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第三章 魔物討伐専門組織『ロデオ』
魔物討伐専門組織『ロデオ』2
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龍が倒れて5日、白龍が行方不明になって1週間と5日が経った日。ベッドから起き上がり家の中を問題なく歩くことができる程に回復していた。風邪薬はまだ飲まなくてはいけなかったが、高熱が出ることはなかった。
外出をまだ認めてもらっていないため、見張りの役割のため残っているであろうユキと家には2人きり。ユキは人ではないため、2人きりとは言わないだろうが。
ソファに座り本を読む龍の横で伸びるユキは、龍に膝枕をしてもらい穏やかな寝息をたてている。今日も外は暑く、涼しい家の中はユキにとって過ごしやすいのだろう。ここ数日家を出ていないユキも白龍を探したいことだろう。
しかし、ユキも白龍を探しに白美と一緒に外出した日があった。それは龍が倒れた翌日。だが、1時間程度で帰宅をした。早い帰宅に、その日留守番をしていた黒麒は驚いた。だが慌ててお風呂場へ消える姿に不思議に思いながらも追いかけた。
ノックをしてからお風呂場の扉を開こうと考えていた。しかし、ノックをする所ではなくそこは開いていた。慌てて視線を逸らそうとしたが、どうやらその必要はないようだった。逸らす前に見えた光景は怒られることもないと分かるものだったのだ。
風呂桶に右前足を入れるユキと、それに水を溜める白美の姿が見えたからだ。その様子から、何があったのか黒麒は察することが出来た。今日はとても暑いのだ。人の姿をしている者は靴を履いているが、動物は靴を履かない。太陽に照らされた地面はとても暑くなっているのだ。こんな日にユキが外に出ればどうなるかなんて、少し考えれば分かったことでもある。
「火傷ですか。メモリア先生を呼びますか?」
「いいや、大丈夫。冷やしたから、白美に治してもらう」
「そうですか。では、一応包帯は用意しておきますね」
そう言うと風呂場から離れた。どうやら地面の暑さの所為で足を火傷してしまったようだ。ユキは人型になることができない普通の動物なのだ。だから靴を履くことはない。熱を吸収した地面を裸足で歩いているようなもの。火傷をするのは当たり前と言っても良い。たとえ、昔エリスが使った魔法によって人間と同じ寿命になったとしても、寿命以外は普通の動物と変わらないのだ。熱している地面を歩いて火傷しないはずがない。
充分に足を冷やして、風呂場から出ると右前足を白美に治してもらった。念のためにと包帯を巻いたその足は、現在火傷の跡もなく治っている。もちろん包帯もしていない。他の足は火傷することが無かったのだが、それはユキが気をつけて歩いていたことと、白美が火傷をしたユキにすぐに気がついたからだった。そのあとすぐにユキを抱きかかえて家に戻ってきたため、別の足に火傷をすることもなかったのだ。
だが、話しを聞いたエリスに暫く外出しないように言われてしまったのだ。白龍を探しに行くことが出来ないことを不満そうにしていたが、火傷をしたくもなかったのだろう。大人しく龍を見張っていることを引き受けたのだ。1日の多くを眠って過ごしているため、見張りと言えるのかは分からないが。
それでも膝枕をしてもらい眠るのは良い考えだろう。もし龍が立ち上がろうとするのならば、ユキを起こさなくてはいけないのだから。眠っているユキを起こしたくない龍は、余程の理由が無い限りは膝枕をしたままなのだ。それをユキも知っているため、寝ているときに白龍を探しに行かせないために膝枕をしてもらっているのかもしれない。
静かに本を閉じ、ユキを起こさないようにテーブルの上に置くとゆっくりと息を吐き体から力を抜いてソファに寄りかかった。目を閉じて考えるのは白龍のこと。そうすることで、白龍を感じることが出来る。生死だけでも分かるのは、正直ありがたいことだ。それすらも分からず、ずっと心配しているよりはいくらか気持ちが軽いのだ。
