魔王に呪いでフェンリルにされたので狼生を謳歌する考えです

第24話

24-3

　深呼吸をすると、グリップを強く握り剣を抜こうとした。しかし、抜くことはできなかった。何度か挑戦して抜くことができなかった子供は、自分に抜くことができないと分かったのかグリップから手を離した。
　神父に向かって頭を下げると、満足したような顔をして扉を開くと外に出て行った。どうやら一人で来ていたようだ。
　それからは、騒ぎが起きることもなく順調に進んで行った。本当に抜けるのかと文句を言う大人もいたが、今までの『勇者の儀』でも最後の方で剣を抜いたことが何度もあった。
　細工をしていない限りいつかは抜けるだろう。
　儀式は進み、残る人帰る人さまざまだ。最初に騒ぎを起こした人たちは、剣を抜こうとしている子供を睨みつけるようにして見ていた。気にして怖がる子供もいたが、気にせず剣を抜こうとする子供の方が多かった。
　睨みつけるようにして見ていた大人は、剣が抜けないことにほっとしていた。もしかすると、最後まで抜けなければもう一度、子供に挑戦してもらおうと考えているのかもしれない。
　だが、最後まで抜けないということはあり得ない。この中に必ず抜くことができる子供がいるのだ。
　そして、次はリクトの番だ。