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という夢を見た。
パンツの中で燻った欲望はパンツの中に白濁を放っていた。
魔界のような異臭。
洗うのめんどくせーな、と思いながら俺は起き上がる。
もちろん隣に巨乳の女が裸で寝ているわけがない。
何してんだろ、俺。
虚しさが俺を襲う。
昨日。
俺は学校の帰り、何か面白いことねーかなーと思いながら歩いていた。
「何か面白いことねーかなー」
もとい、呟きながら、叫びながら歩いていた。
特に理由があったわけでもない。
何もなかった。
何もなかったから、何か起こってほしいと思って叫んでいた。
何かが起こってほしかった。
起こるなら何でもよかった。
俺がその公園に入ったのも、そういう精神状態の所為かもしれない。
公園にはベンチとブランコと、砂場に接続した滑り台だけがあった。
今にも潰されて消えてしまいそうな公園だった。
「何か起きねーかなー……」
ベンチに座って呟き続けていた。
溜め息は俺の足元に溜まって、足を抜けなくさせているみたいだった。
「さっきから儂を呼んでいるのは、お主かのう?」
誰。
顔を上げると、グレーのコートを着たおじいさんが立っていた。
何してんだよ。
まず誰なんだ。
「儂か? そうじゃなぁ……。人は儂のことを、魔法使い、と呼んでおる」
……は?
「魔法使いじゃ。おや、お主信じておらんのか?」
信じるわけねーだろ。
つかさり気に俺の思考読んでんじゃねーよ魔法使いかよ。
……魔法使い?
魔法使いか!
「魔法使いじゃよ」
さてはお主、頭悪いな? と魔法使いが言う。
「は? 俺だってこう見えても惺光なんだけど?」
「ほう?」
「惺光だ、惺光学園」
「高校受験合格に安堵して春休みデビュー、同級生の頭の良さに劣等感を抱きつつも勉強は捨てたと偽る系男子か?」
系男子の前が長ぇよ。
何言ってるかわかんねーし。
「俺大学行こうとか思ってねーから」
「言い訳に逃げる系男子か。……クズじゃな」
は?
お前の中で系男子流行ってんのかよ。
「俺がクズならお前は糞だろうが」
「どの辺が糞なんじゃろうか?」
「知らねーけど全部だよ」
「議論拒否敵勢力全否定系男子かのう……」
だから系男子の推しが強ぇって。
「ところで、じゃ」
急に話変えやがって。
「何だよ?」
「お主、何か起きてほしいと叫んではおらんかったか?」
痛い光景じゃったな、と呟く。
一言多いよ。
「だって何もねーじゃん?」
「現代社会が生んだ闇かのう……」
何言ってんだ。
「そんなお主に、これを授けよう」
「何なの、これ」
茶色の小さな瓶を手渡される。
栄養ドリンクかよ。
「それを飲むとな、」
「魔法でも使えんの?」
「夢を、見られるんじゃ」
……ゆめ?
「将来の夢とかねーんだって」
「そちらではない。夜に見る夢の方じゃよ」
夢くらい見てるけど。
「しかもじゃ。自分が望んだ通りの夢じゃぞ?」
しょーもな。
たったそんだけ?
「そんだけとは何ぞ。夢の中であのようなことやそのようなことができるんじゃ」
へー。
「反応が薄い系男子か……」
俺は瓶の蓋を開ける。
紫色に黄土色を足して、明るさを引いたような色の液体が入っている。
匂いは特にない。
飲んでも味はなく、身体の変化もない。
効いてんの、これ。
そして今に至る。
魔法使いすげえ。
俺はパンツを洗いながら、そんなことを思うのだった。
今日も夢を見よう、と固く心に誓った。
パンツの中で燻った欲望はパンツの中に白濁を放っていた。
魔界のような異臭。
洗うのめんどくせーな、と思いながら俺は起き上がる。
もちろん隣に巨乳の女が裸で寝ているわけがない。
何してんだろ、俺。
虚しさが俺を襲う。
昨日。
俺は学校の帰り、何か面白いことねーかなーと思いながら歩いていた。
「何か面白いことねーかなー」
もとい、呟きながら、叫びながら歩いていた。
特に理由があったわけでもない。
何もなかった。
何もなかったから、何か起こってほしいと思って叫んでいた。
何かが起こってほしかった。
起こるなら何でもよかった。
俺がその公園に入ったのも、そういう精神状態の所為かもしれない。
公園にはベンチとブランコと、砂場に接続した滑り台だけがあった。
今にも潰されて消えてしまいそうな公園だった。
「何か起きねーかなー……」
ベンチに座って呟き続けていた。
溜め息は俺の足元に溜まって、足を抜けなくさせているみたいだった。
「さっきから儂を呼んでいるのは、お主かのう?」
誰。
顔を上げると、グレーのコートを着たおじいさんが立っていた。
何してんだよ。
まず誰なんだ。
「儂か? そうじゃなぁ……。人は儂のことを、魔法使い、と呼んでおる」
……は?
「魔法使いじゃ。おや、お主信じておらんのか?」
信じるわけねーだろ。
つかさり気に俺の思考読んでんじゃねーよ魔法使いかよ。
……魔法使い?
魔法使いか!
「魔法使いじゃよ」
さてはお主、頭悪いな? と魔法使いが言う。
「は? 俺だってこう見えても惺光なんだけど?」
「ほう?」
「惺光だ、惺光学園」
「高校受験合格に安堵して春休みデビュー、同級生の頭の良さに劣等感を抱きつつも勉強は捨てたと偽る系男子か?」
系男子の前が長ぇよ。
何言ってるかわかんねーし。
「俺大学行こうとか思ってねーから」
「言い訳に逃げる系男子か。……クズじゃな」
は?
お前の中で系男子流行ってんのかよ。
「俺がクズならお前は糞だろうが」
「どの辺が糞なんじゃろうか?」
「知らねーけど全部だよ」
「議論拒否敵勢力全否定系男子かのう……」
だから系男子の推しが強ぇって。
「ところで、じゃ」
急に話変えやがって。
「何だよ?」
「お主、何か起きてほしいと叫んではおらんかったか?」
痛い光景じゃったな、と呟く。
一言多いよ。
「だって何もねーじゃん?」
「現代社会が生んだ闇かのう……」
何言ってんだ。
「そんなお主に、これを授けよう」
「何なの、これ」
茶色の小さな瓶を手渡される。
栄養ドリンクかよ。
「それを飲むとな、」
「魔法でも使えんの?」
「夢を、見られるんじゃ」
……ゆめ?
「将来の夢とかねーんだって」
「そちらではない。夜に見る夢の方じゃよ」
夢くらい見てるけど。
「しかもじゃ。自分が望んだ通りの夢じゃぞ?」
しょーもな。
たったそんだけ?
「そんだけとは何ぞ。夢の中であのようなことやそのようなことができるんじゃ」
へー。
「反応が薄い系男子か……」
俺は瓶の蓋を開ける。
紫色に黄土色を足して、明るさを引いたような色の液体が入っている。
匂いは特にない。
飲んでも味はなく、身体の変化もない。
効いてんの、これ。
そして今に至る。
魔法使いすげえ。
俺はパンツを洗いながら、そんなことを思うのだった。
今日も夢を見よう、と固く心に誓った。
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