続・あなたの傍に……

麻沙綺

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入学式準備

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 入学式前日。
 私は、朝から制服に着替えて、身支度を整えていた。

「あれ、詩織。学校に行くのか?」
 そんな私に護が、聞いてきた。
「うん。明日の準備しないといけないからね」
「オレを一人にしてか?」
 護が、背中から抱きついてくる。
「仕方ないでしょ。これでも私は、生徒会長なんだから…。それに、他の新三年生が出てきてるのに私が行かないのはまずいでしょ。」
「そっか。じゃあ、終わったら電話して。迎えに行くから」
 不貞腐れながらも、言ってくる彼。
「わかった」
 私は、そう返事をして家を出た。


 学校に向かう途中で。
「おはよう、詩織」
 って、里沙に背中を叩かれる。
「あっ、おはよう」
「新生活はどう?」
 伺うように聞いてくる里沙(友達で、同棲の事を知ってる唯一の人だ)。
「うん。色々大変だけど、二人だから楽しいよ」
 笑みを浮かべながらそう答える私。
「そっか。あたしも、優基さんと毎日欠かさず、連絡取ってるんだ」
 里沙が、嬉しそうに言う。
「優兄が、そんなにまめだったとは、思わなかったよ」
 あの面倒臭がり屋の優兄がねぇ……。
「あたしも、そう思ってた。けど、時間を見つけて、メールしてくれたり、電話してくれるんだ」
 って嬉しそうな顔で言う里沙。
「それって、確実に惚気だよね。」
 ニヤニヤしながら言えば。
「うん。詩織よりはましでしょ? 詩織は、一緒に住んでるんだから」
 って逆に返され。
「それを言われたら、何て言えばいいんだか……。」
 私は、照れながら答える。
「…で、今日は、何するの?」
 唐突に話を変える里沙に。
「うーんとね。取り合えず、男子は体育館で式の準備をしてもらって、女子はコサージュを造ってもらうつもり。終わり次第解散ってことでどう?」
 昨日から考えてた振り分けを口にする。
「そうだね。そういえば、お祝いの言葉、もう考えたの?」
「それなんだけど、なかなかいい言葉が浮かばなくてさ。困ってるんだ」
 って、正直に言う。
 折角入って来たんだから高校三年間を楽しんで貰いたい気持ちと勉強面も頑張って欲しいっていうのが伝わる言葉を探してるんだよね。
「そっか。あたしも一緒に考えてあげようか?」
 思わぬ言葉に。
「助かります」
 私は、素直に里沙に言う。
「珍しいね。詩織が素直に言うなんて…」
「そうかな?」
「今までならあり得無かったよ」
 里沙の言葉に過去を振り返ればそうかもしれないと思い当たる。
 でも、今回は本当に手一杯なわけで…。
 自分の事で、手一杯だったから、考えてる余裕なんか無かったんだよね。
「詩織。じゃあ、あたし先に教室に行くね」
「うん」
 私は、里沙と別れて、生徒会室に向かった。


 生徒会室で、コサージュ用のリボンを確認。
 白と赤のリボンとピンを個数分(プラスアルファ)を確認すると、それらを各クラスに運びだす。

 私は、三年生の教室の階まで行き、教室に入ると。
「ごめんね。また、皆に協力してもらう事になって。作り方は、わかるよね。決められた数作り終わったら、帰っていいからね」
  そう言葉を告げる。
「はい。水沢さんも頑張ってね」
「ありがとう。後、リボンが足りなかったら、C組にあるから、取りに来てね」
 私は、それだけ告げると、他のクラスに行き同じ事を繰り返した。
 それが終わると、自分の教室に入り里沙に。
「里沙。私の分も避けといて。それから、今から体育館の方を見てくるから、お願いできる?」
「わかった」
 里沙の返事を聞いて、体育館へ急ぐ。


