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アルバート
CASE:アンジェ④
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イリアが承諾したことで私は安心した。
「良かったわねサルカ君、アンジェと会えるわね」
「残念だけどサルカ君とアンジェはもう会えないわよ。
だから今からアンジェを助けに向かうけどサルカ君は見えないところで待っているだけよ。
声は聞こえると思うけどね」
「そんな、会わせてあげれば良いのに」
「残念ね、私の調査では座敷牢の中。
そしてアンジェは精神的に不安定になっている上に今は心配しているお母さんも一緒にいるらしいわ。
だからアンジェのお母さんが居るところに原因になったあなたを連れて行く訳には行かないのよ」
「でも原因って、クリスタルを壊したのはサルカ君じゃないわ」
「そうね、でもたぶんサルカ君が原因だと言っても良いわ。
直接の原因は赤いマフラーだけどね」
「赤いマフラー?」
そう自問自答するようにサルカ君は繰り返した。
そう言えば婚約破棄をするまでは、サルカ君は赤いマフラーをしていた。
「赤いマフラーって言うのは、アンジェのくれたマフラーのことかな?」
「そうよ、でもアンジェから赤いマフラーを貰う前に、青いマフラーも持っていなかった?」
「青いマフラー?、ああそうか毎年、母上から青いマフラーを貰っているんだ」
「毎年、お母さんが息子に一番似合うと思っていた青いマフラーを送っていたということね。
アンジェも毎年お母さんからマフラーを貰っていることは請負人さんから教えられて知っていたはずなのよ。
だからマフラーはプレゼントとしては採用しないはずだったのよ。
でも、あなたはそれを要望し、アンジェも答えた。
つまりあなた達はここ数年間、自分達を優先してマフラーを送ってしまったのよ。
サルカ君のお母さんは、数年間無視されたと思い込んでいたのかもね、だから魔が差したんだと思うわ。
人の心の闇は深いのよ、サルカ君のところの使用人からも証言は貰っているから間違いはないわ。
犯人はお母さん。でもあなた達二人が、二人のことしか考えなかったことが原因ともいえる。
あなたはお母さんと言う存在を蔑ろにしたということね」
「そんな、母上が・・・」
「犯人を晒してアンジェとの仲を取り戻そうとしても無駄ね。
既に壊れたクリスタルとお義姉さんの気持ちは戻らないわ。
だからそんな方法は使えないし、白日の下に晒すとあなたの家がもっと悲惨なことになるわよ」
そして、イリアが持っていた鍵が開いた。
そこは地下へ通じる通路があった。
「ここは後ろ暗いことをしている貴族の家ではよくある、何かあった時の秘密の通路。
昔ここが公園になる前からアンジェの家からここまでの秘密の抜け道があったのよ。
公園になってからカムフラージュする意味でこんな小屋が作られたというわけね」
三人で地下通路の中を歩く。
暗いしジメジメ湿っぽくてその上、なにかウゾウゾ動いているものがいる。
「気味が悪いわ・・・」
そう言うとイリアはあっけらかんと「じゃあさっきのところで待っていれば良いわよ」と言い放った。
私だって、アンジェの友達だし、彼女が気になるんだ。
「行くわよ、大丈夫、でもイリアって強いのね」
「目的のためにはこの程度の障害何て平気よ!!」
「目的って、あれ(権力)?」
「そうあれ(権力)」
二人だけが分かる言い回しで確認したが権力らしい・・・
少なくとも今回の件でアンジェが助かる方向ならサルカ君は貸しを作ることになるだろう。
(人一人の命の貸しか、大きな力かも・・・)
その時はそう思ったが、あとで分かるのだがイリアの野望はもっと大きな権利の取得だった。
上に上がる階段を登るイリア。
でも私たちは、アンジェの母親がいると言うことで待っているように言われた。
たぶんイリアが母親に交渉するのに邪魔らしい。
イリアが扉のようなものを開けると。
アンジェの母親の驚きの声が上がった。
「誰?」
「ジャジャン、アンジェを助けに来た白馬の王女様イリアです」
「イリアさん、どうやってここに、それよりあなた、人の家に不法侵入ですよ」
二人の声が聞こえてくる。
違う、もう一人の弱々しい歌声が聞こえる。
その声は扉を開けた時から聞こえていた。
イリアの突然の出現にも驚くことなく、歌い続けているその弱々しい声・・・
アンジェの声。
「非常識なのはわかっています。
でもこうしないとアンジェに会えないからね。
