がんばり屋の森本くん

しお子

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一がんばり目~えっちな先輩~

第2話 気だるげな先輩

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申請書をもらってから2週間。
未だ自分の名前しか埋められていない紙を見て、森本もりもとは眉をハの字にして昼食をとっていた。


空汰そらたー、もうお前諦めてサッカー部入ろうぜ?」


声をかけてきたのは同じクラスの水野 陽平みずの ようへい

隣の席で話していく内に仲良くなり、学校ではほぼずっと一緒にいる状態の友達だ。
彼はサッカー部に入部し、そろそろ本格的に部活動が開始するため何度も断られている勧誘を最後のダメ押しでしてみるのだった。


「やだよ、俺バスケがしたいんだから」


「そんなこと言ったって、部員がお前だけで顧問もいない部なんて部活じゃねぇよ。バスケは趣味でやって部活は違うのにすれば良いじゃん、サッカーとかさ。」


水野は多少キツいことを言う人間で、突っ走りがちな森本の良いストッパー役になっていた。しかし森本はバスケのこととなると何のその、余計に熱くなってしまうのである。


「しつこい、それに部員の一人には当てがあるんだもんね」


「へぇ、ちなみに誰を誘うつもりなんだよ?」


「2年の菊地 景一きくち けいいち 先輩!」


「…誰?」


先程までの困り顔から一転し笑顔を見せ、重ねられた質問にここ最近知った情報を答える。


「この学校って部活は絶対に入らなくちゃいけない決まりじゃん?
しかもどの部活も大真面目にやってるから部活に入りたくない人は逃げ場が無いんだけど、そんな人たちの為に週一で校内清掃とかボランティアやれば免除される制度があるんだ」


「ふーん。で、その中の一人が菊地先輩ってことか?」


「うん!俺もまだ未入部扱いだから、それに参加してて知り合ったんだ」


「でもさ、それって入部してくれる可能性低くね?」


部活が嫌で週一回のボランティアに参加している、ましてや2年生がバスケ部に入部するとはとても考えられなかった。

だが、そこはお得意の言葉でとりあえず乗り切ろうとする森本。


「分かってるよ…。だからがんばってお願いしてくるんだ!今日の放課後に」


「…おー、せいぜいがんばってくれ」


水野はどこまでがんばれるのかと思いながらあまり心のこもっていない口調で返し、食べ終わった弁当を片付け二人で教室に戻っていった。



そして放課後ー


水野との別れの挨拶も早々に、週一のボランティアに向かう。

今日は校内清掃だ。


「先輩は…まだ来てないか」


一番乗りで着いたのでまだ掃除の準備も出来ておらず、一人で外用の箒やごみ袋を出しながらそわそわと辺りを見回していた。

桜ヶ丘高校は部活開始の合図にもチャイムが使用され、それは共にこの作業の開始の合図でもある。

その鐘が鳴ると同時に菊地は現れた。


「先輩!」


姿を見つけ声をかける。


「先輩、ちょっと話したいことがあるんですけど」


「んー、とりあえず掃きながら話そうか。注意されるのめんどくさいし」


少し長めの髪を緩く束ねている頭をぽりぽり掻きながら、締まりのない口調で促して作業を開始した。


「あのー俺バスケ部作りたいんですけど、人数足りなくて…先輩入ってくれませんか?」


作業をしながら控え目に話しかけると菊地は今までに無いくらい即答で


「無理」


と答えた。


「な、なんでですか!お願いします!先輩身長高いし、手も大きいしユニフォーム似合いそうだし、絶対バスケ部入るべきですよ!」


「嫌。
俺めんどくさいの嫌いなんだよねー、ましてやスポーツなんて絶対無理。
大体さー、この体格だから勧誘してくる奴とか結構いたけど君らが入学するまでずーっと断り続けてきたんだよ?そんな先輩が入部してくれるとよく思ったね?
毎日学校来るのだって死ぬほどめんどくさい思いして来てんのに、殺す気?
このボランティアだって、来なかったらペナルティがあるから仕方なくやってるってのにさー」


菊地は森本の勢いがまるで無かったかのようにだらだらと箒で桜の花びらを掃きながら話し、自分が極度のめんどくさがり屋だということをしっかりアピールした。

思った以上の曲者にたじろぎつつ、他のボランティア参加者は人数自体も少なく、病弱な人や勉強一筋という目標のある人たちで頼めそうな人がいないため、必死で食い下がる。


「そこを何とか!部はまだ設立してないですし、直ぐに活動って訳でもないです。朝は俺が起こしに行きますし、パシりでもなんでもやります!」


なんでもやる。その言葉を聞いた瞬間、今まで森本の目さえ見なかった菊地が、真剣な顔で聞いた。


「なんでも?本当にそんなこと言って良いの?」


「あ…あの、死ぬとか殺すとかそういうんじゃなくて、自分に出来ることならなんでもって意味で…。」


初めて見る表情に緊張して尻込みしてしまう。

菊地は森本へ近付き力強く腰を引き寄せた。
心なしか口元が緩んでいる。


「俺さぁ、一つだけ燃えることがあるんだよねー。
…エロいこと。これだけは誰にも負けないくらい熱意があるんだけどさ、まだ男との経験ないんだよねー…
森本くん、一発やらせてくれない?」


思っても見なかったお願いに顔を真っ赤にしながら口をぱくぱくさせるだけで声が出ない。腰を捕らえられているため逃げられず、距離が更に近くなる。


「あー、最初からヤるはまずかった?じゃあ一発抜くことからお手伝いしてもらおうかなー。
森本くんなら細いし結構好みな顔してるし、出来ると思うんだよねー」


心底楽しそうな目で品定めするかのごとく体を見られ、羞恥心やらなにやらで居心地が悪くなった森本は目をつぶった。

そして出来ることならこの場から逃げ出したいと菊地の腕を掴む。


「あ、の…俺」


「はぁ、しょうがない。
森本くんがなんでもするって言うから恥ずかしいの我慢して告白したのになー。残念だけど、この話は無かったことにしようか」


森本の仕草に性欲が掻き立てられるもさすがに裏庭で手を出したらめんどくさいことになると考え、一旦引いてみる。

ここで逃げられても仕方ない、そう思うもののやはり名残惜しい気持ちで解放してやる。


「待ってください!先輩、俺…その、がんばります!」


交渉決裂になっては困ると焦った森本は離れかけた腕を引き寄せ、お得意のがんばる宣言をするのだった。


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