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君が幸せでありさえすれば。

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僕はどうだって構わない。
僕の幸せなんてどうだっていい。
僕なんかどうでもいい。
君が幸せでありさえすれば。

だから君の隣に僕がいなくても、たとえ君が僕じゃない誰かのことが好きだったとしても。
それで君が幸せなら。
それならば僕は君の幸せを願いたい。
僕の幸せも捧ぐから、君だけは幸せでいてほしい。
君の幸せだけを、切に願う。
君が幸せなら。

君が幸せなら。
君だけが幸福を感じているのなら。
僕はそれで構わない。

僕はどうだっていい。

僕の恋はどうせ叶わないんだから、君の恋を応援していたい。
君だけは幸せでいてください。
笑っていてください。



だから。
君だけが幸せなのなら、僕はそれでいいから。
叶わない恋を引き摺るよりは、君の幸せを想っていたいから。

君が幸せでありさえすれば。

君が笑顔でいられるなら。
僕はそれを応援したい。
それを望みたい。
それを守っていたい。

もし君の隣に僕の嫌いな人がいたとしても。
もし君が僕から離れていたとしても。
もし僕と話さなくなったとしても。
それでも。
それで君が笑っていられるなら。
僕はそれでいい。
それだけでいい。

君の幸せが僕の幸せなんだって。
そう思ってるから。
そう思っていたいから。
そう思わないと潰れてしまいそうだから。

君が幸せでありさえすれば、僕はもうそれだけでいいから。
せめて君には笑ってほしいから。



君の幸せのためなら。
君の笑顔のためなら。

僕の人生なんて壊れてもいいから。
身体も時間も人生も捧げるから。
君のために生きていくから。

君が望むなら。

僕はそれでいい。
僕の恋なんかどうだっていい。
いずれ消えてしまうんだし、いつか忘れてしまうんだし。
あと2年もすれば思い出になるんだし。
こんな叶わない恋は叶わないままでいい。

未来のある君の恋を応援していたい。



だなんて。
だなんて自分を騙していても。
僕はやっぱり君のことが好きだし、そんなに簡単に消えてしまうなら恋じゃない。

君の幸せが僕の幸せだなんて。
そんな風に格好つけても傷つくのは僕の心だけで。
君は少しも幸せになりはしない。
僕がいくら願ったところで君の幸せが増えるわけでもない。

わかってるんだ。
そんなことはわかってる。

けど。



嫌だ。
やっぱり嫌だ。
自分の中でいくら理屈をつけても。
いくら誤魔化そうとしても。

嫌だ。

君の隣に僕がいないのは嫌だ。
それを遠くから眺めるのも嫌だ。
僕じゃない誰かと笑ってるのが嫌だ。
僕を好きになってもらえないのが嫌だ。

全部嫌だ。
何もかも嫌だ。

叶わない恋が嫌だ。
嫌に決まってる。
叶わない恋にずるずるとしがみついてるのも嫌だ。
君が僕を見てくれないのが嫌だ。
嫌なんだ。

でもどうしようもないんだって。
どうしようもないんだって思ってる。
この恋に未来はないんだと。
この恋は始めから後ろ向きのものなのだと。



何もかも捨ててしまいたい。
好きも恋も愛も捨て去りたい。

ほんとうは全部なくしたい。

そうして身軽なままで、友達として笑っていたい。
何も思わないで、何も悩まないで、友達でいたい。
友達以上になりたいなんて不幸な願いを抱えていたくない。
なれるはずがないものを求めたくない。

そうしたいのにな。
そうしたいのに。

どうしてできないんだろうな。
僕は何がしたいんだろう。



君が幸せでありさえすればって。
そんな夢物語は誰も幸せにしない。
そんな思いを抱えていたって僕は幸せじゃないし、君の幸せにも関係ない。

僕だって幸せでいたい。

当たり前の恋愛をして、当たり前に失恋したりして。
そして当たり前に別の人を好きになって、当たり前に付き合ったりして。

そんな特別な幸せじゃなくていい。
当たり前の、ありふれた幸せでいい。
普通の幸福でいい。
普通でいたい。
多数派でいたい。

でも。

僕の心は僕の思い通りにならない。
だからせめて、君が幸せでありさえすれば、って。
そんなことを僕は願っている。




君が幸せでありさえすれば、僕の不幸も少しは和らぐような。
そんな気がする。
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