上 下
37 / 62

37.僕は邪魔者?~side 不二蒼~

しおりを挟む
放課後、広瀬ひろせと帰ろうとしているときに影山かげやまさんとすれ違った。
「影山さん」と言うと、「あ、不二君、広瀬君おつかれー」と影山さんは立ち止まることなく、にこっといつも通りの笑顔で手を振った。最近影山さんと話す機会が減っている気がする。忙しいのかな。

「今日も塾?」と、影山さんを追って振り返りつつ聞いた。
影山さんは「そー!じゃーね!」と振り返り帰らずさっさと歩いていく。

「行くぞー」と広瀬が僕のことを促してくる。広瀬も今日は塾があるから早めに帰りたいらしい。
「・・・なんで、裏門の方行くのかな?」
「そっちの方が、塾近いんじゃねーの」

どうでもいいだろ、と言わんばかり適当に広瀬が答える。影山さんはね、広瀬と同じ塾に通ってるんだって。塾に行くなら、広瀬と同じ方向に行くべきじゃないの?
・・・どうせ、広瀬に聞いても理由なんてわからないだろう。だから、あえて聞くことはしない。


――影山さんは僕に嘘をついている。


「ちょっと・・・」と言って影山さんの後を追いかけた。広瀬が「おーいー!いいじゃん!別に!」と言いながらも僕が足を止めないので後ろからついてくる。


裏門には横長の黒いリムジンが停まっていた。車の前にはその持ち主であるロン毛野郎と、その執事が立っている。

その手前には、九頭谷くずたに先輩。

「おまたせしましたーっ!」とたたたっと影山さんが走っていく。

「いーんだよ、こんな奴のために走らなくて!!」と九頭谷先輩がいう。


久しぶりに九頭谷先輩見たな・・・。元気そうでよかった。
というか、どういうこと?不自然すぎる組み合わせながらも、なぜかロン毛先輩とも親しげな彼らの様子をただ僕はそれ以上近づくことはできずに眺めていた。
影山さんは意図的に僕に嘘をついてでも、この状況を知らせたくなかったのだろうから。理由は何だろ。

僕が嫌いになった?
思い当たる節は山ほどあって、実際影山さんは最近よそよそしい。

それとも九頭谷先輩と影山さんは付き合うことになった?僕は邪魔者?

ロン毛野郎とはなに?仲良くなったの?どこへ何をしに行くの?

思いつく理由はどれも、僕を落ち込ませるには十分だった。心が締め付けられるように苦しい。


「うわっ!そうそうたるメンツだな。こわぁ・・・」と広瀬が後ろで言っている。


ロン毛野郎が、僕に気づいたようだった。僕は無意識に、ロン毛野郎をにらんでいた。わからないけど、ロン毛野郎が何かをたくらんでいるような気がしてならない。影山さんたちは、ロン毛と一緒にいて安全なの?何かに巻き込まれていない?大丈夫なの?

ロン毛野郎がふっと口角を上げた。完全に僕に気づいていて、僕に見せつけるように笑った。

影山さんたちは、慣れた様子でロン毛野郎の車に乗り込んでいった。僕はただ、その車を見送ることしかできなかった。



~side 城之内~

鋭い視線を感じて見上げると、不二と呼ばれる暴力男が今まで仲良かったはずのヤンキーと普通の女をにらんでいる。

ふっ、よかった。仲間割れは絶賛継続中という感じのようだ。
このヤンキー九頭谷と普通系女子影山の2人が不二と仲直りする前に、不二をこちらに引き入れたい。

不二をこっちの味方につければ、影山は容易く手に入るだろう。
なぜ、こんな普通の女に執着するのかって?執着じゃない、これは、ただの興味。僕のことがちっとも好きにならない女。何度かハグをしても、一切いい感じにならない。

相手の印象に一切を残さないあの挨拶も不思議でならない。あの挨拶をされると、影山に対する興味が削がれる。引き留めた手の力が抜けてつい手を離して話してしまう。なんなんだ、あれは・・・。

それに、この嫌われ者のヤンキーと怪力男の不二、友達がいないといった森山文子などという変人たちと平凡女でありながらそこそこ仲良くなったそのスキルも利用価値がある。

加えて、あの愚かな感じたまらないよね。自己犠牲精神っていうの?自分が一番無力で弱くて襲われたくせに、真っ先に前に出てかばおうとするの。いや、君、なんにもできないだろって思わず頭の中で言いたくなる。
ふふふ、堪らなく愚かで、笑える。

この僕があの平凡なかつ愚かな影山に対して下手に出ているのは、不二が脅威だからだ。恐らく影山を傷つけると不二がキレて僕の命が危ない。そんな下手な真似はしない。


不二を引き入れれば、もう怖いものはない。あの怪力は相当価値がある。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

ハーレム主人公の友達として人類滅亡回避します

東金ヒカル
恋愛
高校受験を終え、自由な時間を楽しんでいた佐藤悟は、交通事故で命を落としてしまう。しかし、目を覚ますと彼の前には自称「神」が現れ、彼に使命与える。とあるハーレム少年・神野響の恋愛をサポートし、彼が人間の女の子とゴールインすること。そうしなければ、響の持つ「聖力」を狙った悪魔の少女と天使の少女たちによって人類が滅亡してしまう。ハーレム主人公の友人とし人類滅亡を回避する為今立ち上がる!

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

きみの騎士

  *  
恋愛
力持ちな平民の女の子リイが、とびきり可愛い貴族の男の子ルフィスを守るために騎士になりました。 ルフィスのいない王宮には、びっくりするほど可愛いおひめさまや、めちゃくちゃかっこいー王太子がいて、きゃあきゃあ言われたり、抱きしめられたり、当て馬で舞踏会に出たりと大変ですが、ルフィスに逢えるまで頑張ります!

夫に離縁が切り出せません

えんどう
恋愛
 初めて会った時から無口で無愛想な上に、夫婦となってからもまともな会話は無く身体を重ねてもそれは変わらない。挙げ句の果てに外に女までいるらしい。  妊娠した日にお腹の子供が産まれたら離縁して好きなことをしようと思っていたのだが──。

推しの兄を助けたら、なぜかヤンデレ執着化しました

群青みどり
恋愛
 伯爵令嬢のメアリーは高熱でうなされている時に前世の記憶を思い出し、好きだった小説のヒロインに転生していると気づく。  しかしその小説は恋愛が主軸ではなく、家族が殺されて闇堕ちし、復讐に燃える推しが主人公のダークファンタジー小説だった。  闇堕ちしない推しと真っ当な恋愛を楽しむため、推しの家族を必ず救うと決意する。  家族殺害の危機を回避するために奮闘する日々を送っていると、推しの兄であるカシスと関わるようになる。  カシスは両親殺害の濡れ衣を着せられ処刑される運命で、何より推しが心から慕う相手。  必ず生きてもらわねば……! と強く願うメアリーはカシスと仲良くなり、さらには協力者となる。 「(推しの闇落ちを防ぐために)カシス様には幸せに生き続けて欲しいのです」  メアリーはカシス相手に勘違い発言を連発する中、ついに推しの家族を守ることに成功する。  ようやく推しとの明るい恋愛を楽しめると思っていたが、何やらカシスの様子がおかしくなり── 「君は弟を手に入れるため、俺に近づいて利用しようとしていたんだね」 「俺に愛されて可哀想に」  これは推しと恋愛するため奮闘していた少女が、気づけば推しの兄の重い愛に囚われてしまったお話。  

処理中です...