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第1章「ショーの始まり」
第5話「竜人のおもちゃ」
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外に出ると、ジェナは僕を抱えたまま勢いよく跳躍した。空高く飛び、僕の耳元をごうごうと風が流れていく。家伝いにジャンプしていき、景色がどんどん流れていく。パーティーハウスのある高級住宅街の一角から遠ざかり、見える景色もみすぼらしく荒れたものになっていく。ジェナが何の前振りもなく、一際大きくジャンプすると、まるで空を飛んでいるかのように高く空中を上って行く。勢いを失い着地した場所は、家よりも遥かに大きい城壁の上のようだった。特徴的な灰色の壁や床が見え、少し顔を上げれば、王国の街並みが一望できる。
何回担がれても慣れない揺さぶられる感覚に吐き気を催しそうになってると、男の声が僕達に掛かった。
「おおっ! 今日も精が出ますなあっ!」
「よお、そっちもな」
「また、森へ?」
「ああ、こいつの訓練だ訓練」
なにが訓練だ。勇者であるアーサーへ勝てない鬱憤晴らしのくせに。門兵も門兵だ。あっさりこいつら勇者パーティーの表の顔に騙されやがって。
「熱心ですなあ。坊主がうらやましいですよ」
「だとよ、アラン」
「……ええ、有難いです」
ここで僕が門兵に助けを求めたところで、どうせ聞く耳を持たないだろう。飲んだくれていることもあるが、問題にならない範囲でしか表に出していないし、現在進行形で魔王軍と交戦し、救国の英雄になっているジェナ達、勇者パーティーの方を信じるに決まっている。村が魔王軍に襲われ壊滅して生き残った人間の、それも子供の言うことなど、勇者パーティーの発言力には劣る。それに勇者パーティーだって都合のいい僕のことを離しはしない。アーサーは僕が救出された時に見つけたらしい「黒い羽」とやらにご執心なせいで僕のことを近くに置いておきたいようだし、ジェナはサンドバッグに。ナンシーはとにかくいたぶられている僕の反応を見るのがなによりも好きなようだ。
助けられた当初は村を襲った魔王軍を壊滅させてくれたり、身寄りのない自分を拾ってくれて恩を感じたりもした。だからこそ、この五年間色々我慢できていたとも言える。それに僕には他に行く場所もない。ならば、いたぶられこそ衣食住があり、理由もある場所にすがるしかない。
それに、僕の村を壊滅させたという魔王軍も恨んだところでどうせ一人ではかないっこない。ならば、魔王軍に立ち向かうことの出来る勇者パーティーを一部でも補助出来ている方がまだいい。そう、恨みの代行者だ。例え、その勇者パーティーのメンバーがどんなクズ野郎どもだったとしても。
「じゃなー、おっさん」
「おおー」
また急にぐんと身体が引っ張られる。くそっ、せめて合図くらいはしろよ。一旦収まり掛けていた吐き気が戻ってきた。
どいつもこいつも外面だけはそこそこいいだけに、腹が立つ。以前なら彼らの表と裏のギャップにイラっとしても、助けられた身で、しかも魔王軍壊滅のためにも我慢しなければ……、と思っていた。苛立ちを無理やり鎮静するのに、その事実が役立っていた。
でも、今は違う。鎮静の効果が弱まっている。
僕の心の中である疑問が彼ら勇者パーティーに持ち上がり、それが頭の中を染め上げてしまった。一度気になり、引っ掛かると頭から離れない代物。彼らすべての言動が疑惑を指しているようでならなかった。早く疑惑を払拭しなければ、どこかで壊れそうだった。下手に彼らに反抗したところで半殺しがオチだ。それに疑惑が、だたの疑惑にすぎなかった場合、僕はただの踊っている人形になってしまう。それが一番我慢ならない。