 体育館の入り口を潜ってガタガタと騒がしい中。
「皆、おはよう。今日は、手伝ってくれてありがとうね。会場の準備が終わったら、帰っていいからね」
 大声で言う。
「水沢の頼みじゃ、聞かないわけないだろ」
 って、返事が返ってきた。
「ありがとう。本当に助かります」
 私は、笑顔で返す。
「それじゃあ、後ヨロシクね。凌也、拓人君、佐久間君」
「「「わかった」」」
 私は三人の返事を聞いて、体育館を後にし、自分の教室に向かった。


「里沙。どう?」
「うん、順調だよ。けど、リボンが足りないかも……。」
 里沙の返答に悩まず。
「そう。じゃあ、買ってくるよ。どれくらいいるかな?」
  直ぐに答える。
「白が二本と赤が三本かな」
 里沙もリボンを見つつ本数を言ってくれる。
「わかった。行ってくる」
 私は、急いで、学校を出て商店街まで走る。


 一軒の手芸店に入って、目的の物を買って、領収書を書いてもらい、学校に戻った。


 はぁはぁ…。
 息を整えてから、教室に入る。

「ただいま」
「お帰り。早かったね」
「うん。走ってきたからね。…で、どう?」
「そうだね。皆が手伝ってくれたお陰で、残り数十個ってとこかな」
 里沙が、冷静に言う。
「詩織ちゃん。リボンある?」
 柚樹ちゃんが教室に駆け込んで来た。
「あるよ。幾つ要るの?」
「後二本かな」
「はい」
 私は、柚樹ちゃんにリボンを渡す。
「そっちは、どう?」
 里沙が柚樹ちゃんに聞く。
「うんっとね。後十個かな」
 少し考えてから答える柚樹ちゃん。
「早いね。よろしくね」
「うん。詩織ちゃんも無理しないでね」
「ありがとう」
 柚樹ちゃんが、教室を出て行くと、私も造り始めた。


 一人、また一人と帰りだした。
 自分の分を作り終えてから。
「里沙、ちょっといい?」
 里沙に話し掛ける。
「何、詩織?」
 どうしたんだって顔をして見てくる里沙に。
「私、体育館の最終チェックしてくるから、皆が作り終わったら、コサージュ生徒会室に運んでおいてくれないかな」
 私の言葉に納得し。
「いいよ。それぐらいなら、三人でやっておくよ」
 三人とは生徒会メンバー女子(柚樹ちゃん・忍ちゃん・里沙)だ。
「ありがとう」
 私はそれだけ告げて、体育館に再び向かう。


 体育館では、舞台の上で看板を掲げていた。
 入学式のプログラムも掲示されてる。
 周囲には、紅白の垂れ幕も飾られてる。
 椅子も、きちんと整えられていた。
 私は、舞台で作業してるメンバーに声を掛ける。

「お疲れ様」
「お疲れ。後、これ掲げたら終わりだ」
 凌也が言う。
「ありがとうね。思ったより早く終わったね」
「そうだな」
「詩織ちゃん、そこから見て歪んでない?」
 拓人君が聞いてきた。
「右下がりになってるよ」
 私は舞台から少し下がってバランスを見て答えると、右側が上がっていく。
「ストップ。その位置で固定して」
 私の声で止まる。
 私も舞台に上がって、そこから会場を見渡した。

 明日は、ここに新入生とその保護者、それと在校生が入る。
 そんな中で、お祝いの言葉を言わなければいけない。
 新入生が、希望を持って過ごす事が出来るような言葉を私は、紡ぎ出せるのだろうか……。

「どうした、水沢?」
 そんな私に佐久間君が、声を掛けてきた。
「うん。何でもないよ」
「それならいいけど…」
「水沢、終わったぜ」
 凌也が声を掛けてきた。
「そう、ご苦労様。今日は、もう帰っていいよ。明日は、八時に集合よろしく」
 私の言葉に。
「オッケー。じゃあ、また明日」
 そう言って、メンバーは帰って行く。

 私は、最後のチェックを行う。
 窓は、開いてないよね。
 目で確認する。

 そして、体育館の入り口を閉めた。



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