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ミナトヨウコ
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車から出て歩き始めるが、ドキドキが止まらない。
こんな場面はよく本で読むが、本で読む限りはそこまでは無いだろうと思っていた。
でも、いざその場面に遭遇すると、本当に心臓が口から飛び出しそうなほどだった。
でも近藤さんと浅野さんは違っていた、彼女たちはスタスタ歩いて行く。
近藤さんは警察だから冷静なのはわかるが、浅野さんはどうしてそんなに冷静なのだろうか?
ありがたいことだ、だって二人が冷静なので私も冷静になろうと思える。
扉の前に来ると、サングラスに黒づくめのスーツを着た、その種の男の人たちが四人立っていた。
「よう来たな、これはまた凄い美人ぞろいですね」
などと付き添いの二人を見て言葉を掛けて来た。
近藤さんは少し高い声で、その男たちに軽く答えた。
「美人だなんて、ありがとうございます。
本日はお招きありがとうございます。
それではお邪魔いたしますわ」
本当に警察と言うのは冷静なのだと感心していた。
扉の中は広い板の間になっていた。
そこには座布団が敷いてあり十名以上のサングラスに黒づくめのスーツというさっきと同じその種の男の人が座っていた。
ジロジロと品定めをするような私達を舐めまわすような視線が纏わりつく。
するとその中の一人が隣の部屋に行くように指示した。
怖くなった私は浅野さんに小さな声で話しかけた。
「浅野さん、凄い人数、怖いわ・・・」
でも浅野さんは全く動じていなかった。
「大丈夫よ、この程度、ふふふ」
「えっ?」
その声に安心すると言うか、あっけにとられた。
なぜって?浅野さんは楽しそうに笑み浮かべていたからだ。
隣の部屋に繋がる襖を開けると二十畳ほどの部屋にも真ん中に大きな御膳があり、その前に和くんが座っていた。
「和くん」
思わず声が出た。
「ナナ・・・ちゃん」
和くんの声が聞こえた瞬間私の涙腺は壊れた。
声が出ない・・・
そんな私を見て、浅野さんがハンカチを渡してくれた。
「顔色は悪いけど体調は良さそうね良かったわね」
襖が自動的に閉まったように思えたが、実際には襖の横には二人の黒づくめの男たち、そして和くんの横には偉そうな顔をして座っている男の人がいた。
「遠いところ、よう来てくれましたな。
早いとこ、遺産の話をしましょうや」
近藤さんは全く動じず話をする。
「あらあら、気の短いことですわね。
貴方はお兄様とどのような関係でしょうか?」
男はその言葉遣いが気に入らなかったのかぶっきらぼうに聞き返した。
「あんたらこそなんや?」
「あっ、これは失礼いたしました。
私は遺産関係の調整と処理を任された弁護士で近藤と申します。
この方がナナ様です、そしてこちらは銀行関係の手続きをするために来ていただいたHR銀行の浅野様。
調査報告にはあなたの情報はありませんでしたので関係ないのであれば手続きが済むまで退席をお願いします」
「わしは、この男の雇い主で、住むところや食べ物の世話までしている『お人よし』や。
まっ、言うなれば、今はこの男を世話をしている家族みたいなもんや。
この男に金も貸しとるさかいな、金の話が絡むなら参加させてもらうわ」
「借金のお話でしたら、遺産手続きの話が済んでからにしていただけませんか?」
「あほ言うな、家族みたいなもんや言うとるやろ!!、和、お前からもなんとか言え!!」
「すいません、この加藤さんも家族みたいなものなので同席させて下さい」
「分かりました、でもその二人は・・・」
「おっ、すまんな、おまえら可愛い姉ちゃんらを見ときたいやろけど、外に出とけや」
「「はい」」
黒机の男たちは素直に返事をすると、そのまま襖の向こうに消えて行った。
「さあ、ほな始めましょか」
男は仕切るようにそう言うと手続きが始まった。
手続きは順調に進んでいた。
和くんの顔を見ている私。
「ナナちゃん、ナナちゃん・・・」
浅野さんの声が聞こえる。
「えっ、はい・・・」
浅野さんは私の書類の項目を指さした。
「お兄ちゃんは気になるだろうけど、ここにサインしてくださいね」
言われた通りサインする私。
和くんの顔を見ているといつものように声を掛けたくなった。
そして、なんとなく和くんに話しかける。
「和・・・和兄ちゃん、家に帰って来られないの?」
「まだ借金があるから帰れないよ」
「遺産が入っても?」
「あ・・・そうかな」
そう言うと隣の加藤とか言う人の顔を見る和くん。
