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七つの厄災【不安編】:不安は心配からくるらしいですよ
人生羈旅
しおりを挟む不安の厄災の一件で王城を失い国王不在となったアテナイへ、チャンスとばかりに隣国から軍が押し寄せてきた。しかし、アダマンティオス辺境伯とプロタトスの冒険者ギルドマスター、カサンドラを始めとする冒険者の一団が押し返した。今まで国の防衛をドラゴンに頼りきってきた隣国の軍は、逆に長年ドラゴンと渡り合ってきた軍の練度に敵う理由がない。そんな簡単なことが、悲哀の厄災に誑かされドラゴンの力を侮っていた隣国の貴族達にはわからなかったらしい。
そして、この一件でアダマンティオス辺境伯は護国の英雄となった。勘違いからとは言え嫌っていた『英雄』の名を冠され、辺境伯は複雑な心境だと上都したクリスが言っていた。
クリスは、これから王都へ凱旋する辺境伯を迎えるいろいろな準備をする為、僅かの側近と一緒に王都へ来ているそうだ。但し、有力貴族の一族ほとんどをデルフィニアは傀儡と変えていたようで、王都に相談できる貴族がいないらしい。
辺境に住む辺境伯を除き、男爵までの貴族は全滅。他は王都から遠く離れた中流貴族が少し残っているくらいだ。王都の冒険者ギルドマスター、アエティオスの紹介で商業ギルトマスターと準備を進めようとしているが、なんせ城がなくなっているし、場所からして難航してるっぽい。
プロタトスで非道を繰り返した辺境伯だが、元々は子息を殺された為の怒りであったことは冒険者達が街で噂を流しており、辺境伯自身も非を認め正しくあろうと努める姿から郊外で暮らす人達ですら許す人が現われ始めている。そんな噂を聞いた中流貴族達が新たな王としてアダマンティオス辺境伯を担ごうという動きもあるとかないとか。
そんな中、俺達は旅の支度を始めている。目的は、エウリュアのお姉さんであるステンさんを探すためだ。間に合わなかったのか隣国との戦争時にステンさんはいなかったらしい。ここから北門を出て前線のある街を虱潰しに回って探すつもりだ。
元英雄で王宮騎士団長のエイレーネさんは、「護るべき王がいなくなった王都より家族が優先」と、王宮騎士も騎士団長も勝手にやめて、俺達の旅についてくるという。そうなると当然モイラさんも一緒だ。
モイラさんはデルフィニアの行方も気にしているようで、見つけ次第たたき潰してまた封印するそうだ。
そして、エウリュアとメディは、今、俺と一緒に荷造りしている。
「ノゾム? 必要な食料は全部【箱】に入れておいてね」
「あぁ、わかってるって。もう、全部入れたよ」
「お兄ちゃん、メディの服もお願い!」
「了解! っていうかすぐに必要ない物は全部入れちまうから、そこにまとめておいてくれ」
「青年の【箱】は便利だな。わしの【袋】は斧を入れるといっぱいになってしまう」
「あなた、今は女の子なんだから一人称くらいは私にしてね」
エイレーネさんの一人称って、元々『わし』で、普段はモイラさんに矯正されて『私』に変えていたそうで、まだちょっとエイレーネさんは慣れないらしい。
そんな感じでのんびりと、身支度を整え終える。
「今度は新しくなった王都へ観光にきてねー」
黄金の夜明け亭のキルケーが手を振り、別れを告げる。城で逃した馬たちはちゃんとここに戻ってきていて、彼女が餌など世話をしてくれていた。感謝しないとな。
「この街を救ってくれたんだもの。気にしないで!」
――だそうだ。
宿から真っ直ぐ北門に向かい、門をぬける。馬車の中にはモイラさんとエウリュア、それとメディが座り、御者は俺。エイレーネさんは自分の馬に乗っている。前世で乗っていた馬の子孫だそうだ。たまたま、騎士団に売りに出されていて、ひと目でわかったらしい。
「さぁて、お姉さんを探しに行きますか」
俺は手綱で馬に合図を出す。俺達の新しい旅がこれから始まる。
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