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8.『御風呂場豆腐店』会社概要
しおりを挟む御風呂場豆腐店
代表 御風呂総一郎
資本金イチオク 従業員数、サンビャク
食品製造販売業 主に豆腐の製造販売。
関西一円の百貨店、スーパー、飲食店に豆腐を卸す高級豆腐専門店。
それが俺が連れてこられた所だった。
「…社長の趣味だよ」
イケメンが俺に耳打ちした。
…え?趣味って、人間??俺が言葉を無くしていると、イケメンは何か察したらしく『大丈夫』と声を出さずに言った。
「趣味って言っても、単純に顔が好みってだけだから…」
いや、単に顔が好みってだけで、これだけ人揃えられるってオカシイだろ?っていうか、これイケメンの必要あるか?どう考えてもイケメンの無駄遣い。でもって、俺にコレに混ざれっていうのか?!混ざれねえだろ、どう考えても。
「どうだね、芳賀沼くん、いいだろう‼︎みんな、いい子たちなんだよー!!素晴らしい!!君もすぐに馴染めるよ!」
社長が得意満面に言った。
馴染めねぇよ。
「ウチは、一〇〇パーセント顔採用!人間の心は見た目に出るんだ!顔が綺麗な子は、心も綺麗、心に歪みがないんだね!素晴らしい!!」
社長は、自分で言って、自分で納得している。
いや、やっぱりオカシイ。だがまあいい、別に俺は今日、見学に来ただけで、ここで強制的に働かされるワケじゃない。面白いものを見たと思って、明日のバイトで、これをネタにしてやろう。俺が、そんなことを考えている時だった。
オフィスのさらに奥から、遠目にもなんかキッラキラした ”眩いナンカ“が現れた。途端にオフィスの廊下が花道の様にパッと明るくなったかと思うと、真紅の絨毯の上(元々、赤い絨毯だった)を、まるでファッションショーのランウェイの様に颯爽と長身の男が歩いてきた。肩まである蜂蜜色の髪、膝が二つ余計にあっても可怪しくないくらい長い脚。圧倒的な存在感を放ちながら、俺のもとまで歩いてきた男は、御風呂場敦と名乗った。思わず二度見してしまう程に長い首、その上に乗ってるのは、どこか八十年代の風情漂う中性的な面立ち。
この顔を見たことがある。
そう、ちょっと寄り目だが、往年のアニー・レノックスに似ている。後に知る社長の息子だった。
「やあ、よく来たね!噂は聞いてるよ!君がユッキー君だね?!よろしくね!」
寄り目のアニー・レノックスは俺を見てそう言い放った。
…ユッキー???何故俺の下の名前と微妙に違う名を…?!
俺はなんと答えればいいんだ??
「敦くん!相変わらず君は美しい!!」
社長がやに下がった顔で、アニーに手招きした。
「どうだね?素晴らしいだろう!僕の息子、敦くんだよ!」
寄り目のアニーは、この会社の専務だった。
「ウチは、一〇〇%親族会社だからねーっ!!」
オッサン、語る語る。一〇〇%顔採用に一〇〇%親族会社(?!)、労基的にマイナスポイントしかないというのに、このオッサンは自信満々だ。
「ここの社員はみんな僕の家族!!」
「逸崎君も、僕の息子!!」
一〇〇%親族ってそういうことか?!それ、親族会社って言わねえだろ。
「そして、敦君も僕の嫁!」
いや、それアンタの実の息子だって、さっき言ったじゃん。
その後、俺は、豆腐を作る所なんかを一通り案内されて、一応、断っておくと、俺が最初に見た無駄イケメンの巣は営業&開発部で、工場での人達は見た目は割といろいろで、感じのいいジーサンバーサン、パートのオバちゃんなんかもいた。
その後、大豆で出来ているとかいう、お茶やらケーキやらでもてなされた。なんでもオッサンの会社は、世の中のあらゆるものの50%を大豆でまかないたいんだそうだ。小さいのか大きいのか、よくわからない野望だ。
帰りに豆腐と日当を貰って、俺はイケメンに家まで送ってもらった。それは浦島太郎にでもなったような気分だった。
日当、一日イチマンエン也。
貰った豆腐は、やたらと美味かった。
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