だから、今はひたすら耐えなければならない。それが魔王軍の壊滅に繋がると信じて。疑惑が真実だと判明しない限りは。
吐き気を押さえていたせいで、ぐるぐると思考が回る。ジェナはどこかに降り立ったようで、ようやくジャンプするのをやめ、僕は突然地面に転がされた。多分、いつもの森だろう。あちこちを襲う痛みから、呻き声が出る。もう、そんな距離を移動したのか。今日は一体何時間耐えなければならないんだ。
「おらっ、さっさと立て」
「ガハっ」
腹部を思いっきり蹴られ、また転がる。くそっ。僕は身体の痛みを無視し、よろよろと立ち上がった。
「おいおいそんなんで大丈夫かよ、こっちだって殺しちまったら面倒なんだからさー、しっかりしてくれよ」
お前がいたぶらなければいいだろっ、と口から出掛かるが、ぎりっと奥歯を噛んで黙る。
「……いい目、してんじゃん。でも、クソ生意気だな」
睨むようにジェナを見ると、彼女の金色の瞳が僕を捉えていて、身体を拘束されたのかと錯覚するような視線を返される。
「ったくよ、アーサーがさ――」
話している途中でジェナの身体が変貌する。僕は大きな変化でないことを願った。竜へ変化する前の生身でもバカみたいな怪力なのに、一部変化でもすると、それが数段跳ね上がる。一度僕の身体がバラバラになりかけたことだってあった。あの時はナンシーがすぐ側にいた時だったからどうにかなったけど……。
僕の願い空しく、今日のジェナは何かにイライラしているせいで、変化の度合いが大きい。どうせ、またアーサーだろう。本人にぶつけろよ、と何度思ったか分からない。
ジェナの褐色の肌――靴を履いていない足が大きくなる。固い赤い鱗が生え、指の一本一本が太くなり、鉤爪が現れた。
「お前をいたぶるのをほどほどにしろって言うんだよ。国の連中に見つかると厄介だからって――」
今度は腕だ。元々細くも筋肉質な身体のジェナの腕――それが丸太の様に太くなっていく。肌は脚と同じように鱗で覆われ、手が長い爪を生やす。軽装の彼女の見ている肌の部分が鱗の肌に切り替わる。それは、彼女の首を覆い、顔の顎の当たりで止まった。
「でもさあ、やめられるわけねぇよな? お前だって楽しんでんだろ? ああ?」
「は、はい……」
声が震える。まずい。普段は僕が死ぬ可能性があるからと言って、精々足の変化くらいなのに、腕まで変化している。まだ、死にたくはない。勇者パーティーへの疑惑が本当だった場合、ここで死ぬわけにはいかない。絶対に。
「なんだあ? もっとしっかり返事しろっ」
ジェナの身体が消える。僕が見えたのはべこっと凹んだ地面の窪みだけ。それが分かって、魔力でお腹を硬くした瞬間――馬車が身体にぶつかったような衝撃が襲ってきた。当然の様に僕の身体は布切れのように吹っ飛び、また地面を転がる。
「ははっ、上手く使えてんじゃねえかよ、アタシが教えた防御魔法」
立った一発殴られただけなのに、この弱い体は悲鳴を上げ、口からは血を吐き出した。くそくそっ、防いでもこれかよっ。苦しい呼吸とともに出てくる血に喘いでいると、ドスッとジェナの竜の足が僕の身体を地面に押し付ける。
「おらおら、もっとしっかりしろ。まだ始まったばっかりだろ。せかっくこのアタシが防御魔法を教えてやったんだから、気張れ、よっ」
「ぐはっ」
僕の身体を押さえていた足が離れたかと思うと、また石ころのように蹴られる。身体が吹っ飛び、血が飛ぶ。呼吸が荒く、頭が回らなくなりそうだった。