何処にいるのか、元気なのかも分からないが生きていることが分かれば今は良い。居場所を探し出して助け出すことが出来る、もし生きていなければそれすら冷静に出来なくなってしまう。生きている白龍ではなく、亡骸を探すことになるのだから。
一度大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐いてから目を開く。すると誰かが帰ってきたのか、扉が開き閉まる音がした。1人の足音が近づいてくる。エリスか黒麒のどちらかだろう。今日は白美と悠鳥は2人で出かけたのだから、どちらかしか考えられなかった。その2人以外には考えつかなかったのだ。
しかし、リビングへと入ってきたのはエリスでも黒麒でもなかった。気配を探ればすぐに分かったことではあったが、鍵を持っている人しか入れないため今日外出した4人以外は来ないと思っていたのだ。だが、鍵を持っている人は他にもいる。アレースともう1人、最近帰ってきていなかった人物。今日も帰ってこないだろうと思っていたため、気配も探らなかった。だから、その姿を見て少し驚いた龍は僅かに目を見開いた。
「リシャーナ……」
「ただいま。久しぶり。みんなは白龍ちゃんを探しに行ってるの?」
そう言いながらリシャーナは龍の向かいのソファに座る。音に気がついたのか、ユキがうっすらと目を開きすぐに閉じる。帰ってきたのがリシャーナだと確認したようだ。リシャーナであれば問題はないと思ったのだろう。まだ眠そうな様子ではあったが、耳を動かして話しを聞いているようだった。もしかするとこのまま2人の会話を子守唄にして、眠ってしまうかもしれなかったがそれでも構わなかった。
「貴方が倒れたと街で偶然会った悠鳥に聞いたときは、帰ろうか悩んだのよ。でも龍は家にいて、エリスたちが看病してくれてる。それなら私は、貴方が白龍ちゃんを探すことができない間、貴方の分まで頑張れば良いと考えたの。そのお陰と言って良いのかは分からないけれど、漸く情報を入手することが出来た。これでも急いで帰ってきたんだからね」
その言葉に龍は、白龍がいったいどこにいるのかを今すぐにでも聞きたかった。だがリシャーナは首を縦には振らない。エリスたちが帰ってくるまで待てということだ。龍が白龍の居場所まで分かればリシャーナに大変な思いをさせてまで情報を入手をさせなくても良いのだが、それが出来ないのだ。自分の無力さから俯く龍に、リシャーナはなるべく優しい声で言った。
「大丈夫。私の友達にエリスたちにすぐに帰るように伝えてもらうよう頼んだから、間もなく帰ってくると思うわよ。だから、すぐに私の持ってきた情報を知ることが出来るわ」
エリスたちがいないという予想はしていたのだろう。だから、友達に帰るように伝えてもらうことを頼んだのだろう。
リシャーナがそう言ったと同時に、乱暴に玄関の扉が開かれた音が響いた。複数の足音がする中に、しっかりと扉を閉める音も聞こえた。足音に混ざって聞こえるということは、少々乱暴に閉めたということだろう。誰が扉を閉めたのかは分からない。だが閉めた人物の、リシャーナが帰ってきたことにより白龍のことを知れるという期待が扉の音からも分かる。
そして、リビングの扉も乱暴に開かれた。龍が後ろを振り返ると、そこには外出したエリスたちが勢揃いしていた。乱暴に開かれた扉は蝶番が外れたのか、もしくは壊れてしまったようで扉が本来あるべき場所には見えなかった。どれだけ強い力で開いたのだろうか。
「直さなくてはいけませんね」
黒麒の呟きと、何かを置く音が聞こえた。どうやら外れた扉を廊下の壁に立てかけたようだ。白美か悠鳥のどちらかが扉を外してしまう程勢い良く開いたのは、それだけ白龍を心配しており早く何処にいるのかを聞きたかったからだろう。
たとえエリスが勢い良く扉を開いたとしても、人間の女性の力では蝶番が外れる程の力で開くことは難しいだろう。それにエリスは利き手である右手に白い何かを持っている。そしてエリスの右側、扉が開くであろう方向には悠鳥が立っている。その立ち位置から扉を開いたのは悠鳥なのだろうことが分かる。