「遺産でほとんど返せると思うけど、まあ、住むところとか生活のための費用とかも貸しとるさかいな当分帰れんわな」
近藤さんがそのことに対して質問をする」
「どの程度の利息で貸されているんですか?」
「利息とかは、そうやな、企業秘密や・・・女のくせに黙っとれや」
「企業秘密?法定利息と言うものがありますからね。あなた、弁護士を舐めると痛い目にあいますわよ」
「ほう・・・強気やな。
そうや、うちには美人のお姉さん方にお勧めしている、ええ薬があるんやけどな
一度打ったら虜になるんや、後は欲しい欲しいと言うことになる薬やで」
男はいやらしい笑みを浮かべると立ち上がった。
それと同時に襖の向こうから数名の黒づくめの男たちが入って来て襖を閉めると立ちはだかった。
閉じ込められた、そう思った時、和くんが叫び出した。
「ナナちゃんには手を出さないでください」
「あほ、こんなベッピンさんを三人も逃がすわけないやろ、三人を見た時からこのまま帰す気はないんや」
襖から出て来た男たちは浅野さんと近藤さんを羽交い絞めにしようとし近づいた。
その後に続く数名は注射器のようなものを持っていた。
私は加藤という男に羽交い絞めにされた。
「放して!!」
私がそう叫ぶと、和くんが加藤という男に向かって行った。
「お前、そんなことして良いと思っとるんか!!
病院のお前の友達がどうなってもしらんで!!」
そう言われて和くんは少し怯んだがそれで加藤と言う男に掴み掛かって行った。
「ナナちゃんを放せ!!」
「うるさいんじゃ!!黙っとれ!!」
男は和くんを突き飛ばすと懐から拳銃を出した。
「お前ら、ええ加減にせんと、ここで人生終わりやで!!」
そう言って男が浅野さんや近藤さんの方を見ると・・・
二人を羽交い絞めしようとした男たちが倒れている
「なんでや?」
「この程度、軽い軽い・・・物足りないわね」
浅野さんは何か物足りなそうにしていた。
そして加藤の持つ拳銃を見ると近藤さんは大きな声で叫ぶ。
「人生が終わるのは貴方の方ね。
須藤!!、今だ!!、突入!!」
そう言えば、近藤さんはマイク付きのイヤホンを耳にセットしていた。
と言うことは今までの会話も全て外の須藤さんには筒抜けだったんだろう。
加藤は拳銃を近藤さんに向けるが全く動じない近藤さん。
その顔を見て拳銃を私の胸に押し当てて脅し始めた。
「動くな、動くとこの娘の命は無いぞ」
近藤さんは感心したような顔をすると脅すような顔になった。
「ほほう、やる気なのね、私達、そう、このみ~なと、洋子に向かってくるとは相当馬鹿ね」
言われた男は何やら言葉を繰り返し始めた・・・
「何をいうとるんや、み~なと、洋子・・・
みなと?洋子?・・・みなと洋子・・・ミナトヨウコ」
さっきの近藤さんの連絡のためだろうか、須藤さんの声も聞こえて来た。
そして襖の向こうでは何やら大勢で大騒ぎになっているようだった。
そしてこちらも、男の顔が青ざめてくる。
「ミナトヨウコ・・・まさか・・・シティ・スイーパー・ミナトヨウコ?」
浅野さんがそれを聞いて嬉しそうな顔をする。
「あら、知ってたのね、私達二人の、やんちゃだった時の『古い二つ名』よ」
何故かは分からなかったが、男は慌てだした。
「動くな!!、撃つぞ!!」
そう言うと男は私を二人の方向に投げつけるようにすると、そのまま部屋の奥にある小さな扉に向かって走って行った。
襖の向こうはまだ騒がしい状態だったが襖が開いた。
「近藤主任、大丈夫ですか!!」
そう叫びながら須藤さんが飛び込んできた。
「抵抗する者は全て逮捕よ、それと薬と拳銃を確保しておいて」
近藤さんは須藤さんに向かって指示しながら出口に向かって走って行った。
それを追うように浅野さんも走って行く。
和くんが私に近づいて来た。
「ナナちゃん、なんて危ないことをするんだ」
「だって、私があの時庇えなかったからこんな目にあっているんだと思って・・・
だからどうしても助けないとって思ったの」
「そんなことは無い。
これは俺がお世話になった人のために借金を抱えたことが原因なんだ」
「違う、私が庇っていればまだ店で働いていたからこんなことしなくても良かったはずなの」
私はさっきの恐怖もあり震えと涙が止まらなくなっていた。
「だから違うって・・・ナナちゃんのせいじゃないよ」
そんなことを二人で言いあいながら、外に出た。
外では加藤と言う男が車に乗って猛スピードで逃げようとしていた。
近藤さんが車の前に飛び出すと。
足を振り上げた。
その瞬間車のフロントガラスが粉々に割れ車は急停止した。
そんな光景を見て浅野さんが呟いた。
「お~~っ、ミ~ナの鋼鉄ヒールは現在も、健在ね!!」
鋼鉄ヒールって何?