緊急事態ですから許してください」
落ち着いた母親は少し鼻声だった。
泣いていたのだろう。
その間も歌い続けるアンジェ、その場の状況など関係なくラジオから流れるかのように歌い続けていた。
「アンジェ、聞こえる?アンジェ!!」
アンジェに話しかけているようだがアンジェの反応がない。
その後も何度もアンジェを呼びかける声が響いた。
「アンジェしっかりしなさい。
どうしたのもっとしっかり意識を持って・・・」
イリアはその後少し無言になった。
その間も小さな声で歌い続けるアンジェ。
「そうね、無理よね・・・アンジェ本当に色々な酷いショックが続いたものね・・・・」
その時のイリアの声が少し詰まった。
「すいません、少しショック療法をするので、お母さんは目を瞑っていてください」
「えっ?・・・
ふふふ良いお友達を持ったわねアンジェ。
イリアさんはここまで来たくらいだから、アンジェのために相当な覚悟で来てくれたんでしょうね。
こんなにもアンジェのことを思ってくれる。
そうね、ここはあなたにお任せするわ」
「ありがとうございます」
私たちは通路の中にいるのでどうゆうことが行われているのか詳細はわからない。
突然大きな音が響いた。
パシーン・・・
「アンジェ起きなさい。アンジェ・・・」
アンジェの反応はない。その後も何度も頬を打つような音がする。
パシーン・・・
「起きなさいと言っているでしょ。
今起きないとあなたの人生は終わってしまうのよ・・・
そうだわ、ほら思い出すのよ・・・良い香りがしない?」
イリアの声が震える、イリアも涙を流しながら話しかけているのだろう。
パシーン・・・
そして、その音がする度に、横のサルカ君がビク、ビクと痙攣した。
彼も必死に涙を堪えているようだった。
その後奇跡が起こった。
弱々しい歌声が止まった。
そして小さな声ではあるが、アンジェの声がする。
「イリア・・・この香り・・・・」
「そうよ、起きなさい、アンジェ!!」
「イリア・・・イリア・・・お母様は?イリア?・・・イリアどうしてここに?」
意識の混沌はあるようだ。
だが時間と共にアンジェの意識がはっきりしていくようだった。
「アンジェ!!」
その声と共に、二人の声が聞こえにくくなる。
多分イリアは、アンジェを抱きしめたようだった。
「アンジェ大丈夫よ、私が助けてあげる」
その声は優しい大きな声だった。
「良かったわねサルカ君、アンジェと会えるわね」
「残念だけどサルカ君とアンジェはもう会えないわよ。
だから今からアンジェを助けに向かうけどサルカ君は見えないところで待っているだけよ。
声は聞こえると思うけどね」
「そんな、会わせてあげれば良いのに」
「残念ね、私の調査では座敷牢の中。
そしてアンジェは精神的に不安定になっている上に今は心配しているお母さんも一緒にいるらしいわ。
だからアンジェのお母さんが居るところに原因になったあなたを連れて行く訳には行かないのよ」
「でも原因って、クリスタルを壊したのはサルカ君じゃないわ」
「そうね、でもたぶんサルカ君が原因だと言っても良いわ。
直接の原因は赤いマフラーだけどね」
「赤いマフラー?」
そう自問自答するようにサルカ君は繰り返した。
そう言えば婚約破棄をするまでは、サルカ君は赤いマフラーをしていた。
「赤いマフラーって言うのは、アンジェのくれたマフラーのことかな?」
「そうよ、でもアンジェから赤いマフラーを貰う前に、青いマフラーも持っていなかった?」
「青いマフラー?、ああそうか毎年、母上から青いマフラーを貰っているんだ」
「毎年、お母さんが息子に一番似合うと思っていた青いマフラーを送っていたということね。
アンジェも毎年お母さんからマフラーを貰っていることは請負人さんから教えられて知っていたはずなのよ。
だからマフラーはプレゼントとしては採用しないはずだったのよ。
でも、あなたはそれを要望し、アンジェも答えた。
つまりあなた達はここ数年間、自分達を優先してマフラーを送ってしまったのよ。
サルカ君のお母さんは、数年間無視されたと思い込んでいたのかもね、だから魔が差したんだと思うわ。
人の心の闇は深いのよ、サルカ君のところの使用人からも証言は貰っているから間違いはないわ。
犯人はお母さん。でもあなた達二人が、二人のことしか考えなかったことが原因ともいえる。
あなたはお母さんと言う存在を蔑ろにしたということね」
「そんな、母上が・・・」
「犯人を晒してアンジェとの仲を取り戻そうとしても無駄ね。
既に壊れたクリスタルとお義姉さんの気持ちは戻らないわ。
