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雪に埋まった世界を、僕はひとりで歩いていた。
空は雲で覆われ、昼なのに太陽は見えない。
僕は人間界に逃げてきた日のように歩いていた。
違うのは、もう行くところがないこと、フードを被っていないこと。
すれ違う人間がぎょっとして、道を開ける。

僕はどこで間違ったのだろうか。
ダークナイトを庇ったところだろうか。
本屋で働いたところだろうか。
雪くんと出会ったところだろうか。
魔界から逃げてきたから?
魔界で悪魔的ないじめに耐えればよかった?
生まれてきたのは間違いだった?
僕は生まれてきてはいけなかった?
生まれてきてしまった。
生きてきてしまった。
もう過去には戻れないから、これからも生きていくしかないんだろう。
過去に戻れたとしても、結局僕は今の状態になっているのだと思う。
神様が決めた運命のようなものに、従わなければならない。

もしこの世界に神様がいたとして、いるとして。
その神様っていうのはどれくらい偉いんだろう。
なんで偉いんだろう。
人間が悪魔を作ったように神様を作ったのなら、人間が一番偉いんじゃないかな。
製作物は製作者を超えられない。
能力で超えられたとしても、偉さでは超えられないはずだ。
偉さなんて人間が作り出した価値観に過ぎないけど。



結論。
神様は偉くない。



頭の奥を不意に、雪くんが通る。
雪くんは天使だった。
この世界に汚れなどないことを信じていた。
悪人などいないと思っていた。
天使天使な天使だった。
雪くんは天使だった。
雪くんの中に悪魔などいなかった。
心まで天使だった。

僕には雪くんが理解できそうもない。
だって一人称とか「ぷに」だし。
「私」に「ぷに」って読み方はないと思うんだけど。
多分同じように、雪くんも僕を理解できない。
世界は優しくて善で溢れていると思っている雪くんに。
世界は厳しくて偽善で息が詰まりそうになる僕は。
理解できないだろう。

悪魔と天使は敵だ。
元から理解などできないのだ。
なんで理解しなきゃいけない?
理解して何が生まれる?
というのは理解できない悪魔の言い訳なんだろうけど。
でも、それでも。
理解のしようがないと思う。
悪魔と天使なんて、理解し合えないのだと思う。
だから僕は、雪くんを理解しない。
理解したくない。
理解できない。
どうせ僕は悪魔で。
雪くんは天使だ。



僕は雪くんを理解できない。
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