そう言えば近藤さんの片方ヒールが脱げていた。
でも鋼鉄ヒールって何だろう?
その後近藤さんは私たちの所へやって来た。
近藤さんは私の手を握りながら嬉しそうな笑顔で話しかけて来た。
「ナナちゃんごめんね、最後は怖い思いをさせたわね。でも犯人は確保出来たわ、ありがとう!!」
そして和くんに警察署へ同行するよう説明した。
「事情聴取したいのと、居住環境の検証をしたいから少し付き合ってね、お願い」
そしてパトカーに一緒に乗るように言うと私の方を向いた。
「少しの間和くんを借りるわね」
そう近藤さんが言った。
「はい。和くんをよろしくお願いします」
私には浅野さんが迎えに来た。
「何とかいろいろ解決ね、大騒ぎだったわね。
私の役割は終わったわね、あと残るのは例の件ね」
「そうですね、和くんの借金の件ですね」
「本当に良いの?
事件性もあるから払わなくてもいいかもしれないわよ」
「でも良いんです、私の責任だから・・・」
「それは違うって和くんも言うと思うけどな・・・」
その時だった、パトカーに乗っている和くんが大きな声で泣きだした。
それを聞いた浅野さんが小さな声で言った。
「きっと聞いたのね、助けたはずの人が亡くなったことを・・・」
そうか、あの人だなと思った。
借金の肩代わりをしてまで助けようとした人だ。
そう、和くんがそれほどまでして助けようとした人だ。
間違いなく和くんにとって大事な人だったんだろう。
その人が亡くなったことを聞いて和くんは泣いている。
そしてその泣き声はいつまでも続いていた。
こんな場面はよく本で読むが、本で読む限りはそこまでは無いだろうと思っていた。
でも、いざその場面に遭遇すると、本当に心臓が口から飛び出しそうなほどだった。
でも近藤さんと浅野さんは違っていた、彼女たちはスタスタ歩いて行く。
近藤さんは警察だから冷静なのはわかるが、浅野さんはどうしてそんなに冷静なのだろうか?
ありがたいことだ、だって二人が冷静なので私も冷静になろうと思える。
扉の前に来ると、サングラスに黒づくめのスーツを着た、その種の男の人たちが四人立っていた。
「よう来たな、これはまた凄い美人ぞろいですね」
などと付き添いの二人を見て言葉を掛けて来た。
近藤さんは少し高い声で、その男たちに軽く答えた。
「美人だなんて、ありがとうございます。
本日はお招きありがとうございます。
それではお邪魔いたしますわ」
本当に警察と言うのは冷静なのだと感心していた。
扉の中は広い板の間になっていた。
そこには座布団が敷いてあり十名以上のサングラスに黒づくめのスーツというさっきと同じその種の男の人が座っていた。
ジロジロと品定めをするような私達を舐めまわすような視線が纏わりつく。
するとその中の一人が隣の部屋に行くように指示した。
怖くなった私は浅野さんに小さな声で話しかけた。
「浅野さん、凄い人数、怖いわ・・・」
でも浅野さんは全く動じていなかった。
「大丈夫よ、この程度、ふふふ」
「えっ?」
その声に安心すると言うか、あっけにとられた。
なぜって?浅野さんは楽しそうに笑み浮かべていたからだ。
隣の部屋に繋がる襖を開けると二十畳ほどの部屋にも真ん中に大きな御膳があり、その前に和くんが座っていた。
「和くん」
思わず声が出た。
「ナナ・・・ちゃん」
和くんの声が聞こえた瞬間私の涙腺は壊れた。
声が出ない・・・
そんな私を見て、浅野さんがハンカチを渡してくれた。
「顔色は悪いけど体調は良さそうね良かったわね」
襖が自動的に閉まったように思えたが、実際には襖の横には二人の黒づくめの男たち、そして和くんの横には偉そうな顔をして座っている男の人がいた。