だからそんな方法は使えないし、白日の下に晒すとあなたの家がもっと悲惨なことになるわよ」
そして、イリアが持っていた鍵が開いた。
そこは地下へ通じる通路があった。
「ここは後ろ暗いことをしている貴族の家ではよくある、何かあった時の秘密の通路。
昔ここが公園になる前からアンジェの家からここまでの秘密の抜け道があったのよ。
公園になってからカムフラージュする意味でこんな小屋が作られたというわけね」
三人で地下通路の中を歩く。
暗いしジメジメ湿っぽくてその上、なにかウゾウゾ動いているものがいる。
「気味が悪いわ・・・」
そう言うとイリアはあっけらかんと「じゃあさっきのところで待っていれば良いわよ」と言い放った。
私だって、アンジェの友達だし、彼女が気になるんだ。
「行くわよ、大丈夫、でもイリアって強いのね」
「目的のためにはこの程度の障害何て平気よ!!」
「目的って、あれ(権力)?」
「そうあれ(権力)」
二人だけが分かる言い回しで確認したが権力らしい・・・
少なくとも今回の件でアンジェが助かる方向ならサルカ君は貸しを作ることになるだろう。
(人一人の命の貸しか、大きな力かも・・・)
その時はそう思ったが、あとで分かるのだがイリアの野望はもっと大きな権利の取得だった。
上に上がる階段を登るイリア。
でも私たちは、アンジェの母親がいると言うことで待っているように言われた。
たぶんイリアが母親に交渉するのに邪魔らしい。
イリアが扉のようなものを開けると。
アンジェの母親の驚きの声が上がった。
「誰?」
「ジャジャン、アンジェを助けに来た白馬の王女様イリアです」
「イリアさん、どうやってここに、それよりあなた、人の家に不法侵入ですよ」
二人の声が聞こえてくる。
違う、もう一人の弱々しい歌声が聞こえる。
その声は扉を開けた時から聞こえていた。
イリアの突然の出現にも驚くことなく、歌い続けているその弱々しい声・・・
アンジェの声。
「非常識なのはわかっています。
でもこうしないとアンジェに会えないからね。
緊急事態ですから許してください」
落ち着いた母親は少し鼻声だった。
泣いていたのだろう。
その間も歌い続けるアンジェ、その場の状況など関係なくラジオから流れるかのように歌い続けていた。
「アンジェ、聞こえる?アンジェ!!」
アンジェに話しかけているようだがアンジェの反応がない。
その後も何度もアンジェを呼びかける声が響いた。
「アンジェしっかりしなさい。
どうしたのもっとしっかり意識を持って・・・」
イリアはその後少し無言になった。
その間も小さな声で歌い続けるアンジェ。
「そうね、無理よね・・・アンジェ本当に色々な酷いショックが続いたものね・・・・」
その時のイリアの声が少し詰まった。
「すいません、少しショック療法をするので、お母さんは目を瞑っていてください」
「えっ?・・・
ふふふ良いお友達を持ったわねアンジェ。
イリアさんはここまで来たくらいだから、アンジェのために相当な覚悟で来てくれたんでしょうね。
こんなにもアンジェのことを思ってくれる。
そうね、ここはあなたにお任せするわ」
「ありがとうございます」
私たちは通路の中にいるのでどうゆうことが行われているのか詳細はわからない。
突然大きな音が響いた。
パシーン・・・
「アンジェ起きなさい。アンジェ・・・」
アンジェの反応はない。その後も何度も頬を打つような音がする。
パシーン・・・
「起きなさいと言っているでしょ。
今起きないとあなたの人生は終わってしまうのよ・・・
そうだわ、ほら思い出すのよ・・・良い香りがしない?」
イリアの声が震える、イリアも涙を流しながら話しかけているのだろう。
パシーン・・・
そして、その音がする度に、横のサルカ君がビク、ビクと痙攣した。
彼も必死に涙を堪えているようだった。
その後奇跡が起こった。
弱々しい歌声が止まった。
そして小さな声ではあるが、アンジェの声がする。
「イリア・・・この香り・・・・」
「そうよ、起きなさい、アンジェ!!」
「イリア・・・イリア・・・お母様は?イリア?・・・イリアどうしてここに?」
意識の混沌はあるようだ。
だが時間と共にアンジェの意識がはっきりしていくようだった。
「アンジェ!!」
その声と共に、二人の声が聞こえにくくなる。
多分イリアは、アンジェを抱きしめたようだった。
「アンジェ大丈夫よ、私が助けてあげる」
その声は優しい大きな声だった。
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