魔王に呪いでフェンリルにされたので狼生を謳歌する考えです

第1話

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　翌日。起床してからすぐに無限収納インベントリから食事を出した。そして急いで食べると、なるべくここにいた痕跡を残さないように片付けてからすぐに出発をした。
　人の気配はしないけれど、魔物の気配がしたからだ。もしかすると、この洞窟で生活していた魔物がいたのかもしれない。僅かに匂いがしていたが、しばらく使っていない様子だったので気にすることなく使わせてもらった。もしかすると、ただ獲物を捕まえるために長時間離れていただけなのかもしれない。こんなところで魔物と争いたくはない。
　走って渓谷を抜けると、そこには畑や田んぼが広がっていた。畑には人の姿も見える。近くには村がある。きっとそこで暮らしている人だろう。
　気づかれないように背を低くして草にまぎれてゆっくりと進む。遊んでいる子供がいるが、作業をしている人の子供なのだろう。ときどき走って予想できない場所に移動するため子供を見ながら注意して進んでいたのだが、近くで小さな声が聞こえた。
　正面を見ると、そこには三歳くらいの女の子がいた。他の子供に注意しすぎていたため、この子供に気づくことができなかったようだ。その子供は草より低い身長だったことから、注意しないと気が付けなかっただろう。見えている子供以外にもいるとは思っていなかった俺も悪かった。
　子供はどうやら俺をただの犬とでも思っているようで、笑顔で手を伸ばしてきた。突然動いて驚かすよりは大人しく撫でられた方がいいだろうと判断したのだが、離れた場所から女性の悲鳴が聞こえた。この子供の母親らしい。
　子供のものだろう名前を呼んでいる。子供の姿が見えなくなって探したら俺を見つけたのだろう。探していた子供の近くに魔物がいれば、悲鳴を上げたくなるのも仕方がない。