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本編
17話 自分の弱さ
しおりを挟む翌朝。
ベッドから体を起こして、伸びをした。
昨日のモヤモヤが、嘘のように消えていた。
私は、制服に着替えてリビングに行く。
「おはようございます。」
お母さんに声を掛ける。
「おはよう。今日は、一段と早いわね。」
お母さんは、朝食の準備とお弁当の準備で、忙しそうだ。
「私も手伝うよ。」
そう言って、手伝いだした。
「行ってきます。」
私は、玄関で元気に挨拶して出る。
一歩、外に踏み出したら、護が待っていた。
「おはよう。」
「おはよう? 行こうか。」
学校に向かって歩き出す。
「護。腕、組んでもいい?」
「いいよ。」
護の腕に自分の腕を絡める。
「詩織。今日は、ご機嫌だね。」
護の言葉に。
「護と一緒に居てもいいんだって思ったら、嬉しくて」
私の言葉に護が、微笑む。
「オレも、嬉しいよ。その代わり、条件を必ずクリアするから、待っててくれるか?」
少し不安気な顔を此方に見せながら確認するように伺う護に。
「うん。護の事信じて待ってる。」
真顔で返す。それが、私の気持ちだしね。
「でも、その前にクリスマスイブのデート、無しにする?」
護に勉強を頑張って貰いたくて、そう言ったんだけど。
「それは、ダメ。息抜きのデートなんだから、ちゃんとさせて下さい。って言うか、絶対にするんだからな」
護の拗ねるような返答に驚かされる。
「本当に……。嬉しいな。護と一日一緒に居られるんだね。」
笑顔を向ければ。
「そんな笑顔見せるなよ。オレ、我慢できなくなるじゃんか……。」
意味深な言葉が返ってくる。
えっと、それはどういう意味で捉えたら良いの?
困惑してる私に。
「今日は、一緒に帰ろうな。昨日みたいな事は、無いから……。」
苦笑いを浮かべて言う護。
昨日みたいなことは、二度と御免です。
「……ん。じゃあ、生徒会の方が終わったら、メールするね」
「ああ。その間、優基と一緒に図書館に居るから……。」
護が、私の頭をポンポンと軽く叩いた。
私は、教室に入ると、自分の席に座る。
「おはよう、詩織。」
「あっ、おはよう、里沙。」
声が弾んでるのが、自分でもわかる。
「どうしたの? 昨日と違って、やけに嬉しそうじゃん。」
里沙が、不思議そうに聞いてきた。
「実は、昨日、嬉しい事があったの。」
今の自分は、満面な笑みを浮かべている事だろう。それぐらい、嬉しかったのだから。
「何?」
里沙が怪しげに私を見てくる。
「誰にも言わないでよね」
それだけ言って、里沙の耳元で昨日の事を話した。
「エーーーーッ。嘘でしょ!」
里沙の目が徐々に見開かれていき極限まで開ききると同時に大声が、クラス中に響き、注目を浴びた。
「里沙。声が大きいよ。」
私は里沙の口を手で塞ぎ、ジロジロと見てくる他の生徒に頭を軽く下げる私。
「それ、本当なの?」
確認するように聞いてくる里沙に私が頷くと。
「よかったね。詩織、ずーっと玉城先輩の事想ってたもんね。先輩も、これで安心だろうね。」
って、安堵の笑みを浮かべる里沙。
「?」
私が、不思議思ってると。
「詩織、里沙ちゃん。ちょっと良いか?」
教室の入り口で、優兄が呼んでいる。
私達は、顔を見合わせて、その方に行く。
廊下に出ると、護の姿もあった。
「どうしたの? 二人揃って……。」
「詩織、ごめん。オレ等、勉強会をする事になって、一緒に帰れなくなった。本当にごめん。」
二人同時に頭を下げる。
私と里沙は、二人で顔を無会わせ。
「勉強会なら仕方ないよ。受験頑張ってもらわないといけないしね。」
条件の事もあるしね。
何て、歓楽的に思っていた私だったけど。
「女の子居ないよね?」
と里沙が、二人に問い詰めだした。
「居ない。男ばっかりでやるから……。」
そしたら、 "男ばっかり" って言葉に疑問を感じた。
里沙も気になったようで私に頷く。
「護の家で、男女入り乱れて、勉強会するんだ。」
