和菓子は太らない

魔茶来

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やっぱり私が守る

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 どのお茶も太陽の光を受けて綺麗な色に光っていた。
 でもね、レストランでペットボトルの飲料飲んでいたら怒られるわね。

「試飲したいけどレストランで飲んだら怒られるわね」
 そう言ったら、なんと彼らはこの店の常連らしく店の人も良く知っているため、実は店で試飲しているという。
 要するに店の人も理解しているから大丈夫とのことだった。

 ふぁっ、ふぁっ、ふぁっ、ふあ~良いのかそれ!!

 美味しいお昼ご飯に美味しいお茶の組み合わせが許されるんだ。
 
 さてお茶のことだが、本格的なお茶を五種類飲料として開発したという。

 実際にはこの十倍以上の試作開発をしたそうだが結局五種類に絞ったそうだ。

「では遠慮なく!!」

 流石に新製品なので番号付きの白いラベルだった。

 そのうちの一番を飲んでみる。
 うん、苦み爽やかでおいしい。

「このお茶にはそう栗饅頭のような程よい甘さが合う。熱くして湯呑に移して飲むのが正解かな」

「なるほど、なるほど」

 次に二番目を飲んでみる。
「基本的に冷やして飲むのが良さそう、冷たいガラスのコップに水羊羹やわらび餅のような冷たい感じの甘味と会うわね」

 次に三番目を飲んでみる、もうすっかりレストランだとことも忘れてお茶を飲むことに集中していた。
「う~ん高級な感じのするお茶ね、何とも口に残る感じが素晴らしいわ。高級茶はやはり少しぬるい位の温度が一番ね。うんうん」

 そう言いながら私を見ている二人を見るとなんか困ったような顔をしている。
 そうだろうな、ペットボトル飲料の温度なんて固定できないからね。

「すいません、お茶の醍醐味は本当は温度が大事何だけどね。でもこれは残念ながらペットボトル飲料だったわね」

「そうです、コンビニや自動販売機でもそんなに温度変化は出来ないです、それに持って歩くと結局ぬるいお茶になるんですよ。だからうちのお茶はどの温度でも美味しくなるように調整してあるのよ」

「なるほどね、それで今日は全てのお茶を常温に近いこの温度にしてあるんですね。私は和菓子を食べる時のお茶には贅沢してますよ。食べる和菓子に会わせるためにお茶は温度と入れ物が重要だと考えているんです」

 ついでとばかりに四番目を飲んでみる。
 これがまた甘い感じのする美味しいお茶だった。
 試飲だというのに美味しいこともあって4番目までで結構な量を飲んでしまった。

 そう言えばお腹が膨れてしまった、ランチが食べられ・・・・と思っているとランチが運ばれてきた。

 美味しくて箸が止まらない・・・
「あはははは、美味しい!!美味しい!!」

 あっ、別に、お酒は飲んでいませんよ。でも美味しかったので楽しく昼食を頂きました。
 その間二人は私が食べるのを見て楽しそうな顔をしていました、少し失礼じゃないでしょうか、見世物ではありませんよ。

「ナナさんって本当に美味しそうに食べるんですね、とても幸せそうな顔をして食べるので、なんか見ていると嬉しくなってきますよ」
 
 なるほど、でもそれって誉め言葉かしら?

「美味しかった!!」
 食べ終わると、もう飲めないと思いつつ飲めてしまうのが私。
 そして気になるので五番目のお茶を飲んだ。

「わあ、これはなんだ、この渋みと少しの苦み、そして後から酸味がさっぱり感を誘う、『まかぜナッツ』にピッタリだ!!」

 本当に驚いた、こんなお茶があるなんて、直ぐに二人の顔を見ると言葉が出た。

「このお茶ください」

 二人はあっけに取られて。
「「えっ?」」

 聞こえなかったかな、ではもう一度。
「このお茶ください」

 お父さんが一言応答する。
「おいおいナナ、発売前だから売ることは出来ないよ」

 そうか忘れていた。
「あははは忘れてた、そりゃそうか!!」

 本当にどれも本格的なお茶飲料であり、おいしいかった。
「本当にどれもおいしい、本当に五番のお茶は最高ね」

 伊藤さんが嬉しそうな顔をしていた。
「そうなんですよ、実は五番目は少しコストを掛けて手間を惜しまず美味しさを追求したのです。但しそのため会社では没候補ですけどね」

 相馬さんも同じように話をする、本当に自信があるんだ。
「そうね、五番目はチョットコスト的に苦しいけど、他は元々どこでも手軽に飲めるがコンセプトなんですよ、家庭用というお徳用も作りますよ」

