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4.なりゆき
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水音が俺の部屋に居候するのに俺はあえて期限を切らなかった。そうしたところで、その通りにならないだろうことは予想できた。余計な気をまわしてストレスを溜めるよりは、なりゆきに任せた方がいい。避けられる精神的負荷は全て避ける。俺の考え方は基本的にそういうところにある。よほど水音が目障りにでもならない限り、俺は彼を静観することにした。
水音の持ち物は、それほど大きくないデイパックが一つきり。そこにシャツが3枚とボトムが一枚、いくつかの下着類と歯ブラシ程度だった。それらの衣類をせっせとまめに手洗いし、日替わりで着回していた。青いTシャツの水音、白のTシャツ、グレーのシャツ、白いシャツ。規則正しく粗この順番で、毎日彼のシャツが替わるのを何周か見た。同居人としての水音は、優等生と言ってよかった。綺麗好きなようだし、クリームともすぐに馴染んでいた。最初に俺のことには手を出すなと言っておいたが、それも適度に守られていた。
偶に協力して飯の支度をしたり、一緒に近所のパン屋に出かけたりしながら、程なく俺達はねんごろになっていた。
といっても、俺達2人の間に恋愛感情や、それに類する遣り取りがあったわけではない。彼がゲイで、そして俺もそうで、どちらかが好みだったというわけでもないのだが、俺達は同じ目的地に向かうバスに乗り合わせでもしたような気軽さで、ごく自然に、いつの間にかそうなってしまっていた。これが互いに同意で付き合うとでもなれば、最初の日がどれかわからない、なんてことはないのだろうが、俺には少なくともその切欠が、記憶のどこにも引っ掛からないのだ。
気付くといつの間にか水音は当たり前のように俺のベッドで俺の横に寝そべり、時に俺のシャツを着て、部屋にある俺の本を次々と読破していった。近所の本屋のバイトを見つけてきてからは、時に自分でなにかしら買って来て、俺の本棚の半分開いたスペースに当然のようにそれらを連ねるようになった。俺はというと、俺の邪魔にならなければいいのだ。
その内、部屋の家賃の一部を水音が持つようになり、買い置きのコーヒーが切れそうになると、ちょっと贅沢な豆を買ってくる。クリームの玩具がいくつか増え、そして水音のシャツに何枚かバリエーションが加わった。俺達が出会った日から、4ヶ月が経過していた。夏に差し掛かっていた。
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