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中.客室に二人 ★

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「うー、ようやく、着いた……」

 古ぼけたドアをどうにかして開き、中へ入ると後ろ手でドアを閉める。耳障りな軋んだ音が響く。部屋は灯りもなく薄暗かった。

「ほら、もうすぐだから……ってお前、マジで大丈夫か?」

 体勢を立て直そうと抱え直すと、その体温が普段のそれではなく、驚く。最初こそ4割ほどの重さだったが、今は9割の体重が黒髪の男の肩へとのし掛かっていた。

「……っ、とにかく、あそこまで……っ」

 半ば引きずるようにしてベッドの脇まで運ぶ。

「せーの……っ」

 反動をつけてベッドの上に乗せようとし、

「わっ……ぐぶっ」

 勢い余って自分までベッドに飛び込む形になった。しかも自分が下敷きになる形で。

「ぐ……だめだ……動けね……」

 不本意ながら、そのまま息を整える。

「おい、平気か?」

 仕方がないのですぐ側にある額に手を当てて呼び掛ける。とても熱い。呼吸も荒い。触れる瞬間、ピクリと反応した気がするがそれきりだ。

(アイツもさすがに猛毒をなすりつけて放置ってことはないだろ……?)

 そうは思いつつも、あまりの応答のなさに不安になる。
 酒がまわったのか、少し平衡感覚が狂った気がする。普通に考えて飲酒量は自分のほうが多い。ならばやはり彼は何かを飲まされたんだろう。階下の一件までは全く普段通りだったのだから。こういう時の常套は劇薬か痺れ薬だが、今回はどちらとも少し違うようだ。

「くそ……重い……あつい……」

 力任せに押し退けて横に転がそうかとも考えた。が、それではきっと、上にいる彼がベッド下に転げ落ちる。普段ならいざ知らず、さすがに体調不良のエルフを突き落とすのは躊躇ためらった。

「ん……」
「お?」

 上の男がおもむろに腕を伸ばして身体を起こす。無言のまま片手で着ていた長衣を脱ぎ捨て、投げ捨てる。そして、そのまま再び倒れ込んだ。

「うぐっ」

 たぶん、暑かったのだろう。再び降ってきた重みに顔をしかめつつ、とにかく生きてはいるようだと少し安堵する。……しまった、さっきの一瞬に脱出すればよかった。腕と足とを張り出してみるものの、脱力した男は意外と重い。こんな時に限って体力自慢が留守だなんて。

 そんな事を考えていたせいか、不意に頬に伸ばされた手に反応が遅れた。そのままグイと引き寄せられてキスをされる。

「……っ!?」

 頬に添えた手にギュッと力がこもり、よりいっそう身動きが取れなくなる。さっきまで完全に他人事だと考えていた事が、よもや自分の身にも降りかかろうとは。

「んんぅ!」

 そのまま抗議するものの、やはり動けない。舌が絡みとられ、上着の裾から手が差し込まれる。

「……っう! ふっ……」

 酔っているのか寝惚けているのか、行為はさらにエスカレートしていく。どうにかして力任せに唇を引き剥がす。

「やめろっ……て」

 抗議はしたが、男の指先が胸の敏感な場所を捻りあげる。

「っン……っ!」
「お前は……平気なのか」

 耳元で囁かれ、首筋をザラリと舐められ、刺激に震える。頭が全然まわらない。

「なに……ゆって……っ……」

 手が、そっと突起を撫でる。

「ぁ……んん……っ」

 思わず甘い声が漏れ、自らの手で口を塞ぐ。男の指先が、そのままグリグリ胸を弄る。

「っ……! っう……」

 抗議の意味で首を横に振るが、手は止まらない。

「……いいんだろ?」

 男の手が、ゆっくりと敏感な部分を撫で、ゾクゾクする感覚が身体を走る。

「は……っ……や……やめ……っ!」

 そっと手首を掴まれて寝具に縫い止められる。ざらざらした感覚が肌をなぜていく。

「ふぁふ……っ……あぁ……っ」

 再びキスをされ、男の手がベルトにかかる。

「……っん……んん……ッ!」

 抵抗の甲斐もなく、男の手がスルリと下着に滑り込む。

「っ……ぅ……!」
「我慢するな、ほら」
「は……ッ、ぅ……さわ……ンな……ッ」

 そっと触れられ、擦られるたび、刺激に身体が反応してしまう。避けようと身を捩るが、まるで意味を成さない。
 耳元で名を呼ばれ、グチュグチュと音を立てられながら刺激の波が繰り返される。不意に手首は解放されたが、あまりの刺激の波に首元にしがみつく。懇願するように吐息から抗議を絞り出す。