「遠いところ、よう来てくれましたな。
早いとこ、遺産の話をしましょうや」
近藤さんは全く動じず話をする。
「あらあら、気の短いことですわね。
貴方はお兄様とどのような関係でしょうか?」
男はその言葉遣いが気に入らなかったのかぶっきらぼうに聞き返した。
「あんたらこそなんや?」
「あっ、これは失礼いたしました。
私は遺産関係の調整と処理を任された弁護士で近藤と申します。
この方がナナ様です、そしてこちらは銀行関係の手続きをするために来ていただいたHR銀行の浅野様。
調査報告にはあなたの情報はありませんでしたので関係ないのであれば手続きが済むまで退席をお願いします」
「わしは、この男の雇い主で、住むところや食べ物の世話までしている『お人よし』や。
まっ、言うなれば、今はこの男を世話をしている家族みたいなもんや。
この男に金も貸しとるさかいな、金の話が絡むなら参加させてもらうわ」
「借金のお話でしたら、遺産手続きの話が済んでからにしていただけませんか?」
「あほ言うな、家族みたいなもんや言うとるやろ!!、和、お前からもなんとか言え!!」
「すいません、この加藤さんも家族みたいなものなので同席させて下さい」
「分かりました、でもその二人は・・・」
「おっ、すまんな、おまえら可愛い姉ちゃんらを見ときたいやろけど、外に出とけや」
「「はい」」
黒机の男たちは素直に返事をすると、そのまま襖の向こうに消えて行った。
「さあ、ほな始めましょか」
男は仕切るようにそう言うと手続きが始まった。
手続きは順調に進んでいた。
和くんの顔を見ている私。
「ナナちゃん、ナナちゃん・・・」
浅野さんの声が聞こえる。
「えっ、はい・・・」
浅野さんは私の書類の項目を指さした。
「お兄ちゃんは気になるだろうけど、ここにサインしてくださいね」
言われた通りサインする私。
和くんの顔を見ているといつものように声を掛けたくなった。
そして、なんとなく和くんに話しかける。
「和・・・和兄ちゃん、家に帰って来られないの?」
「まだ借金があるから帰れないよ」
「遺産が入っても?」
「あ・・・そうかな」
そう言うと隣の加藤とか言う人の顔を見る和くん。
「遺産でほとんど返せると思うけど、まあ、住むところとか生活のための費用とかも貸しとるさかいな当分帰れんわな」
近藤さんがそのことに対して質問をする」
「どの程度の利息で貸されているんですか?」
「利息とかは、そうやな、企業秘密や・・・女のくせに黙っとれや」
「企業秘密?法定利息と言うものがありますからね。あなた、弁護士を舐めると痛い目にあいますわよ」
「ほう・・・強気やな。
そうや、うちには美人のお姉さん方にお勧めしている、ええ薬があるんやけどな
一度打ったら虜になるんや、後は欲しい欲しいと言うことになる薬やで」
男はいやらしい笑みを浮かべると立ち上がった。
それと同時に襖の向こうから数名の黒づくめの男たちが入って来て襖を閉めると立ちはだかった。
閉じ込められた、そう思った時、和くんが叫び出した。
「ナナちゃんには手を出さないでください」
「あほ、こんなベッピンさんを三人も逃がすわけないやろ、三人を見た時からこのまま帰す気はないんや」
襖から出て来た男たちは浅野さんと近藤さんを羽交い絞めにしようとし近づいた。
その後に続く数名は注射器のようなものを持っていた。
私は加藤という男に羽交い絞めにされた。
「放して!!」
私がそう叫ぶと、和くんが加藤という男に向かって行った。
「お前、そんなことして良いと思っとるんか!!
