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第三章
第09話 聞いてみます
しおりを挟むロベリアさんの話を聞いていて、実はべつのことも気になっていた。それは、ロベリアさんの父親のこと。ロベリアさんが『悪役令嬢』と呼ばれる前から、仲がよくなかったようだがその理由はなんなのだろうか。
親子喧嘩が長引いているのか。それとも、他に原因でもあるのだろうか。疑問に思ってしまったため、言いたくはない内容かもしれないと考えながらも問いかけることにした。
「ロベリアさんは、父親と喧嘩でもしてたりする?」
「喧嘩ですか? 喧嘩した記憶は一度もないですね」
「え……それなら、喧嘩が長引いて仲が悪いというわけではないと……」
「ええ。それに、父様は私が物心ついたときから私を嫌ってましたから」
それは、どういうことだろうか。自分の子供なのに、どうして嫌っているのか。
ロベリアさんの話し方からすると、どうして嫌われているのかはわかっていないようだ。
「どうして嫌っているのか、聞いたことは?」
「ありませんよ。必要な会話以外はしたくないですし」
「いや、本人にではなく……」
「……母様に? 考えたこともなかったです」
ロベリアさんよりも長く一緒にいる母親なら、何かを知っている可能性は高いと思って言ったのだが、どうやらロベリアさんもそのことに気づいたようで何かを考えはじめた。
嫌っている理由を本人に聞くのが一番なのだが、必要な会話以外はしたくないのなら、よく知る人物に尋ねるのがいいだろう。
「そうですね。聞いてみます。それに、一度帰らなくては……母様が心配してると思うし」
最後は声が小さくて聞こえにくかったが、どうやら一度は反ろうと考えていたようだ。
今は飴も降っていて雷も鳴っていて危険だ。明日帰ると言うのなら、城へ行く前に送って行けばいい。
自宅の前まで送ると、父親に見られてしまう可能性があるため近くまで送ればいいだろう。帰ってこなかった娘が男に自宅まで送られてくる姿を見て、さらに機嫌を悪くさせる必要もない。
そう考えていると、ロベリアさんは小さく欠伸をした。疲労がたまっているのだろう。
「ごめんなさい」
「構いませんよ。少し早いですが、疲れているようですし、休んだほうがいいですね」
欠伸をしてしまったことに謝るロベリアさんにそう言うと、ソファーから立ち上り、部屋へと案内をすることにした。
歩きはじめた俺の後ろをついてくるロベリアさんのペースに合わせながら、階段を上った。
案内をするときに、俺の部屋も一応教える。何かあったときに駆け込めるように。
「ここを使ってください」
扉を開いて言った部屋は、両親が使っていた部屋。掃除をしたばかりだし、布団は昨日天日干しをしたためふかふかだ。
「いいんですか?」
「ええ」
ロベリアさんはすぐに、ここが両親の使っていた部屋だとわかったようだ。気にしなくていいと意味を込めて頷いた。
「では、使わせていただきますね」
そう言ってロベリアさんはすぐにベッドへと向かった。よほど疲れているようで、もう一度欠伸をした。
「何度も欠伸をしてしまって、ごめんなさい。それじゃあ、私は先にお休みさせていただきます」
「ええ、お休みなさい」
「お休みなさい」
挨拶をして扉を閉めた。このまま寝るのもいいが、もう少しやることが残っている。ロベリアさんの服はきっともう干せるだろう。
代わりに自分の濡れた服を洗い、テレビを見て時間をつぶそう。寝るのは自分の服を干してから。
そう考えながら、なるべく音をたてないように静かに階段を下りた。
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