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プロローグ

プロローグ3

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「行け!! あとは、頼んだ」

 仲間が俺の名前を呼ぶ声が聞こえたが、俺は扉に向かって走り出した。仲間の声が聞こえなくなって、転移したことが分かった。
 扉を開くには、目の前の魔物を倒さなくてはいけない。けれど、疑問に思うことがあった。
 魔物たちは隙だらけの仲間には攻撃せずに、俺だけを狙っていた。今までの魔物なら、仲間も狙っていたはずだ。それだけじゃなく、俺に対しても手加減しているように感じた。
 剣で魔物を弾き飛ばし、扉を強く押し開く。何故か魔物は追ってこない。ただ黙って俺のことを見ているだけだった。
 部屋の中は静かだった。扉の閉まる音が響くと、突然目の前から魔王が迫って来た。部屋に入ったときは姿がなかったはずなのに、突然現れた魔王に少しだけ驚いた。
 勇者だけが倒すことのできる魔王。剣を握る手に力を込めたが、魔王の顔を見た途端に力を抜いてしまった。あまりにも美人だった。相手が魔王であっても、傷をつけるのが嫌だと思えるほどに美人だったのだ。
 隙を見せたのが悪い。目の前が白くなり、これで俺の人生は終わったと思った。勇者としては何もできなかったけれど、仲間を逃がすことができた。それだけで充分だった。
 それなのに。
 目を覚ますと、何故か檻の中にいた。殺されなかったことが不思議だった。今までの魔王は、勇者を殺してきたはずなのに。
 広い部屋の隅に檻は設置されているようだ。綺麗な部屋の中に、不自然にこちらに向けられた鏡があった。そして、そこに映っているはずの俺の姿に驚いた。

「白い、フェンリル」

 鏡に映っているフェンリルが俺と同じ動きをしていることから、映っているのが俺だと分かった。人間であるはずの姿ではなく、魔物になった姿に驚いていると、部屋の扉が開いて魔王が入ってきた。
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