「でも入れ物を移し替えてでも暖かくしたり冷たくして飲みたい。もちろん私的にはペットボトル無くても良いわよ」

「面白いわね、温めると言うと電子レンジかな、でも根本的な容器に注文が付くなんて驚いたわ」

「お茶を飲むのはお客さんだから、どういう場面で飲むか考えて臨機応変にお客さんが欲するであろう容器や温度への対応が出来ると良いなと思う。そうだCMなんだけど五番なんか歌舞伎俳優の左仲幸太郎さん辺りが良いと思うんだけどな」

 相馬さんが即否定。
「無理無理、左仲幸太郎さんはCMなんかには出ないわよ」

 伊藤さんがなぜか賛同する。
「いや、ちょっと待てよ左仲さんか、良いな」

「ダメよ、大体五番は没候補から抜けていないだから」

 ここで父が出てきた。
「五番のコストは私に任せなさい、業務改革室の出番だからな、工場の作業を改善してコストが合うようにしようじゃないか」

 伊藤金は俄然やる気が出て来たみたいだった。
「あとは左仲さんの調整だけだな・・・・」

「チョット待ちなさいよ、まだそこまでの話は早いわよ、大体販売戦略も何も無いじゃない」

「本当だ、なんかもう爆売れしそうな勢いだった」
 と伊藤さんなんか二人で笑い出した。

「本当にナナさんと居ると面白いわ、なんか本当に商品が売れるんじゃないかと思って、伊藤君は五番のお茶を作るのに1年掛かり切りだったのよ。それだけに思い入れが強くてね、売るための情報を思い着いたらまた手伝ってくれるかな?」

「もちろんです、というか五番のお茶は私は本当に欲しいんです、私の方こそ、また会って頂いてもよろしいですか?」

「良いわよ」

 私はそれから容器のデザインやキャンペーンなんかの話を聞いた。

「うん、売れるかもしれない、ほっこりしたいときはお茶だけでも良いんですけどね、でもやっぱりお茶にはお供がいるのですよ」

「「ナナさん、それはやっぱり和菓子ですか」」
 二人の声が合わさっていた。

「その通りです」

 三人で笑った。

 父は始終微笑んでいた。

 最後に父が「今日はありがとう」ということで家に帰った。

 佐伯と二人は会社に帰ってからも話をしてた。
「佐伯室長、お嬢さんは本当に凄い人だと思います、彼女なら本当に左仲さんを口説き落とせるのではないでしょうか?」

「そうよね、あの和菓子の知識とお茶の知見、本当に左仲さんでも口説き落とせると思うわ」

「「お願いします、お嬢さんをウチの会社に呼んでください」」

「本人がどういうかな?とりあえず聞いてみるよ」

  ◆      ◆

 今日は本当に楽しかったわ。
 5番のお茶は本当に美味しかった、あのお茶を思い出すと『まかぜナッツ』を思い出してしまう。
 そうだ、私の大好きな『まかぜナッツ』がこのままではなくなってしまうのだ。
 グダグダ考えて居ると時間が過ぎて行く。

 そして父が帰って来た。
「ただいま、ナナ今日はご苦労さんだったな」

 夕食の時、思い切って切り出した。

「お父さん、あのね私ね、和菓子屋を始めようと思うの」

 父は最初驚いたような顔をしていたが、やがてにこやかな顔になった。

「そりゃいいな、やって見なさい」

「反対しないの?」

「なんで反対しなければならないんだ?」

「だって、なんの経験も無いのよ」

「嘘ばっかり、ナナは和菓子なら子供の頃からプロだろ」

「そうね、食べるのわね」

「ナナなら、それで十分だな。だってお前がこの数年間加勢さんのところでやって来たことを聞いているからね」

「おかあさん、明日銀行に行って例のお金を下ろしてきてくれ」

「例のお金?」

「ナナが何かを始める時のために貯金しておいたお金が500万円ほどある」

「えっ?」

「子供の頃からナナが何かを始めたいと言った時の軍資金にと貯金しておいたのさ。でもナナはスポーツも音楽も何も始めなかった、唯々和菓子一本槍だった」

「明日お母さんに下ろしてきてもらうから、自由に使いなさい」

 私は言葉が出なかった。

 翌日父が会社に行った時。

「「佐伯室長、お嬢さんはどうでした?」」

 二人が詰め寄るが、佐伯は遠慮しながら一言伝えた。

「なんか和菓子屋を始めるらしい」

「「え~っ?」」
 社内に響き渡る様な二人の声が発せられた。

「いやいやそれも有りだな、左仲さんを口説き落とすのは社員でない方が良いし、それよりなにより左仲さんと和菓子屋の女若店主という組み合わせでCM作れるじゃないか?」

「佐伯室長、我々はお嬢さんの和菓子屋を全面的にバックアップします」

「おいおい・・・」
 少しあきれ顔の佐伯だった。
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