私は、護に向かってカマをかます。
すると。
「やっぱり、隠せないなぁ……。ごめん、クラスの奴等が、勉強を教えてくれって言い出して、オレの家親が返ってくるの遅いの知ってる奴ばかりで……。」
護が、ばつの悪そうな顔をする。
「そうですか。別に構いませんよ、私は……。一人でも平気ですから、頑張って勉強してくださいね。」
満面な笑みを見せながら私は、皮肉を言って、教室に入る。
いいもん。
私は、一人でも平気だもん。今まで、ずっとそうだったから……。
自分の席で、伏せる。
だけど、今のは可愛気が無かったかなぁ。
勉強会って、ちひろさんも来るんだろうなぁ。
学年が違うから、心配だよ。
優兄が一緒だから、大丈夫だとは思うけど、さ。
それでも、心配で仕方がないんだよ。
「詩織。玉城先輩怒ってたよ。」
里沙が、慌てて戻ってきて、心配そうに言う。
「そうだろうね……。」
「謝った方がいいと思うよ。」
里沙が心配そうに言う。
「うーん。でも、嘘付かれたからぁ……。私から謝るのも……。」
悩んでたら。
「どうした? 彼氏と喧嘩でもしたか?」
間髪入れずに佐久間君が聞いてきた。
「そんなの、するわけ無いじゃん。」
淡々と答える私。
「なーんだ。喧嘩したなら、俺にもチャンスあると思ったんだが……。」
それだけ言うと、去って行く。
「何、あれ?」
去っていく背中を里沙が怪訝そうな顔で見送ってる。
「里沙に、話してないよね。」
私が、意を決して口にした。
「何を?」
不思議そうな顔の里沙に。
「佐久間くんに告白された事」
と答える自分。
「それ、聞いて無いよ、あたし」
里沙の顔が強張った。
「護と付き合い始めた頃、文化祭の時に佐久間君に告白されて、断ってるんだ。でも、まだ諦めてくれなくて、体育祭の時も、護の前で “俺の事、気にして欲しい“ 何て、意味ありげに言うもんだから、護の方が、気にしてるんだよね」
私は、隠さずに話した。
「そんな事があったんだ。」
里沙が、険しそうな顔をする。
「だから隙があれば、俺のものにするぞって感じ。」
「じゃあ、生徒会メンバーにしたのって、不味くない?」
里沙が、心配そうに言う。
「あの時の状態で、立候補してもらったから、外せないでしょ。」
「それって、あたしのせいでもあるんだよね。」
里沙が、落ち込む。
「あの時は、里沙は何も知らなかったんだから、攻めることできないよ。」
「でも、それって、玉城先輩にとっては、一番の不安要素じゃん。その事、まだ伝えて無いんでしょ?」
里沙の言葉に縦に首を振る。
「言うタイミングが、掴めないんだ」
弱ってる私に。
「そっか……。でも、早めに言っておいた方がいいよ。じゃないと、また拗れていちゃうよ。」
里沙は、心配そうな顔をする。
「うん……。」
早く打ち明けたいって思いはある。
だけど、どのタイミングで言えばいいのかわからない。
「水沢。お前、来年度の生徒会長になったんだってな。まぁ、頑張れよ。」
突然、担任に声を掛けられて。
「はい。頑張らせて頂きます。」
って、堂々と答える自分が居た。
昼放課。
私と里沙は、お弁当を食べ終えて、午後一の体育の為に更衣室に向かっていた。
「午後一の体育って、嫌だよね。」
って、私が言うと。
「って言うか、詩織の場合は、運動が苦手なだけじゃんか、やれば、出来るのに……。」
里沙が、真顔で言う。
「好きな競技ならいいけど、苦手の競技だとどうしても、逃げ腰になるんだよね。」
「それが、詩織の悪い所だって。」
何て、話ながら歩いていたら、前方に優兄と護が、姿が……。
うわぁ……。
タイミング悪すぎ。
朝、あんな態度とっちゃったから、顔会わせたくないんだけど……。
私は、思わず俯いた。
「あ、里沙ちゃん。」
優兄が、里沙に声を掛ける。
私は、素知らぬ顔で横を通り抜けようとした。
が、腕を掴まれてしまった。
「詩織……。さっきは、ごめん。お前が怒るのも無理も無いな。図書館でする事にしたから。一緒に帰ろう。」
護が、優しく言い出した。
「別に気にしなくていいですよ。一人で帰えれるから、最初の予定通りにしてくださっても。」