「っはあ、少しは立ち向かったらどうだ? まあ、ボコボコにすんだけどな、あははは」
耳障りな哄笑が、頭の中で暴れ回る。どっちにしろ同じだ。立ち向かおうが、向かわないが、やられる。殴られ、罵倒される。僕はある意味ジェナを信頼していた。彼女はただの暴力馬鹿じゃない。そうでなければ、そもそも門兵とあんな気さくに会話できる仲になっていない。なんだかんだ言って、僕が死ぬのは困るのか本当に殺すようなことはしない。当然痛めつけられるが、ただやられるよりはマシだ。そう、マシなのだ。絶対に。僕はふらふらとした足に力を入れ、ゆっくりと立ち上がる。
「お? いいぞ――こい」
僕は訳の分からない声を上げながら、足に魔法で力を込め、突進する。五年前なら出来た「鳥の足」はジェナたち勇者パーティーの面々の前では出来ない。でも、近いことなら出来る。感覚だけは今も覚えている。
一瞬にして近くなるジェナに、直前で地面を蹴り、体を捻る。身体を空中に浮かせ、しならせた足が彼女のむかつく顔に――
「アラン、お前これだけは出来んのな」
彼女の顔に蹴り込んだ足は、まったく効いた様子はなく、それどころか彼女にあっさりと足を掴まれ、ブランと身体がぶら下がる。
くそっ、やっぱりだめだったか。こうして彼女のに立ち向かうのも何回もあった。蹴りを入れようとして、蹴って、まるで効かないのも。
「でも、なんだぁ、この蹴りは。はあー……」
ぎり、と足を掴む手が強まった。ジェナの竜になった爪が喰い込み、足に刺さる。
「つまんねえ蹴りしてんじゃねえよ」
僕の身体が物のように彼女に振り回された。僕は何を見ているのか分からなくなる。ただ、青い空が見え、何度も何度も頭が強い衝撃で地面と殴打しているのは分かった。呼吸ができない。
「おらよっ」
身体が勢いよく吹っ飛ぶ。背中を何かに強くぶつけ、ようやく止まった。地面にずるずると言うことの利かなくなった身体が落ちていく。かろうじて動く後ろを見ると、木が途中から折れていた。僕はその根元にいた。
何度も思い知らされる。強すぎる。それなのに――
「アラン、いつまでそうしてんだ。もう一回だ」
ジェナは獰猛な笑みを見せて、圧倒的に弱い僕に、自身に挑むように言ってきた。
何回担がれても慣れない揺さぶられる感覚に吐き気を催しそうになってると、男の声が僕達に掛かった。
「おおっ! 今日も精が出ますなあっ!」
「よお、そっちもな」
「また、森へ?」
「ああ、こいつの訓練だ訓練」
なにが訓練だ。勇者であるアーサーへ勝てない鬱憤晴らしのくせに。門兵も門兵だ。あっさりこいつら勇者パーティーの表の顔に騙されやがって。
「熱心ですなあ。坊主がうらやましいですよ」
「だとよ、アラン」
「……ええ、有難いです」
ここで僕が門兵に助けを求めたところで、どうせ聞く耳を持たないだろう。飲んだくれていることもあるが、問題にならない範囲でしか表に出していないし、現在進行形で魔王軍と交戦し、救国の英雄になっているジェナ達、勇者パーティーの方を信じるに決まっている。村が魔王軍に襲われ壊滅して生き残った人間の、それも子供の言うことなど、勇者パーティーの発言力には劣る。それに勇者パーティーだって都合のいい僕のことを離しはしない。アーサーは僕が救出された時に見つけたらしい「黒い羽」とやらにご執心なせいで僕のことを近くに置いておきたいようだし、ジェナはサンドバッグに。ナンシーはとにかくいたぶられている僕の反応を見るのがなによりも好きなようだ。
助けられた当初は村を襲った魔王軍を壊滅させてくれたり、身寄りのない自分を拾ってくれて恩を感じたりもした。だからこそ、この五年間色々我慢できていたとも言える。それに僕には他に行く場所もない。ならば、いたぶられこそ衣食住があり、理由もある場所にすがるしかない。