病院のお前の友達がどうなってもしらんで!!」
そう言われて和くんは少し怯んだがそれで加藤と言う男に掴み掛かって行った。
「ナナちゃんを放せ!!」
「うるさいんじゃ!!黙っとれ!!」
男は和くんを突き飛ばすと懐から拳銃を出した。
「お前ら、ええ加減にせんと、ここで人生終わりやで!!」
そう言って男が浅野さんや近藤さんの方を見ると・・・
二人を羽交い絞めしようとした男たちが倒れている
「なんでや?」
「この程度、軽い軽い・・・物足りないわね」
浅野さんは何か物足りなそうにしていた。
そして加藤の持つ拳銃を見ると近藤さんは大きな声で叫ぶ。
「人生が終わるのは貴方の方ね。
須藤!!、今だ!!、突入!!」
そう言えば、近藤さんはマイク付きのイヤホンを耳にセットしていた。
と言うことは今までの会話も全て外の須藤さんには筒抜けだったんだろう。
加藤は拳銃を近藤さんに向けるが全く動じない近藤さん。
その顔を見て拳銃を私の胸に押し当てて脅し始めた。
「動くな、動くとこの娘の命は無いぞ」
近藤さんは感心したような顔をすると脅すような顔になった。
「ほほう、やる気なのね、私達、そう、このみ~なと、洋子に向かってくるとは相当馬鹿ね」
言われた男は何やら言葉を繰り返し始めた・・・
「何をいうとるんや、み~なと、洋子・・・
みなと?洋子?・・・みなと洋子・・・ミナトヨウコ」
さっきの近藤さんの連絡のためだろうか、須藤さんの声も聞こえて来た。
そして襖の向こうでは何やら大勢で大騒ぎになっているようだった。
そしてこちらも、男の顔が青ざめてくる。
「ミナトヨウコ・・・まさか・・・シティ・スイーパー・ミナトヨウコ?」
浅野さんがそれを聞いて嬉しそうな顔をする。
「あら、知ってたのね、私達二人の、やんちゃだった時の『古い二つ名』よ」
何故かは分からなかったが、男は慌てだした。
「動くな!!、撃つぞ!!」
そう言うと男は私を二人の方向に投げつけるようにすると、そのまま部屋の奥にある小さな扉に向かって走って行った。
襖の向こうはまだ騒がしい状態だったが襖が開いた。
「近藤主任、大丈夫ですか!!」
そう叫びながら須藤さんが飛び込んできた。
「抵抗する者は全て逮捕よ、それと薬と拳銃を確保しておいて」
近藤さんは須藤さんに向かって指示しながら出口に向かって走って行った。
それを追うように浅野さんも走って行く。
和くんが私に近づいて来た。
「ナナちゃん、なんて危ないことをするんだ」
「だって、私があの時庇えなかったからこんな目にあっているんだと思って・・・
だからどうしても助けないとって思ったの」
「そんなことは無い。
これは俺がお世話になった人のために借金を抱えたことが原因なんだ」
「違う、私が庇っていればまだ店で働いていたからこんなことしなくても良かったはずなの」
私はさっきの恐怖もあり震えと涙が止まらなくなっていた。
「だから違うって・・・ナナちゃんのせいじゃないよ」
そんなことを二人で言いあいながら、外に出た。
外では加藤と言う男が車に乗って猛スピードで逃げようとしていた。
近藤さんが車の前に飛び出すと。
足を振り上げた。
その瞬間車のフロントガラスが粉々に割れ車は急停止した。
そんな光景を見て浅野さんが呟いた。
「お~~っ、ミ~ナの鋼鉄ヒールは現在も、健在ね!!」
鋼鉄ヒールって何?
そう言えば近藤さんの片方ヒールが脱げていた。
でも鋼鉄ヒールって何だろう?
その後近藤さんは私たちの所へやって来た。
近藤さんは私の手を握りながら嬉しそうな笑顔で話しかけて来た。
「ナナちゃんごめんね、最後は怖い思いをさせたわね。でも犯人は確保出来たわ、ありがとう!!」
そして和くんに警察署へ同行するよう説明した。
「事情聴取したいのと、居住環境の検証をしたいから少し付き合ってね、お願い」
そしてパトカーに一緒に乗るように言うと私の方を向いた。
「少しの間和くんを借りるわね」
そう近藤さんが言った。
「はい。和くんをよろしくお願いします」
私には浅野さんが迎えに来た。
「何とかいろいろ解決ね、大騒ぎだったわね。
私の役割は終わったわね、あと残るのは例の件ね」
「そうですね、和くんの借金の件ですね」
「本当に良いの?
事件性もあるから払わなくてもいいかもしれないわよ」
「でも良いんです、私の責任だから・・・」
「それは違うって和くんも言うと思うけどな・・・」
その時だった、パトカーに乗っている和くんが大きな声で泣きだした。
それを聞いた浅野さんが小さな声で言った。
「きっと聞いたのね、助けたはずの人が亡くなったことを・・・」
そうか、あの人だなと思った。
借金の肩代わりをしてまで助けようとした人だ。
そう、和くんがそれほどまでして助けようとした人だ。
間違いなく和くんにとって大事な人だったんだろう。
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