強がりを言う自分が、もどかしい。
可愛くないと自分でも思う。
どうせ、クラスの女子を送っていく羽目になるんだから、一緒に居たくない。
「何時まで、怒ってるんだよ。じゃあ、どうしたら、許してくれるんだよ。」
護の困った声。
「じゃあ、ここでキスして。」
私は、護の顔を覗き込む。
護は、徐々に顔を赤くする。
「ずるいぞ、詩織。そんな可愛い顔で言われたら、言う事聞かないわけにいかないじゃん。」
そう言って、抱き締めてきたかと思ったら、私の両頬を挟むようにして手を置き、唇が重なる。
私は、ビックリしすぎて、目を閉じる事が出来なかった。
まさか、本当にこんな往来のあるところで、してくれるなんて……。
私は、嬉しいのと恥ずかしいのが、半々で、頬に熱を帯始める。
「……ったく…。こんな所で、させるなよ……。」
護が、抱き締められ耳元で囁く。
見ると、護の顔も赤くなってる。
「これで、許してくれるか?」
恥ずかしさで、言葉がでなくてコクりと頷く。
「じゃあ、私からも一つ言わなきゃいけない事があるの。絶対に怒らないでね。」
「何だよ。」
私は、護に怒られる覚悟を決めた。
「実は、生徒会メンバーに佐久間君が、入ってるの……。」
護の顔が、一瞬固まった。
「おい! 嘘だろ。何で、あいつが、入ってるんだ!!」
やっぱり、怒るよね。
「詩織、ちゃんと説明しろ!」
って、言った時だった。
キーンコーンカーンコーン……。
予鈴が鳴る。
「ヤバイ。遅刻しちゃうよ。詩織、早く着替えに行こう。」
里沙に腕を引っ張られる。
「詩織。後で、ちゃんと説明してもらうからな!」
護の声が、廊下に響いた。
放課後。
私は、生徒会室に居た。
「今日は、雑用の説明……って言うよりは、やって覚えてくれ。」
生徒会長が、席を立って動きだす。
私もそれに習い動く。
「時間がある時は、校内の点検とかもやるように勤めてくれ。」
「点検とは?」
「例えば、廊下の蛍光灯が切れていたり、水の出しっぱなしとか。教室の電気の点けぱなしとか……。後は、掃除道具の点検かな。」
「本当の雑用ですね。」
「そういう事に気を付けて、楽しい学校生活を守るのも、生徒会の役目だからな。肝に命じときな。」
「わかりました」
「後は、資料の整理。一番厄介な事なんだがな。今までの文化祭の経費やら、厄介な事が書かれてあるノートがある。それらをチェックしたり、書き足したりする事が、主なった事柄だ」
私は、メモを取る。
猫の手も借りたくなる時が来るかも……。
「以外と、やることが多いんですね。」
「そうだな。俺も、去年同じ事を思った」
生徒会長が、苦笑いながら言う。
「俺も、引き継ぎが終われば、ここに来る事も無くなる。寂しいかもな。」
思いを馳せる、会長。
「って事は?」
「ああ、明日からは、君達が生徒会を引っ張っていってくれ。」
「はい。今までご苦労様でした。」
私は、頭を下げた。
「おいおい。まだ、最後に明日に生徒総会があるから、それが本当の意味での引き継ぎだから。」
「はい。」
「まぁ、何にせよ。水沢なら、大丈夫だ。下級生からの信頼もあるしな。じゃあ、俺等は、撤収するよ。」
そう言うと、前役員メンバーが、全員出て行った。
残った、新メンバーを見渡す。
「みんな、自分の役割は覚えた?」
「はい!」
「おうよ!」
いい返事だ事。
「じゃあ、これから、一年間、私達の手で、学校をより楽しくそして守っていくよ。」
私の言葉に皆が頷いた。
凄いな。
昨日、今日で、役割を覚えてしまうメンバーに感心してしまう。
「詩織。新規生徒会メンバーの紹介を全校生徒に報告しないと……。」
里沙が言う。
「里沙。その事だけど、会長が、明日生徒総会で紹介するみたいなこと言ってた。」
「そっか、じゃあ大丈夫だね」
里沙が、安心する。
「詩織ちゃん。役員メンバーを書いて、掲示板に貼りたいのだけど、紙って何処にある?」
柚樹ちゃんが聞いてきた。
「ちょっと待って。今、取ってくるから。」