それに、僕の村を壊滅させたという魔王軍も恨んだところでどうせ一人ではかないっこない。ならば、魔王軍に立ち向かうことの出来る勇者パーティーを一部でも補助出来ている方がまだいい。そう、恨みの代行者だ。例え、その勇者パーティーのメンバーがどんなクズ野郎どもだったとしても。
「じゃなー、おっさん」
「おおー」
また急にぐんと身体が引っ張られる。くそっ、せめて合図くらいはしろよ。一旦収まり掛けていた吐き気が戻ってきた。
どいつもこいつも外面だけはそこそこいいだけに、腹が立つ。以前なら彼らの表と裏のギャップにイラっとしても、助けられた身で、しかも魔王軍壊滅のためにも我慢しなければ……、と思っていた。苛立ちを無理やり鎮静するのに、その事実が役立っていた。
でも、今は違う。鎮静の効果が弱まっている。
僕の心の中である疑問が彼ら勇者パーティーに持ち上がり、それが頭の中を染め上げてしまった。一度気になり、引っ掛かると頭から離れない代物。彼らすべての言動が疑惑を指しているようでならなかった。早く疑惑を払拭しなければ、どこかで壊れそうだった。下手に彼らに反抗したところで半殺しがオチだ。それに疑惑が、だたの疑惑にすぎなかった場合、僕はただの踊っている人形になってしまう。それが一番我慢ならない。
だから、今はひたすら耐えなければならない。それが魔王軍の壊滅に繋がると信じて。疑惑が真実だと判明しない限りは。
吐き気を押さえていたせいで、ぐるぐると思考が回る。ジェナはどこかに降り立ったようで、ようやくジャンプするのをやめ、僕は突然地面に転がされた。多分、いつもの森だろう。あちこちを襲う痛みから、呻き声が出る。もう、そんな距離を移動したのか。今日は一体何時間耐えなければならないんだ。
「おらっ、さっさと立て」
「ガハっ」
腹部を思いっきり蹴られ、また転がる。くそっ。僕は身体の痛みを無視し、よろよろと立ち上がった。
「おいおいそんなんで大丈夫かよ、こっちだって殺しちまったら面倒なんだからさー、しっかりしてくれよ」
お前がいたぶらなければいいだろっ、と口から出掛かるが、ぎりっと奥歯を噛んで黙る。
「……いい目、してんじゃん。でも、クソ生意気だな」
睨むようにジェナを見ると、彼女の金色の瞳が僕を捉えていて、身体を拘束されたのかと錯覚するような視線を返される。
「ったくよ、アーサーがさ――」
話している途中でジェナの身体が変貌する。僕は大きな変化でないことを願った。竜へ変化する前の生身でもバカみたいな怪力なのに、一部変化でもすると、それが数段跳ね上がる。一度僕の身体がバラバラになりかけたことだってあった。あの時はナンシーがすぐ側にいた時だったからどうにかなったけど……。
僕の願い空しく、今日のジェナは何かにイライラしているせいで、変化の度合いが大きい。どうせ、またアーサーだろう。本人にぶつけろよ、と何度思ったか分からない。
ジェナの褐色の肌――靴を履いていない足が大きくなる。固い赤い鱗が生え、指の一本一本が太くなり、鉤爪が現れた。
「お前をいたぶるのをほどほどにしろって言うんだよ。国の連中に見つかると厄介だからって――」
今度は腕だ。元々細くも筋肉質な身体のジェナの腕――それが丸太の様に太くなっていく。肌は脚と同じように鱗で覆われ、手が長い爪を生やす。軽装の彼女の見ている肌の部分が鱗の肌に切り替わる。それは、彼女の首を覆い、顔の顎の当たりで止まった。
「でもさあ、やめられるわけねぇよな? お前だって楽しんでんだろ? ああ?」
