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5話
5-7
しおりを挟むディオース王国では『ルージュ・ルナーレ』として話しかける人もいたが、『聖女』だから話しかける人のほうが多かったのだ。
多くの人は名前ではなく『聖女様』と呼び、ルージュを慕っていた。そのことに僅かながらに嫌気がさしていたのだ。
(きっと、聖魔法が使えなくなったことはすぐに広まってしまうわね)
ノワールはずっとこのログハウスにいるわけではない。今日中にでもソレイユ王国に帰るかもしれない。そうなれば、ノワールはルージュが聖魔法を使えなくなったことを話すだろう。
ソレイユ王国に出入りしているディオース王国の人もいる。ソレイユ王国内のことは話せなくても、そこで話に聞いたルージュのことは話すだろう。
(そうなれば、本当に私が結界を張っていないと決めつけるかもしれないわね。そして私を探して、処刑しようとするかもしれない)
処刑されないためにやったことだったが、もしかするとノワールに話したことで自分で自分の首を絞めてしまったのかもしれない。
そうなってしまった場合は、それがルージュの運命だったと諦めるしかないだろう。
「安心しろ。誰にも言わない」
ルージュの不安に気がついたのか、そう言ったノワールだったが、本当に言わないのかは分かるはずもない。
ソレイユ王国に戻ったら言いふらす可能性を捨てきることはできない。不安を拭い去ることができていないことに、ノワールはきっと気がついているだろう。会ったばかりの男性を信じることは簡単にはできないのだから。
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