私は、席を立つと、資料室に入って棚を見る。
あった。
「柚樹ちゃん。何枚いる?」
「校内の掲示板全部だから、七枚かな。」
私は、枚数を数える。
「はい、柚樹ちゃん。」
「サンキュー。」
「手伝う事ある?」
「うーん。大丈夫。凌也君、字が上手だから、手分けして書くから。」
「そっか。じゃあ、何かあったら言って。」
「うん。」
柚樹ちゃんは、用紙を持っていくと、凌也と仲良く書きだした。
「後は私が、明日代表して挨拶するだけだね。」
これから、色々と忙しくなるだろうけど、楽しくもあるのかなぁ。
「よし。明日から、新規メンバーで、楽しくやって行こうね。柚樹ちゃん、凌也書けた?」
私は、二人に声を掛けた。
「書けたよ。」
「じゃあ、今日は、これを手分けして掲示板に貼ってから帰っていいよ。」
私は、二人が書いたポスターを持って言う。
「俺は、三年生の掲示板に行くよ。」
佐久間君が、一番遠い場所を言う。
「私は、一年生の掲示板に行くよ。」
忍ちゃんが言う。
「俺は、体育館の掲示板に。」
拓人君が言う。
「俺は、特別棟に行く。」
凌也が言う。
「あたしは、二年生へ。」
里沙が言う。
「じゃあ、僕は、二回の渡り廊下に貼ってくるよ。」
柚樹ちゃんが言う。
「私は、職員室に鍵を返しに行くついでに掲示板に貼ってくるね。解散。」
私は、生徒会室の鍵を持ち、部屋の電気を消して、部屋を出る。
ドアに鍵をかけると。
「お疲れ。明日も宜しく。」
一人一人の顔を見て言う。
そして、職員室に向かった。
「失礼しました。」
鍵を元の場所に返し、職員室にある掲示板に柚樹ちゃんが書いてくれたポスターを貼る。
よし、今日はこれでおしまい。
私は、鞄から携帯を出して、護にメールする。
直ぐにメールが、返ってきた。
“了解“
短い文面だけど、さっきの事があるから、仕方ないよね。
私は、下駄箱に向かった。
下駄箱には、護の姿はまだ無かった。
私は、傘立てに軽く座り、護を待つことにした。
暫くすると、護が現れた。
その横には、ちひろさんも……。
護のバカ!
何で、ちひろさんと一緒に来るかなぁ。
また逃げ出したくなるじゃんか…。
もう、隠れちゃおうかな。
私、本当に弱い。
自分に自信がないだけじゃない。
ちひろさんに対して、嫉妬してる。
そっと物陰に隠れた。
二人のやり取りを見ていると、ちひろさんが一人で護に話してるだけで、護は相手にしてない。
私は、護の方をずっと見ていた。
視線に気づいたのか、護と目が合う。
「詩織。何時からそこに居たんだ。」
護が近付いて来る。
その腕には、ちひろさんが掴まっている。
さっきまで、してなかったよね。
私の存在に気付いた途端にしたんだ。
確信犯だ。
って言うか、ちひろさん、本当に護の事が好きなんだ。
って、わかった。
その時。
「ちひろ、放せ!」
護低い声。
私には、そんな声では、怒らない。
護はちひろさんの手を無理矢理解くと、私に肩を抱く。
「お前、また隠れて……。」
そう言いながら、もう片方の手で、私に頬を触る。
「何時から、そこに居たんだよ。顔が冷たいし……。」
って、私の頬を暖めるように包み込む。
「護が来る、三十分前ぐらいかな。」
自然と視線が下にいってしまう。
「まったく……。早く出て来いよな。また、昨日みたいに帰ったかと思ったじゃんか」
護が、心配そうに言う。
「ごめん。でも、私、お邪魔かなって思ったから……。」
「何言ってるんだよ。オレ達、婚約するんだろ。もっと、自信持ちな。オレにとって、一番大事な女なんだからな。」
なんか、ちひろさんに聞かせてるみたい。
当のちひろさんは、私を睨み付けてるし……。
ごめんなさい、
ちひろさんには悪いけど、護だけは、譲れない。
護が居てくれないとまた私は、殻に閉じ籠ってしまう。
今度は、自分を取り戻せないかもしれない。
「ほら、送っててやるから、帰ろう。」
護が、笑顔で言う。
私は、頷く事しか出来なかった。
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