「は、はい……」
声が震える。まずい。普段は僕が死ぬ可能性があるからと言って、精々足の変化くらいなのに、腕まで変化している。まだ、死にたくはない。勇者パーティーへの疑惑が本当だった場合、ここで死ぬわけにはいかない。絶対に。
「なんだあ? もっとしっかり返事しろっ」
ジェナの身体が消える。僕が見えたのはべこっと凹んだ地面の窪みだけ。それが分かって、魔力でお腹を硬くした瞬間――馬車が身体にぶつかったような衝撃が襲ってきた。当然の様に僕の身体は布切れのように吹っ飛び、また地面を転がる。
「ははっ、上手く使えてんじゃねえかよ、アタシが教えた防御魔法」
立った一発殴られただけなのに、この弱い体は悲鳴を上げ、口からは血を吐き出した。くそくそっ、防いでもこれかよっ。苦しい呼吸とともに出てくる血に喘いでいると、ドスッとジェナの竜の足が僕の身体を地面に押し付ける。
「おらおら、もっとしっかりしろ。まだ始まったばっかりだろ。せかっくこのアタシが防御魔法を教えてやったんだから、気張れ、よっ」
「ぐはっ」
僕の身体を押さえていた足が離れたかと思うと、また石ころのように蹴られる。身体が吹っ飛び、血が飛ぶ。呼吸が荒く、頭が回らなくなりそうだった。
「っはあ、少しは立ち向かったらどうだ? まあ、ボコボコにすんだけどな、あははは」
耳障りな哄笑が、頭の中で暴れ回る。どっちにしろ同じだ。立ち向かおうが、向かわないが、やられる。殴られ、罵倒される。僕はある意味ジェナを信頼していた。彼女はただの暴力馬鹿じゃない。そうでなければ、そもそも門兵とあんな気さくに会話できる仲になっていない。なんだかんだ言って、僕が死ぬのは困るのか本当に殺すようなことはしない。当然痛めつけられるが、ただやられるよりはマシだ。そう、マシなのだ。絶対に。僕はふらふらとした足に力を入れ、ゆっくりと立ち上がる。
「お? いいぞ――こい」
僕は訳の分からない声を上げながら、足に魔法で力を込め、突進する。五年前なら出来た「鳥の足」はジェナたち勇者パーティーの面々の前では出来ない。でも、近いことなら出来る。感覚だけは今も覚えている。
一瞬にして近くなるジェナに、直前で地面を蹴り、体を捻る。身体を空中に浮かせ、しならせた足が彼女のむかつく顔に――
「アラン、お前これだけは出来んのな」
彼女の顔に蹴り込んだ足は、まったく効いた様子はなく、それどころか彼女にあっさりと足を掴まれ、ブランと身体がぶら下がる。
くそっ、やっぱりだめだったか。こうして彼女のに立ち向かうのも何回もあった。蹴りを入れようとして、蹴って、まるで効かないのも。
「でも、なんだぁ、この蹴りは。はあー……」
ぎり、と足を掴む手が強まった。ジェナの竜になった爪が喰い込み、足に刺さる。
「つまんねえ蹴りしてんじゃねえよ」
僕の身体が物のように彼女に振り回された。僕は何を見ているのか分からなくなる。ただ、青い空が見え、何度も何度も頭が強い衝撃で地面と殴打しているのは分かった。呼吸ができない。
「おらよっ」
身体が勢いよく吹っ飛ぶ。背中を何かに強くぶつけ、ようやく止まった。地面にずるずると言うことの利かなくなった身体が落ちていく。かろうじて動く後ろを見ると、木が途中から折れていた。僕はその根元にいた。
何度も思い知らされる。強すぎる。それなのに――
「アラン、いつまでそうしてんだ。もう一回だ」
ジェナは獰猛な笑みを見せて、圧倒的に弱い僕に、自身に挑むように言ってきた。
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