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プロローグ「幸福って何?」
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家と親族の幸福を守っているという、私の家に伝わる神具「幸福鏡」
その鏡は幸せを運んでくるという
「幸福」
最近まで忘れてしまっていたその言葉。
確かに私も「幸福鏡」が有った幼い時は幸福だったのかもしれない。
でも幼い私は幸福というものを分かっていなかった。
だから幼い私はあんな行動を起こしてしまったのだろう。
そしてその行動の結果「幸福鏡」が失われたときから私は幸福とは縁がなくなったのも事実だ。
幸福と縁が無くなった時には「幸福鏡」が幸福を運んでくるのは本当だろうと考えたこともあった。
でも今では本当に「幸福鏡」が有ったから幸福だったのかどうかは分からないと思っている。
幸福と縁が無くなること「不幸のどん底に真っ逆さま」
それは今でも夢に見る恐ろしい場面。
その場面では私は縛られて大勢に囲まれて全員の憎しみの目に晒されていた。
「「「弥子、お前のせいで、多宝来家は幸福を失った」」」
あの時、私の軽率な行いにより、私や私の親族たちは幸福から見放されたというのだ。
私を可愛がってくれていた多くの親族は憎しみの言葉を私に吐きかけて、毎日全員に責められ続けた。
その場面で私を守るものは誰もいなかった。
あの日から母は別人のようになり、父は母が「人でなくなった」という。
母をそんなにしたのは私だ、だから父も私を恨んでいるだろうと思った。
婿養子だった父は親族に対して何も言えなかったし、親戚の言うがまま私を縛ったのも父だった。
縛られて暗い部屋に押し込められ食事も与えられない日々。
もう私には誰も味方は居ない、そして抵抗する気力すらなくなっていた。
朦朧とする意識の中で私に「創鑑の儀式」とか言うものが執り行われるという話が聞こえた。
何のことだろうかと思いながらも意識が殆どない状態では私は何もできない。
衰弱した体の私はそのまま私は気を失った。
「もういい」
その時の私はもう二度と目覚めたくなかった。
だが、私は大きく揺れる感覚で薄くではあるが意識が戻った。
良くは分からないが、誰かが私を抱えて走っているように感じた。
少ししか開かない瞼を開けると、うっすらと父の顔があった。
なんと父が手を差し伸べてくれた。
「お前を失いたくないんだ」
うつろな記憶の中で、父がそう言うのが聞こえた。
父は衰弱した私を抱えて逃げた。
直ぐに私と父は親族全体から「裏切者」と呼ばれ追われることになった。
その後最初は父の知り合いのところを転々と逃げ、そして親族から隠れる生活をすることになった。
恐ろしいのは追いかけてくる親族は「人でなし」になっていたことだ。
彼らには人の心は無かった。
逃げ隠れする生活は人から見れば「不幸だった」と思うだろう。
そうかもしれない、でも最近、私は幸せを感じることが出来るようになった。
尤もそれはたぶん昔から何も変わっていないのだと思う。
それを幸福だと感じる余裕が無かったのだろう。
幸福でないから、少しの幸せを大きな幸せと感じることが出来る。
それは相対的なものかもしれないが、不幸だから小さな幸せが大きな幸せに思えるだけなのだろう。
でもそれを幸せと思える今が大事なんだと思った。
そうだ。父は私を守って、いつも一緒に居てくれた。
そして、それが一番の幸せだった。
そう気づかせてくれたのは、私に名前を譲ってくれた玲子さんのおかげかもしれない。
私は別人になることでここ数年は親族の追手の影もなかったので心に余裕が出来た。
今の私は、多宝来弥子ではなく最乗寺玲子と名乗っている。
玲子さんには感謝しかない。
でも玲子さんは私のために、私の親族に・・・
玲子さん本当にごめんなさい。
それも私の重ねた罪だった。
そうか、罪深い私はこれからも多くの罪を重ねていく運命のようだ。
その鏡は幸せを運んでくるという
「幸福」
最近まで忘れてしまっていたその言葉。
確かに私も「幸福鏡」が有った幼い時は幸福だったのかもしれない。
でも幼い私は幸福というものを分かっていなかった。
だから幼い私はあんな行動を起こしてしまったのだろう。
そしてその行動の結果「幸福鏡」が失われたときから私は幸福とは縁がなくなったのも事実だ。
幸福と縁が無くなった時には「幸福鏡」が幸福を運んでくるのは本当だろうと考えたこともあった。
でも今では本当に「幸福鏡」が有ったから幸福だったのかどうかは分からないと思っている。
幸福と縁が無くなること「不幸のどん底に真っ逆さま」
それは今でも夢に見る恐ろしい場面。
その場面では私は縛られて大勢に囲まれて全員の憎しみの目に晒されていた。
「「「弥子、お前のせいで、多宝来家は幸福を失った」」」
あの時、私の軽率な行いにより、私や私の親族たちは幸福から見放されたというのだ。
私を可愛がってくれていた多くの親族は憎しみの言葉を私に吐きかけて、毎日全員に責められ続けた。
その場面で私を守るものは誰もいなかった。
あの日から母は別人のようになり、父は母が「人でなくなった」という。
母をそんなにしたのは私だ、だから父も私を恨んでいるだろうと思った。
婿養子だった父は親族に対して何も言えなかったし、親戚の言うがまま私を縛ったのも父だった。
縛られて暗い部屋に押し込められ食事も与えられない日々。
もう私には誰も味方は居ない、そして抵抗する気力すらなくなっていた。
朦朧とする意識の中で私に「創鑑の儀式」とか言うものが執り行われるという話が聞こえた。
何のことだろうかと思いながらも意識が殆どない状態では私は何もできない。
衰弱した体の私はそのまま私は気を失った。
「もういい」
その時の私はもう二度と目覚めたくなかった。
だが、私は大きく揺れる感覚で薄くではあるが意識が戻った。
良くは分からないが、誰かが私を抱えて走っているように感じた。
少ししか開かない瞼を開けると、うっすらと父の顔があった。
なんと父が手を差し伸べてくれた。
「お前を失いたくないんだ」
うつろな記憶の中で、父がそう言うのが聞こえた。
父は衰弱した私を抱えて逃げた。
直ぐに私と父は親族全体から「裏切者」と呼ばれ追われることになった。
その後最初は父の知り合いのところを転々と逃げ、そして親族から隠れる生活をすることになった。
恐ろしいのは追いかけてくる親族は「人でなし」になっていたことだ。
彼らには人の心は無かった。
逃げ隠れする生活は人から見れば「不幸だった」と思うだろう。
そうかもしれない、でも最近、私は幸せを感じることが出来るようになった。
尤もそれはたぶん昔から何も変わっていないのだと思う。
それを幸福だと感じる余裕が無かったのだろう。
幸福でないから、少しの幸せを大きな幸せと感じることが出来る。
それは相対的なものかもしれないが、不幸だから小さな幸せが大きな幸せに思えるだけなのだろう。
でもそれを幸せと思える今が大事なんだと思った。
そうだ。父は私を守って、いつも一緒に居てくれた。
そして、それが一番の幸せだった。
そう気づかせてくれたのは、私に名前を譲ってくれた玲子さんのおかげかもしれない。
私は別人になることでここ数年は親族の追手の影もなかったので心に余裕が出来た。
今の私は、多宝来弥子ではなく最乗寺玲子と名乗っている。
玲子さんには感謝しかない。
でも玲子さんは私のために、私の親族に・・・
玲子さん本当にごめんなさい。
それも私の重ねた罪だった。
そうか、罪深い私はこれからも多くの罪を重ねていく運命のようだ。
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