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七つの厄災【悲哀編】:悲しみは積み重なるものらしいですよ
はじめての情報戦らしいですよ3
しおりを挟む「調査してはっきりしていること、ひとつめ。一週間前、ライオスと呼ばれる闇ギルドの受付が、アダマンティオス辺境伯邸に呼ばれたということ。ふたつめ。その日から街の近くの洞窟に三目熊が住み着いたと噂が流れたこと。みっつめ。三目熊の瞳を採りに行った冒険者が、誰一人帰って来ないということ」
メディが順に調べたことを言いながら指を立てていく。俺たちが追加の材料を取りに行っていた頃から、メディはずっと貴族の動向を探っていたらしい。
「メディが知っている限り、その洞窟に強いモンスターはいなかったはず。冒険者は、洞窟などに異常があった場合、速やかにギルドに報告する義務があるんだけど――今回は誰一人帰って来ない為報告がないの」
メディがさらに状況を説明する。
「貴族と闇ギルドが出会ったその日から、三目熊の噂――偶然にしてはできすぎてるよね」
エウリュアが首をかしげながら考え込む。可愛い。
「お兄ちゃん――鼻の下のびてる」
「しょうがないだろ。エウリュアが可愛いんだから」
「ちょっ、ノゾム!?」
「はいはい。ごちそうさま」
「で、どうする? 罠とわかって洞窟に行くか?」
ずれた話題を元に戻す――って、俺がずらしたんだけど。
「メディはパス! わざわざ怪我をしに行く必要もないと思う」
「そうね、でも、冒険者ギルドのマスターにだけは伝えたほうがいいかもしれないわね」
「知らない冒険者が帰って来なくても、俺には関係ないしなぁ」
どうせ、見て見ぬふりする女どもと、俺を妬んでいた男どもだろうし、いちいち助けてやる義理もないからな。
「わかった。じゃあこの件は冒険者ギルドに任せましょう」
俺達の――間接的な――問題だが、冒険者ギルドに丸投げすることに決めた。頑張れ、カサンドラさん。
メディとの話がまとまった途端――バタン! と、大きな音をたててドアが開き、五、六歳くらいの男の子が駆け込んできた。
「ボ――メディ姉ちゃん大変だ!」
今、この子なんて言おうとした? ボス? メディは街の子供達になんて呼ばせてるんだ?
「ヤニス、どうしたの? 何かあったの?」
「ニックとデジーが攫われた! 二人で川にいったまま帰らないから様子を見に行ったら、これが落ちてたんだ」
「ちょっと見せて!?」
メディが男の子から血がついたシャツを受け取る。何か字が書いてあるみたいだけど――読めない。
「なぁ、なんて書いてあるんだ?」
悔しそうな顔をしてるメディが心配になって聞いてみる。
「子供達が心配なら、今夜、洞窟に来い――だって、なかなか来ない私達にしびれを切らしたのね」
エウリュアが教えてくれた。メディはシャツを見たまま黙ってしまっている。
「よし、今すぐいこう!」
「――!?」
「ノゾム? 約束の時間は今夜だよ?」
俺がすぐ行こうというと、姉妹揃って驚いた顔をする。それに、エウリュアは真面目だな。誘拐犯が一方的に言ってることを守ろうとするなんて――。
「お兄ちゃん、罠が待っているのわかってて、死ぬかも知れないのに――怖くないの?」
固まったままメディが聞いてきた。エウリュアも頷いている。
「怖くないわけじゃない。だけど、今から行けばまだ、罠ができていないかもしれないだろ?」
――根拠はないけど。
「そっか、夜まで待つ必要はないもんね。でも、少し待って。攫われた二人を助けたいの。どうせここにも見張り役がいるだろうから、私達のこと知らせてもらうね。頼めるヤニス?」
「あぁ、まかせてくれ! あと、二人の監禁場所はもう目処がついている。もうすぐ、そこを調べに行った奴から連絡があるはずだ」
俺がやろうとしてることに気付いたメディがヤニスに指示を出す。ヤニスには監禁場所の目星がついているようだ。結構、優秀だな。
「ノゾム兄ちゃん! 絶対二人を助けてね! 今夜だからね!」
ヤニスはドアを開けて外に出ると、大きな声で今夜を強調して叫ぶ。――ちょっとわざとらしすぎねぇか?
窓から見える塀に映っていた人影が、スッと動いてメイン通りの方へ消えて行った。
ちゃんと親分に報告しろよ? ――クリス。
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