「リシャーナ帰ってきた!? 白龍ちゃんは!?」
エリスと悠鳥の間から出てきた白美が勢いよくソファにぶつかり、背もたれに乗り上げながら問いかけた。だがリビングを見渡すと、あからさまにがっかりする。白龍がいないと分かったのだろう。もしも白龍はこの場にいたのならば、龍は喜びユキも目を覚ましているだろう。
ソファに力なく項垂れる白美を気にすることなく、エリスは龍の横を通りソファに座っているリシャーナの元へ行くと、右手に持っているものを突き出した。最初それを見たとき、エリスの右手にあるものはロープかと龍は思った。しかし、今良く見てみるとそれは動いている。たとえ世界であっても、龍は一度も動くロープなど見たことがなかった。建設現場に一度も動くロープなど置かれていなかった。だから、それはロープではないのだろう。
「私たちは貴方と違って、ただのヘビの言葉を理解することは出来ないの!」
「妾を見るなり逃げて行ったのじゃが、あれでは何かを伝えたくとも伝えられぬではないかの」
「あたしもあたしも、美味しそうって思いながら目を合わせたら逃げちゃったよ」
「鳥はヘビを食する種類もいるので、逃げたのは仕方ないと思いますよ。でも、この街に普段はヘビがいることはないので、リシャーナさんが何かを伝えたいということは分かりましたよ」
だからリシャーナが家へ帰って来たのだろうと思い、全員が揃って帰宅したのだろう。しかし、街では少々騒ぎが起こったようだ。ヴェルリオ王国から出たことのない人間が、この国には多くいる。ヴェルリオ王国だけではなく、ヴェルオウルから出たことのない人間だっているくらいだ。国から出ることが無くても、生活に不便が無い。だから、生まれてからずっと他国や他の街を知らない人間が多いのだ。半分以上の人間が当てはまるだろう。そのため野生動物を見たことのない人間が多いのだ。街の中では出る野生動物というのはネズミくらいだ。
たとえ見たことがあっても、ヘビがダメな人間は多い。そんな人たちが騒いでしまい、大騒ぎが起こったのだ。それは、伝言ゲームだった。その場所は、あることないこと言う人が現れてしまい騒ぎが広がったのだ。
はじまりはヘビだったはずが、いつの間にか猛獣が出たことになっており、最終的に大きな魔物が出たと騒ぎになってしまった。大きな魔物がいれば誰からも見えるだろうに、その姿を見た者は誰1人としていない。大きな魔物なんかそこにはいないのだから当たり前だ。
考えれば分かることなのだが、それが分からない程パニックになっていたのだ。エリスが騒ぎの原因となった1匹のヘビを捕まえたことにより、出たのはヘビで魔物はいないと叫んだことにより騒ぎは治まった。自警団が来ることもなかったので、余計な混乱が起こることもなく騒ぎは無事終息した。もしも自警団が来ていたら、エリスが怒られていただろう。たとえエリスに責任がなかったとしても、自警団は取り敢えず騒ぎの中心にいる人物を怒ることが良くあるのだ。だから、エリスが怒られていたことだろう。
「少しは考えてよね」
「ごめんごめん。でも、私の友達を見捨てずに連れて来てくれてありがとう」
エリスから白いヘビを受け取ると、人差し指で頭を撫でる。撫でられたことにより、ヘビは目を細めた。どうやらリシャーナの言っていた友達とはヘビのことだったようだ。黒麒たちの元へ行ったヘビはエリスが連れてきたヘビと同じだったのだろうか。もしも違うなら、他のヘビたちは安全な場所に逃れていれば良いと龍は思った。
リシャーナの膝でとぐろを巻いて眠るヘビ。そして、ソファへとエリスたちが座ると、真剣な眼差しをしてリシャーナは話しはじめた。自分が入手した情報を、頭の中で整理しながら。
「正直、白龍ちゃんの居場所は分からなかったわ」
「……」
