16 / 31
第16話 昨日の敵は今日の友
しおりを挟む
トーナメントは中止となった。
観客席と観客はドーマの張った防御壁のおかげで無事であったが、肝心の闘技場が爆発の跡で見るも無残な形状となり、とてもじゃないが、第2試合以降続行することができなくなってしまった為である。
だが、トーナメントにも関わらずたった一試合しか見ることの叶わなかった観客には不満はなかった。
弱者とさえ思っていた若き魔法使いの想像を越える文字通りの魔法そのものの技術、そしてそれをことごとく打ち破って見せた若き武道家の実力・・・
仮にあと何試合あろうとも決して越えることの出来ない内容を見せられた観客はそれぞれ満足げに帰路についた。
ランドリクとトバイは爆発のダメージで全身に打撲と火傷を負っており、すぐさま病院に運ばれた。
ランドリクとトバイ・・・
同じ病室となった二人は丸一日意識を失っていた。
意識を取り戻し、同室であると知った二人はどちらからと言うこともなく、一言二言と言葉を交わし、やがては意気投合することとなった。
ドーマはランドリクに命の別状はないと知ってからは、フレイに世話を任せており、トバイには師匠であるギュスターが定期的に様子を見にきていた。
フレイが買い出しに出かけ、病室にはランドリクとトバイの二人だけになった時、トバイがランドリクに声をかけた。
「ところで、お前の親友が俺を見る目が厳しいと言うか冷たいと言うか・・・
何なんだあれは?」
「うーん・・・
トバイは俺のライバルみたいなもんだから、フレイにとってもライバルみたいになってるのかもしれないね。」
ライバル・・・
その言葉を聞いた途端、トバイの表情が険しくなった。
「何・・・
お前が俺のライバルだと・・・?」
「えっ・・・」
急変したトバイの態度にランドリクが戸惑った次の瞬間、
「お前なら許す!」
ウインクを添えたとびきりの笑顔でトバイは親指を立てた。
「もう、びっくりさせないでよ!」
「ははは!
びっくりしたか!」
ちょうどその時、フレイが帰ってきて、二人がじゃれ合っているのをムッとした表情で眺めていた。
「二人ともすっかり良くなったようだな。」
ドーマとギュスターが病室に入ってきた。
「ギュスターさん。
武道家って生真面目なイメージだったんですけどトバイは何であんなのなんですか?」
「あんなのってひでえ言い方だな。」
「武道家と言っても色々な人がいるからね。
トバイは元々お調子者な性格さ。
それを言うなら私は元々魔法使いにはネクラなイメージを持っていたけど、コイツみたいなのものいるしね。」
そう言ってギュスターは親指でドーマを差した。
「そういうこった。
固定観念で人を判断すると見誤ってしまうこともあるぞ。
覚えておけ。」
「珍しく良いこと言うじゃないか。
ドーマ。」
「ふふん、
俺は師匠業は割合真面目にやってるんだよ。
なあ、我が弟子達よ。」
「はい。」
「また調子にのって・・・」
「ん?何か言ったかフレイ?」
「いえ。」
「さあ、ランドもすっかり良くなったようだし、明日、ここを出発するぞ。」
「次はどこに行くんですか。」
「南だ。
フィスティニアの南の地方に向かう。
出発の準備をしておけ。」
次の日の朝、病院の入り口にてランドリク一行が今から南に向けて出発しようとしていた時、ギュスターとトバイがやってきた。
「おはようございます。」
「おはよう。」
「おう。」
「ギュスターさんとトバイ。
見送りに来てくれたんですか?」
「私はね。」
「へへへ。」
ギュスターはランドリク一行の向かい側にいたが、トバイはランドリクの横に移動してきた。
「?」
「よし、いくぞ!」
トバイがランドリク達に声をかけた。
「えっ?
なんでお前が言うの?
見送りに来たんじゃ・・・」
「俺も一緒に行くのさ!
