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銀髪♂ルート(銀×黒)

10Ⅱ.お前じゃなきゃ

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 数日後、とある街に一行は辿り着いた。もうすぐこの国で大規模な祝祭が始まる。いくつか片付けておかなければならない用事もあり、祝祭の間はこの街で滞在することになっていた。

 荷物を抱えた黒髪の青年は、石畳の通りを抜け、路地の階段に腰を下ろした。

「リストに書いてあった物は大体買ってきたぞ。麻痺消しが売り切れてたから次の街で手に入れないと」

 すでに上の段に腰かけていた銀髪のエルフもまた、荷物を抱えていた。

「……こっちもほぼ揃えた」
「じゃあ、買い物はとりあえず完了だな。……あと、これ」

 黒髪の男は荷物を探ると、エルフの青年に小瓶を差し出した。
 エルフの青年はそれを受け取り、確認する。手の平サイズの青い小瓶は、記号の書かれたラベルで封がされていた。中で液体が揺れている。

「安く手に入ったから、やるよ。組合員から直接買ったから、質は悪くないはずだ」
「……魔力回復薬? リストにはなかったが」
「この間みたいなことがあると、困るだろ」

 黒髪の青年は、エルフの方を見ずに言う。いつの間にか耳が真っ赤になっていた。

 身体を重ねたあの夜の翌日、エルフの青年は魔力を半分使い切ってしまっていて、普段よりも魔法を節制せざるを得なかったのだ。

「眠れば問題ないが?」
「それまで、周りは気にするし」

 彼が言わんとすることを理解して、エルフの青年は頷いた。周りに悟られたくないらしい。

「そうだったな。とはいえ、もう必要はなさそうだが」
「必要ないならそれで……いいけど……」
「ん?」

 青年の声が、どんどん小さくなっていく。

「なくても平気だろう?」
「…………平気じゃない」

 黒髪の青年は、腕に顔を埋めて小さく呟いた。

「……お前じゃなきゃ、俺、もう駄目だし……」

 銀髪の青年はしばし考えてから、小瓶を懐にしまい、荷物を抱えて立ち上がった。階段を降り、黒髪の青年の頭に片手で触れる。

「なるほど。……これは大事に使うことにする」
「っ、え?」

 エルフは階段を下まで降りて屈み、顔を上げた黒髪の青年にキスをした。不意に唇が触れて、黒髪の男は一瞬蕩けた顔をした。エルフの青年は、そのまま何事もなかったかのように立ち上がる。

「帰るぞ」
「……っ、お前、こんな、とこでっ」

 黒髪の青年は、まだ紅い顔で口元を押さえる。
 
「お前が、こんなところで誘ったのが悪い」
「誘っ……てねぇしっ」

 2人で荷物を抱え、連れ立って歩いていく。
 人々が祭の準備する賑わいが、すぐそこに聞こえていた。



 おわり



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・おまけの会話(上の直後)

銀「……もう必要ないと思ったが……今度は大きめのを用意するか」
黒「え……」
銀「麻痺消しの話だぞ? なぜ顔が赤い」
黒「……っ……!」

後日、ちゃんと大きめのを用意してもらいました。

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※ この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・名称等とは一切関係ありません。
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