは聞いてるし、僕は顧問するの構わないんだけど
一つお願いがあるんだ。」
「なんですか…?」
松城が引っ張り出した椅子に座りながら森本はつい身構えるも、提案された条件は意外なものだった。
「僕の担任してるクラスに不登校の子がいるんだけど、学校に連れてきてほしいんだ。」
「不登校?」
「小野寺 涼真くんっていう子、知ってる?
入学して少し経った頃、突然学校来なくなっちゃって
いじめにしては時期が早すぎるし第一そういう対象に見えないタイプだから原因不明の登校拒否。
家に行っても顔を見せてくれなくて、最近は会話すら出来てない。
そろそろ試験の準備もあって忙しいから、君に様子見お願いしたいんだ。」
「…分かりました。やってみます!
その人が学校来れたら顧問になってくれるんですよね?」
正直松城に顧問をしてもらうのには不安があったが背に腹は代えられない。
「うん。
こんなこと生徒に言っちゃダメかもしれないけど、教師の中で僕は立場が弱いんだ。
年功序列な世界だし、何かあったら他にも手伝ってくれるかな?」
前回とイメージの違う松城がなんだか可哀想に思い、森本は人助けのつもりで承諾した。
「そうなんですか、俺に出来ることならがんばります!」
「…ありがとう。」
人を疑うことを知らないのか損得勘定がないのか、ずいぶん扱いやすい生徒だと松城は一人呆れていた。
「なんかすっごくお金持ちそう…。」
早速小野寺の家へ訪れた森本は、一般家庭より遥かに大きな豪邸を見て驚いた。
ピンポーン
「…はい?」
「あの、涼真くんと同じ高校の森本空汰って言います。
先生に頼まれてプリント持ってきたんですけど…。」
「あらありがとう。」
意を決してインターフォンを鳴らすと母親が出迎えてくれた。
いつもそうしているのか、何も言わずに小野寺の部屋へ案内すると声をかけてくれた。
「涼真?お友達が来てくれたわよ。」
「…。」
「ごめんなさいね、家族の前でしか話さなくなっちゃって…。」
「大丈夫です、少し涼真くんと二人で話してもいいですか?」
「え、ええ。構わないけど…。
じゃあ私は下にいるから、何かあったら言ってね。」
心配そうな表情のなかに、何をしても無駄だろうという気持ちもあるのか母親はすんなりと一階へ降りていった。
森本はドアの前に座り声をかける。
「涼真くん、初めましてなのにびっくりさせてごめんね。
松城先生に頼まれてプリント持ってきたんだけど、受け取ってくれる?」
「…。」
「プリントはここに置いとくね。
…松城先生から聞いたんだけど、涼真くんってすっごく背が高いんでしょ!
俺バスケ好きだからすっごく羨ましい。」
森本はバスケの話やここに来た理由を正直に話した。
嘘をついたり騙したりして登校させても、きっと続かないし意味がない。
まずは本当に友達になろうと思ったのだ。
しばらく話しかけても反応はなかったが、夕飯時になってしまったので帰ることにした森本。
「そろそろ帰るね、良かったらまた来てもいいかな。」
「…。」
やはり返事はなかった。
残念な気持ちでいっぱいだったが仕方ない。
「またね。」
ドアの前で言うと森本はその場を去っていった。
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