お前達とな!」
「ええっ!」
「まあ、そういうこった。」
「ギュスターさんは知っているんですか?」
「ああ、私からドーマに頼んだんだ。」
ドーマがギュスターと見合わせて笑った。
「トバイは生まれてこのかたフィスティニアを出たことがない。
そこでドーマに頼んでトバイも一緒に旅に連れて行ってもらうことにしたんだ。」
「そう。
師匠がこれも修業の一環だって言ってな。
そうと決まれば出発だ。
南の地方はささっと回って早くバトリアに行こうぜ!」
トバイが一行の先頭に立った。
その時、上空より一羽の鳩が飛来し、ドーマの肩に止まった。
「伝書鳩か・・・
何々・・・」
ドーマは伝書鳩の足につけられていた筒より書簡を取り出し読み始めた。
その内容は
大至急、ウィズニア王国王立天文台に来られたし。
との内容であった。
観客席と観客はドーマの張った防御壁のおかげで無事であったが、肝心の闘技場が爆発の跡で見るも無残な形状となり、とてもじゃないが、第2試合以降続行することができなくなってしまった為である。
だが、トーナメントにも関わらずたった一試合しか見ることの叶わなかった観客には不満はなかった。
弱者とさえ思っていた若き魔法使いの想像を越える文字通りの魔法そのものの技術、そしてそれをことごとく打ち破って見せた若き武道家の実力・・・
仮にあと何試合あろうとも決して越えることの出来ない内容を見せられた観客はそれぞれ満足げに帰路についた。
ランドリクとトバイは爆発のダメージで全身に打撲と火傷を負っており、すぐさま病院に運ばれた。
ランドリクとトバイ・・・
同じ病室となった二人は丸一日意識を失っていた。
意識を取り戻し、同室であると知った二人はどちらからと言うこともなく、一言二言と言葉を交わし、やがては意気投合することとなった。
ドーマはランドリクに命の別状はないと知ってからは、フレイに世話を任せており、トバイには師匠であるギュスターが定期的に様子を見にきていた。
フレイが買い出しに出かけ、病室にはランドリクとトバイの二人だけになった時、トバイがランドリクに声をかけた。
「ところで、お前の親友が俺を見る目が厳しいと言うか冷たいと言うか・・・
何なんだあれは?」
「うーん・・・
トバイは俺のライバルみたいなもんだから、フレイにとってもライバルみたいになってるのかもしれないね。」
ライバル・・・
その言葉を聞いた途端、トバイの表情が険しくなった。
「何・・・
お前が俺のライバルだと・・・?」
「えっ・・・」
急変したトバイの態度にランドリクが戸惑った次の瞬間、
「お前なら許す!」
ウインクを添えたとびきりの笑顔でトバイは親指を立てた。
「もう、びっくりさせないでよ!」
「ははは!
びっくりしたか!」
ちょうどその時、フレイが帰ってきて、二人がじゃれ合っているのをムッとした表情で眺めていた。
「二人ともすっかり良くなったようだな。」
ドーマとギュスターが病室に入ってきた。
「ギュスターさん。
武道家って生真面目なイメージだったんですけどトバイは何であんなのなんですか?」
「あんなのってひでえ言い方だな。」
「武道家と言っても色々な人がいるからね。
トバイは元々お調子者な性格さ。
それを言うなら私は元々魔法使いにはネクラなイメージを持っていたけど、コイツみたいなのものいるしね。」
そう言ってギュスターは親指でドーマを差した。
「そういうこった。
固定観念で人を判断すると見誤ってしまうこともあるぞ。
覚えておけ。」
「珍しく良いこと言うじゃないか。
ドーマ。」
「ふふん、
俺は師匠業は割合真面目にやってるんだよ。
なあ、我が弟子達よ。」
「はい。」
「また調子にのって・・・」
「ん?何か言ったかフレイ?」
「いえ。」
「さあ、ランドもすっかり良くなったようだし、明日、ここを出発するぞ。」
「次はどこに行くんですか。」
「南だ。
フィスティニアの南の地方に向かう。
出発の準備をしておけ。」
次の日の朝、病院の入り口にてランドリク一行が今から南に向けて出発しようとしていた時、ギュスターとトバイがやってきた。
「おはようございます。」
「おはよう。」
「おう。」
「ギュスターさんとトバイ。
見送りに来てくれたんですか?」
「私はね。」
「へへへ。」
ギュスターはランドリク一行の向かい側にいたが、トバイはランドリクの横に移動してきた。
「?」
「よし、いくぞ!」
トバイがランドリク達に声をかけた。
「えっ?
なんでお前が言うの?
見送りに来たんじゃ・・・」
「俺も一緒に行くのさ!
お前達とな!」
「ええっ!」
「まあ、そういうこった。」
「ギュスターさんは知っているんですか?」
「ああ、私からドーマに頼んだんだ。」
ドーマがギュスターと見合わせて笑った。
「トバイは生まれてこのかたフィスティニアを出たことがない。
そこでドーマに頼んでトバイも一緒に旅に連れて行ってもらうことにしたんだ。」
「そう。
師匠がこれも修業の一環だって言ってな。
そうと決まれば出発だ。
南の地方はささっと回って早くバトリアに行こうぜ!」
トバイが一行の先頭に立った。
その時、上空より一羽の鳩が飛来し、ドーマの肩に止まった。
「伝書鳩か・・・
何々・・・」
ドーマは伝書鳩の足につけられていた筒より書簡を取り出し読み始めた。
その内容は
大至急、ウィズニア王国王立天文台に来られたし。
との内容であった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。
みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ!
そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。
「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」
そう言って俺は彼女達と別れた。
しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる