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13話 学園の裏山にて
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次の日の放課後、俺は授業中に学校の外壁に校長のハゲ頭の落書きをしてそのまま逃げだして戻ってこないマシロを探しに来た。アイツ、ここに情報収集のために潜入しに来たの忘れてないよな? 何でこんな目立つようなことするの?
学園の敷地内の裏山には地球では見ないような木々が生い茂っていた。こういうのを見ると、やはりここは地球ではない異世界なのだと嫌でも認識させられる。早く元の世界に帰りたい。
唐突に耳に虫の飛ぶような不快な音が聞こえてくる。まさかと思い上を見上げると、そこにはカマキリの人型昆虫が空を飛んでいた。人型カマキリはこちらに気が付くと耳障りな鳴き声を上げながら俺に襲い掛かってきた。
「うわあああ!!」
「ギシャアアァアッ!!」
しかし、人型カマキリは学園の敷地内全体に張り巡らされている結界に阻まれ、渋々立ち去って行った。ひー。ガーデニア先生から授業で人型昆虫との被害を避けるために強力な結界があるってことを習っていたけど、それでも怖いものは怖い。
人型カマキリに襲われかけたこともあり、ビビり倒しながらマシロを探していると滝の音が聞こえてくる。
へー、こんなところに滝なんてあるんだ……。そう思い、滝を眺めていると人の影が見える。よく見るとその人は入学式で俺たちを助けてくれたツルギさんだった。
「え!?」
「……?」
ツルギさんは一瞬、不思議そうな顔をしたがすぐに集中力を研ぎ澄ませ、滝行を続ける。
滝行は大量の水に打たれるわけだから、普通は服を着ないか、行衣というものを着てやるものなのだが、ツルギさんはサムライが着るような着物を着たまま滝に打たれている。着物ってたしか、洗うの難しいからクリーニングに出さなきゃいけないものでは……? 近くにタオルとかないのかと思い、探しているとツルギさんが滝行を終え、滝から出てビッショビショのままそのまま立ち去ろうとする。
「ちょっと待ってください!」
「む? 君は確か……。」
ツルギさんは無表情でこちらを見てくる。この無表情、なんかマシロに似てんだよなあ。
「あの、ツルギさん? 何をしているんです?」
「滝行で身を清めていた。」
「あ、はい。それは分かるんですけど……。何で着物を着たままなんです? せめて脱いでやりましょうよ。着物って一度汚れると洗うの大変なんですよ。」
「そうだったのか……。俺は着物が着れないからいつも滝に打たれ、身を清め、修行した後は走って乾かしていたのだが、それは盲点だった。」
「風邪ひきますよ?」
この人、着物着てんのに着付けできねえのかよ。あと、服の乾かし方脳筋かよ。この人マシロと同じやり方してるじゃねえか。
いや、着物着るのって一人だと難しいけどさ……。着物を普段着にしてるんだったら着付けできるもんだろ。それとも、この人には着付けしてくれる人いるから自分ではできないのかな……。
「大丈夫だ。俺はこの方法で風邪をひいたことはない。」
ツルギさんは無表情でキリッと答えた。この人、もしかしてバカなのか……? 俺があまり考えたくない可能性について考えていると、どこかから火の匂いがしてくる。匂いの元を辿ってそこに向かうとマシロがとてつもなくグロい魚を焼いていた。
「お前、こんなところで何やってんの?」
「ご飯焼いてるでやんす。」
マシロは俺を向いてキリッとした声で答えた。分厚い眼鏡のせいで表情は見えないが、マシロの事なので無表情だったと思う。
「……君は。」
「あ、そうだ。ツルギさん。ついでに着物脱いで乾かしてください。俺、帯の結び方は簡単なやつだったらできるんで、頼ってください。」
「む、それはありがたい。頼む。」
ツルギさんはマシロをじっと見ながら、着物を脱ごうとしている。マシロに何かあるのか? ツルギさんが着物の帯をほどけていないので、俺はそれを手伝う。というかこの人腹筋バッキバキじゃねえか。俺の腹と大違いだよ。
ツルギさんの着物を乾かす準備をしているとマシロがとてつもなくグロい魚を手に取って火加減を確かめていた。
「え、お前それ食うつもりなの?」
「もちろんでやんす!」
俺はマシロからその魚を奪う。
「あー! 茂松兄ちゃん何するでやんすかー!」
「いや、これ毒のある魚だって学校の図書館で見たんだよ! 食うな!」
「これ捕るのにすごく苦労したのにひどいでやんす!」
「毒食って死ぬよりはいいだろ!」
マシロはピョンピョン跳ねながら俺から魚を奪い取ろうとする。コイツの運動神経なら簡単に奪い取られるはずなのに、それをしない辺り、一応正体を隠そうとはしているのだろう。だったらそんな目立つようなことはするなと言いたいが、ツルギさんがいるので口をギュッと閉じる。
「む。意外とイケる。」
「何で食ってるんですかアンタ!」
俺たちが争っている隙にツルギさんはとてつもなくグロい魚を食べていた。この人話聞いてたの!?
「食わないでくださいよ! 毒あるって言いましたよね!?」
「そうか? 美味いぞ。」
「いやあ、照れるでやんす。」
マシロは照れながら、俺から隙をついて魚を奪い取る。こ、コイツ……!
「この魚はどこで捕れたんだ?」
「そこの川で捕れたでやんす!」
「そうなのか。今までそこの川の滝行をしていたが、こんな魚は見たことがないな。」
なんか仲良くなってる!
=====
『聖ミロルバ魔術学校』風紀委員室にて
「くっ! いったい誰がこんなものを!」
風紀委員である馬鹿真面目なナタリエル・シャフリエラは怒りながら机に拳を振り落とした。その机の上には一冊の禁書が置いてあった。その本の表紙はあまりにも危険なため、表示が透けないよう黒いカバーがかけられている。
「おのれ、この私にここまでの屈辱を与えるとは……!」
「まあまあ、落ち着いてくださいな。」
ナタリエルをなだめるように声をかけたのは、人を誑し込むのが得意な美形の生徒会長であるエリオット・レプキナだった。
「しかし、生徒会長! あの『聖ミロルバ魔術学校』にこのようなふざけた真似をする不届き者がいるのですよ!」
「落ち着いて下さい。これはチャンスですよ。」
エリオットはナタリエルを宥めつつ、妖しく微笑んだ。
学園の敷地内の裏山には地球では見ないような木々が生い茂っていた。こういうのを見ると、やはりここは地球ではない異世界なのだと嫌でも認識させられる。早く元の世界に帰りたい。
唐突に耳に虫の飛ぶような不快な音が聞こえてくる。まさかと思い上を見上げると、そこにはカマキリの人型昆虫が空を飛んでいた。人型カマキリはこちらに気が付くと耳障りな鳴き声を上げながら俺に襲い掛かってきた。
「うわあああ!!」
「ギシャアアァアッ!!」
しかし、人型カマキリは学園の敷地内全体に張り巡らされている結界に阻まれ、渋々立ち去って行った。ひー。ガーデニア先生から授業で人型昆虫との被害を避けるために強力な結界があるってことを習っていたけど、それでも怖いものは怖い。
人型カマキリに襲われかけたこともあり、ビビり倒しながらマシロを探していると滝の音が聞こえてくる。
へー、こんなところに滝なんてあるんだ……。そう思い、滝を眺めていると人の影が見える。よく見るとその人は入学式で俺たちを助けてくれたツルギさんだった。
「え!?」
「……?」
ツルギさんは一瞬、不思議そうな顔をしたがすぐに集中力を研ぎ澄ませ、滝行を続ける。
滝行は大量の水に打たれるわけだから、普通は服を着ないか、行衣というものを着てやるものなのだが、ツルギさんはサムライが着るような着物を着たまま滝に打たれている。着物ってたしか、洗うの難しいからクリーニングに出さなきゃいけないものでは……? 近くにタオルとかないのかと思い、探しているとツルギさんが滝行を終え、滝から出てビッショビショのままそのまま立ち去ろうとする。
「ちょっと待ってください!」
「む? 君は確か……。」
ツルギさんは無表情でこちらを見てくる。この無表情、なんかマシロに似てんだよなあ。
「あの、ツルギさん? 何をしているんです?」
「滝行で身を清めていた。」
「あ、はい。それは分かるんですけど……。何で着物を着たままなんです? せめて脱いでやりましょうよ。着物って一度汚れると洗うの大変なんですよ。」
「そうだったのか……。俺は着物が着れないからいつも滝に打たれ、身を清め、修行した後は走って乾かしていたのだが、それは盲点だった。」
「風邪ひきますよ?」
この人、着物着てんのに着付けできねえのかよ。あと、服の乾かし方脳筋かよ。この人マシロと同じやり方してるじゃねえか。
いや、着物着るのって一人だと難しいけどさ……。着物を普段着にしてるんだったら着付けできるもんだろ。それとも、この人には着付けしてくれる人いるから自分ではできないのかな……。
「大丈夫だ。俺はこの方法で風邪をひいたことはない。」
ツルギさんは無表情でキリッと答えた。この人、もしかしてバカなのか……? 俺があまり考えたくない可能性について考えていると、どこかから火の匂いがしてくる。匂いの元を辿ってそこに向かうとマシロがとてつもなくグロい魚を焼いていた。
「お前、こんなところで何やってんの?」
「ご飯焼いてるでやんす。」
マシロは俺を向いてキリッとした声で答えた。分厚い眼鏡のせいで表情は見えないが、マシロの事なので無表情だったと思う。
「……君は。」
「あ、そうだ。ツルギさん。ついでに着物脱いで乾かしてください。俺、帯の結び方は簡単なやつだったらできるんで、頼ってください。」
「む、それはありがたい。頼む。」
ツルギさんはマシロをじっと見ながら、着物を脱ごうとしている。マシロに何かあるのか? ツルギさんが着物の帯をほどけていないので、俺はそれを手伝う。というかこの人腹筋バッキバキじゃねえか。俺の腹と大違いだよ。
ツルギさんの着物を乾かす準備をしているとマシロがとてつもなくグロい魚を手に取って火加減を確かめていた。
「え、お前それ食うつもりなの?」
「もちろんでやんす!」
俺はマシロからその魚を奪う。
「あー! 茂松兄ちゃん何するでやんすかー!」
「いや、これ毒のある魚だって学校の図書館で見たんだよ! 食うな!」
「これ捕るのにすごく苦労したのにひどいでやんす!」
「毒食って死ぬよりはいいだろ!」
マシロはピョンピョン跳ねながら俺から魚を奪い取ろうとする。コイツの運動神経なら簡単に奪い取られるはずなのに、それをしない辺り、一応正体を隠そうとはしているのだろう。だったらそんな目立つようなことはするなと言いたいが、ツルギさんがいるので口をギュッと閉じる。
「む。意外とイケる。」
「何で食ってるんですかアンタ!」
俺たちが争っている隙にツルギさんはとてつもなくグロい魚を食べていた。この人話聞いてたの!?
「食わないでくださいよ! 毒あるって言いましたよね!?」
「そうか? 美味いぞ。」
「いやあ、照れるでやんす。」
マシロは照れながら、俺から隙をついて魚を奪い取る。こ、コイツ……!
「この魚はどこで捕れたんだ?」
「そこの川で捕れたでやんす!」
「そうなのか。今までそこの川の滝行をしていたが、こんな魚は見たことがないな。」
なんか仲良くなってる!
=====
『聖ミロルバ魔術学校』風紀委員室にて
「くっ! いったい誰がこんなものを!」
風紀委員である馬鹿真面目なナタリエル・シャフリエラは怒りながら机に拳を振り落とした。その机の上には一冊の禁書が置いてあった。その本の表紙はあまりにも危険なため、表示が透けないよう黒いカバーがかけられている。
「おのれ、この私にここまでの屈辱を与えるとは……!」
「まあまあ、落ち着いてくださいな。」
ナタリエルをなだめるように声をかけたのは、人を誑し込むのが得意な美形の生徒会長であるエリオット・レプキナだった。
「しかし、生徒会長! あの『聖ミロルバ魔術学校』にこのようなふざけた真似をする不届き者がいるのですよ!」
「落ち着いて下さい。これはチャンスですよ。」
エリオットはナタリエルを宥めつつ、妖しく微笑んだ。
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