何かを言おうと口を開いた白美だったが、リシャーナはそれ以外に情報を入手したのだろうと思い何も言わずに口を閉じた。たったそれだけの情報でリシャーナが帰ってくるはずはない。それが分かっているから何も言わなかったのだ。それは、エリスたちも同じだ。
「あの日……白龍ちゃんがいなくなった日、広場でアイスを購入しようとしていた貴方たちを見た人と会えたわ。……パティシエ衣装の男女に覚えはないかしら?」
その言葉に、エリス、白美、龍の3人はあの日のことを思い出していた。しかしエリスと白美には男女の記憶がなかった。それもそのはずだ。2人は広場を見渡してはいなかったのだから。だが、龍は覚えていた。あのとき、広場を見渡したのだ。白龍を1人にしても危険はないかと思い、周りを見渡したのだから。そのとき見た歩いていた数人の中に、その男女はいた。
それを思い出した龍は、声に出さずに頷いた。龍の顔を見て、覚えていると理解したリシャーナは少し安心したように息を吐いた。もしも誰も覚えていなかったらどうしようかと考えていたのだ。覚えていなかったら、いたのだと言うしかない。
「その人たちは白龍ちゃんがいなくなったことは知らなかったけれど、その2人が3人の男のことを話してくれたわ」
「3人? 武器を携えた2人組の男はいたけれど、3人組はいなかったぞ」
「馭者がいたでしょ?」
3人は目を見開いた。リシャーナの言葉に、2人組の男と馭者が仲間であると気づいたからだ。まさか、仲間だと考えてもいなかったのだ。馭者は2人とは離れた場所にいたのだ。普通に荷物を配達していると思うだろう。
しかし何故、パティシエの2人は離れた場所にいた馭者が2人の仲間だと気がついたのだろうか。仲間だと分かる目印でもあったのだろうか。その理由もリシャーナは聞いているだろう。エリスたちは何も言わずに、視線だけで話しの先を促す。
「まず男2人組。一般人でさえ知っている程、評判の悪い男たちだったわ。といっても、名前だけだけどね。魔物討伐専門組織の一つ、『ロデオ』の汚点と言われている男たち。その2人ともう1人、それが馭者の男。彼ら3人が汚点と言われているの。彼ら、右腕か左腕に腕章をつけていなかった? その腕章についているマークで何処の組織なのかが分かるのよ」
たしかに、彼ら3人は腕章をしていた。2人組の男も、馭者の男も右腕に腕章をつけていたのを覚えている。しかし、それにそんな意味があるとは知らない龍は、じっくりとは見ていない。だから、腕章にどんなマークがあったのかは知らないのだ。
「それと、もう1人。彼がいないと計画は成功しない」
「……まさ、か……」
思い当たる人物が1人いたのだ。彼からは白龍が見えていたはずなのだ。だが、何も言わなかった。今思えば、それがおかしいことに3人は気がついた。
彼からすれば白龍が真っ正面にいたのだから。もしもいなくなったりすればすぐに気がつく。誰かに攫われるようなことがあれば驚いて声を発するはずだ。エリスたちの姿で隠れていたとしても、連れていかれたり、移動したりすれば見えるのだ。だから、彼が気がつかなかったはずはないのだ。
「アイスを売っていたあの男も……仲間だった?」
「ええ、そうよ」
パティシエの2人は、男2人組と馭者がしている右腕の腕章に気がついた。そして、その顔を見てすぐに気がついたのだと言う。『ロデオ』という組織は、魔物討伐はするが使い魔や害がない魔物を討伐しないという組織なのだ。その中で、顔を覚えられている程の人物。組織のリーダーや幹部メンバーは顔を覚えている人は多いが、それ以外でも覚えられている者たちがいるのだ。
魔物討伐組織『ロデオ』の数人は、お金さえ貰えれば使い魔を討伐することもあるし、他にも人攫いをすることもある。そのような依頼は組織には来ないため、外出してるときに頼まれるのだ。だから、そのような者たちは顔を覚えられてしまうのだ。腕章をしている者たちが、組織の外で依頼を受けていれば誰もが目を向けるだろう。
報酬金額によっては依頼を受けないこともあるのだが、頼まれれば金額に関係なく受けている者が多い。金額ではなく、そのような依頼を受ける者は刺激がほしい者が多いのだ。今回あの場に、同じ組織の人間が4人も揃っていた。それは偶然でなく計算されたものだったのだろう。
「ねえ、その4人って」
「エリスが思い浮かべている名前だと思うわよ。スインテ、グスティマ、ルスディミス、ヴィシーデの4人」
名前は知っていても、顔は知らなかったのだろう。黙って俯くエリスたち。しかし、龍はその4人を知らない。それもそのはずだ。魔物討伐組織というものがあることは知っていたが、『ロデオ』という組織のことどころか、他にもあることは知らなかったのだから。
エリスたちが俯いて何も話さないのならと、龍はリシャーナに問いかけた。
「白龍の居場所は分からないと言っていたけれど、その『ロデオ』って組織にいる可能性は?」
「それはないわ」
龍の言葉に、首を横に振りながら答えたのはエリスだった。情報を入手したのはリシャーナだが、『ロデオ』という組織については何か知っているのだろう。
「あそこのリーダーは、危険がない魔物に手を出すと怒るの。そんなリーダーがいる場所には絶対にいない。だって、怒られてしまう。怒られるだけで済まないかもしれない。それに、見つかったら折角誘拐したのに帰さなくてはいけなくなる。けれど、白龍の居場所を知るにはその4人に聞くしかないわ。その4人が攫った可能性が高いのだから」
その4人が絶対に白龍を攫ったとは言えないのだが、怪しいのはその4人なのだ。白龍のことを知っている可能性が高いのならば、会うしかない。会って話しを聞くしかないのだ。他に白龍の情報を入手するためには、今はそれしかない。もしかすると白龍のことは知らないと言うかもしれない。それでも会いに行く以外の選択肢はない。
それには、まずリーダーに話しを通す必要があるだろう。直接4人に話したとしても、はぐらかされてしまうかもしれないが、リーダーに話せばはぐらかされないかもしれない。だが、リーダーは仲間を信頼している可能性もある。もしかすると、誘拐したかもしれないと話すことによってリーダーが仲間を疑われたことにより怒らないとも限らない。それでも、リーダーに話すのが一番だろう。
エリスが立ち上がると、黒麒たちも立ち上がる。最後に立ち上がったのは龍だった。それは、『ロデオ』という組織の場所が分からないからだ。ユキはいつの間にかソファから下りてエリスを見上げていた。どうやらユキは留守番をしているようで、エリスに頭を撫でられてその場に留まった。
先にリビングから出ていくエリスたちに続いて龍がリビングを出て扉を閉めようとしたが、それは出来なかった。何故なら龍の後ろにリシャーナがついて来たからだ。ソファから立ち上がらないので、ユキと一緒に留守番をしていると思っていた龍は少し驚いた。
だが、彼女がついて来るということは白龍を探すことを続けるということなのだろう。もしくは、彼女は4人に関係する何かを握っているのかもしれない。場合によっては、それで4人を脅すこともあるかもしれない。後ろに続くリシャーナに、そう思いながら龍は外へと出たエリスたちに続いて久しぶりに外へと一歩を踏み出した。
太陽からの熱よりも、地面に反射した熱の方が熱い。これでは、ユキが火傷するのも分からなくはない。靴を履いているといっても、その熱が僅かに伝わってくるのだから。たとえユキが行きたいと言っても、これでは留守番させるしかないだろう。
黙って魔物討伐組織『ロデオ』がある方向へ歩くエリスの後ろを、はぐれないようについて行く。扉に鍵をかけていた黒麒が少し遅れてついてくるが、悠鳥が待っていたようで2人は並んで何かを話しながら歩く。たとえエリスたちの姿が見えなくなっても、場所は知っているのだろう。
龍はエリスを見失わないように注意しながら白美の横に並んだ。そして、何故か白美が龍の手を握ってきたが、見た目が子供のため龍は気にすることもなく握り返した。もしも大人の姿であれば、羞恥心から振りほどいていたかもしれない。
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