「……ん、う、それいじょ……だ……め」
「限界だろ?」

 つう、とわざと細い指で撫でられ、吐息とともに身が震える。涙が滲む。

「んぅ……ッ」
「ほら」
「……ッ……あ……!」
「イケよ」
「……ッん……!!」

 優しく撫でられて、それだけで、言われた通りに達してしまう。

「……っは……ぁ……っ」

 頭が真っ白になる。一瞬何もかも吹き飛んでしまったが、わずかに熱が引くと同時に冷静さが戻ってくる。

(ちょっと待て、なんで俺が襲われてるんだ……?)

 まだ頭がクラクラする。余韻も覚めないうちに、ズボンと下着を掴まれ、

「……っ?!」

 それと認識しないうちに、一気に引き抜かれた。
 嫌な予感がして身を引くのと、顔の脇に両手をつかれるのがほぼ同時。

「まて、俺はっ」
「……性別なら知ってる」
「だ……よな?」
「でも」

 男が肘をつき、息がかかる近さになる。

「お前、」

 気持ち良かったんだろ、耳元で囁かれ、おさまったはずの熱が上がってくる。

「っ、それは、お前が……触る……から……っ」
「否定はしないな」
「……っ……」

 喉の奥でわずかに笑うと、そのまま身体を沈ませキスをされる。舌を絡ませる深いキス。
 同時に、男の手が足を持ち上げ、尻をそっとなぞる。

「っふ……!? ぅん……っ」

 そのまま指先が割れ目に触れ、穴に入り込んでくる。

「……ッ! んんッ」

 肉壁を押しのけて奥へと入り込んでくる感覚。刺激に、思わず力が入る。初めて刺激される奥の感覚に、また身体が熱を持つ。そのまま卑猥な音を立てながら、何度も奥を刺激され、身体がビクリと弓なりに反る。唾液がつうと顎に伝う。

「ンッ、ぅン、ンン !! 」

 指先の動きはさらに激しくなり、中を掻き回す。頭がジンと痺れたみたいに何も考えられない。ただ甘くて強い刺激が何度も繰り返される。
 やがて身体が刺激を求めて、自然と腰が指先の動きに沿って動いてしまう。
 不意に唇が離れ、暗闇の中で、灰色の瞳と目が合う。

「ここが、いいんだろ」
「あ……ッ、ちが……ッ……ッ」
「そんなに、いいか」
「んん、あぁ……ッ!!」

 どんどん激しく掻き回され、ビクビクと身体が跳ねる。ジュボ、と勢いよく指先が引き抜かれ、代わりに熱いものがあてがわれる。それは先程より強く肉壁を掻き分け、奥へと侵入してくる。

「っあ……ッ……は……っ」
「力、抜け」

 身体ごと揺らされ、刺激に気を失いそうになる。上がってくる刺激が強すぎて、もうずっとフワフワしてる。

「む、り……ッ……」
「そんなにされたら、俺も……」

 ギュッと強く抱き締められて、奥まで固いものがズブズブと入り込んでくる。鼓動を感じる。

「ぅん……ッ……あぁ……」
「……ん……ッ……」

 どちらからとなくキスを交わす。ただ熱くて、気持ちよくて。互いの息すら、もう刺激にしかならない。
 何度も激しく奥を掻き回されて、全てぐちゃぐちゃになる。ぜんぶ溶け合って1つになったような感覚。

 ドプリと熱いものを感じ、肌に熱い呼吸を感じて、そのまま意識は溶けていった。
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