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第五章

第13話 国王騎士として

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 私は現在城にいた。パーティーをしたあの場所。シロンとスワンの結婚式だ。
 呼ばれた多くの者が集まる会場に、私はあのときのように1人壁に背中を預けて幸せそうに笑うシロンとスワンを遠目から見ていた。
 トルメラ姉様とティーア姉様も呼ばれていて、久しぶりに姿を見た。2人とも旦那さんと一緒にやって来て、私に挨拶をしてからシロンとスワンの元へと向かった。
 先ほどルードが来ているのも見たが、すぐに姿を消してしまった。元国王として、長くこの場所にはいたくなかったのかもしれない。本当の理由が理由なだけに。一緒にいた小柄な女性と共に退室したようだったけれど、どこか幸せそうな顔をしていたように見えた。
 ルードが私と結婚しようとした理由。それは、私を好きというわけではなく、ギルのことが好きだという私の絶望する顔を見たかったというだけだった。他人が嫌がることをするのが昔から好きだったようだ。エレニー王国でそう告げたと言ったけれど、自分だけがギルを受け入れると本気で思っていた可能性もある。
 だから、私が本当はギルを好きではなかったと思わせるために結婚しようと考えたのかもしれない。そう思うだけで、結局は真実はわからない。
「お嬢さん、お1人で寂しそうですね」
「そうでもないわよ。貴方が来てくれたからね、ギル」
 そう言って私が微笑んだのは、声をかけてきた相手――ギルだった。あの日と同じ真っ黒な国王騎士の制服を着て私の元に来たギルに思わず抱きついた。ギルも何も言わずに抱きしめ返してくれた。
 周りの目は気にしない。私のことを『悪役令嬢』だという者達がいるけれど、別にいい。それに、他の国王騎士達も私とギルを見て祝福してくれているのだ。どうやら会っていなかった時間でギルが私と付き合っていると告げていたようだった。
「それで、もういいの?」
「今日はもう休みでいいと言われてね。だから、ロベリアと一緒にいられる」
 離れた私の問いかけにギルは笑顔で答えてくれた。今までシロンとスワンの側にいたギルは、他の国王騎士と交代して休みを貰ったようだ。
 シロンへと目を向けると、偶然こちらを見ていたシロンと目が合う。彼は何も言わずに微笑んだだけだった。たとえ、何かを言われても距離からしてわからない。
「ねえ、ギル」
「ん? どうした?」
「あのね、私ギルの家で同棲してもいいかな?」
 見上げて問いかけると、ギルは驚いた顔をしていた。それもそうだろう。同棲したいと言われるとは思ってもいなかったのだから。
「俺は構わない。でも、家族から許可は?」
「もらったよ」
 実は、先日昼食で家族が集まったときに話した。家族として受け入れてくれたばかりではあったけれど、ギルと付き合えるようになったのに離れてるのが嫌だと思った。
 だから、ギルと同棲したいと言ったら父様があっさりと許可を出してくれた。それは、私に多くのことを我慢させていたからだった。
 母様とキースは父様がいいというならと認めてくれた。ギルの家が別の街にあるわけでもない。そのことを父様は知っていたのだ。
 私とギルが付き合うから調べたというわけではなく、以前から知っていたようだった。私と同じように、ギルも有名だったからだろう。
「それなら、いいよ。部屋もあるし、歓迎するよ」
「ありがとう。明日、行ってもいい?」
「迎えに行く」
「ありがとう」
 そう話す私達を遠巻きに国王騎士達はにやにやしながら見ていた。とくに、獣人族は耳がいいため私達の会話が聞こえていたようだ。
「すみません」
 そこで、声をかけられた。話に夢中で誰かが近づいてきていることに気がつかなかった。声が聞こえた方向を見ると、そこにいたのはギルと同じ鳥人族だった。
 ――あれ? この人達もしかして……。
 シロンの話を聞いていたからだろう。3人の鳥人族が何者なのかがわかってしまった。
「ああ、やっぱりそうだ」
 笑顔で言うと、声をかけた男性がギルに右手を差し出した。困惑しながらも、ギルはその手を取る。
「はじめまして、俺はナイン・エレニー」
「はじ、めまして」
 自己紹介をされて、ギルも相手が誰かわかったようだ。エレニー王国の現国王であり、ギルの兄。彼の後ろにいる2人が誰なのかは紹介されなくてもわかる。
「会いたかった!!」
 そう言ってナインを押しのけるようにしてギルに抱きついたのは鳥人族の女性。彼女がギルの本当の母親、ミント・エレニーだろう。困惑しながらも、ギルはわかっているのだろう。何も言わずに抱きしめ返していた。
 本当の両親との再会を私は何も言わずに少し離れて見ていた。邪魔をしてはいけないと思って、気づかれないように離れたのだ。
 けれど、ギルの父親であるウェルツ・エレニーが私に近づいて声をかけたのだ。
「はじめまして。私はウェルツ・エレニー。君がロベリアさんだね」
「はじめまして。ロベリア・アルテイナです」
 シロンにでも私のことを聞いていたのかもしれない。頭を下げ、未だに抱きしめている様子を見て微笑むウェルツもギルと話しをしたいだろう。それなのに、私に話しかけてきたということは何かあるのだろうか。
「シロンから聞いたよ。あの子をよろしくね」
 そう言って、私の頭を軽く撫でてウェルツはギルに近づいて行った。きっと、シロンから全てを聞いているのだろう。
 ギルに話しかけるウェルツを見ながら、私は会場を見回した。他国から来ている者も多く、これだけシロンは多くの者と交流してきたのだなということがわかる。
 生まれてはじめて本当の両親と会い、ぎこちないギルだったけれど、暫くすると普通に会話をしていた。エレニー王国に来ないかと言われていたけれど、ギルは国王騎士としてアフェリア王国に残ることを告げていた。
 それからは、私も一緒に話をすることになった。相手が他国の王族ということもあり会話に混ざるのは少し緊張したけれど、ギルの家族と思えば王族であっても気にすることなく話すことができた。
 今までずっと探していたというウェルツに、本当に会いたかったのだなと思った。









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