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16話 思い…春菜
しおりを挟む先生が来てくれて助かった。
あのままだったら、真理に嫌な思いばかりさせるばかりか、自分まで要らないことを言ってしまいそうだった。
それに、あっ君に対しても、何か言っちゃいそうで、怖かったんだ。
女の子に囲まれて、ヘラヘラしているあっ君に対して、余計な事を言っちゃいそうだった。これって、嫉妬……そんな訳ないよね。でも、私の中に生まれたモヤモヤは消えないんだよね。
何で、こん何なってるんだろう?
自分でも訳のわからないままだった。
「春菜。気分悪いの?」
突然声をかけられて、顔を上げれば、心配そうな顔をしてこちらを伺ってるあっ君がいた。
周りは、みな帰り支度を始めていた。
あれ、もしかして私授業全然聞いてなかったみたいだ。
どうしよう……。
オロオロし出す私に。
「大丈夫、春菜?」
猫耳を垂らして私を見ているあっ君。
「う、うん。大丈夫だよ。」
そう答え笑顔を向ける私。
だけど。
「嘘、だよね。春菜、無理してるでしょ? 少しでも、僕に委ねてよ。僕は、春菜の泣き顔なんて、見たくないよ。」
あっ君には見透かされてるようで、怖くなった。
でもね、あっ君の手が優しく私の頬を撫でて、目尻の雫をそっと払ってくれる。そんな彼に "ドキドキ" させられてる。
「あっ君。私……。」
自分から、声をかけようとした時。
「敦斗君。一緒に帰ろ。」
って声が聞こえてきた。
あっ……。
私は、とっさに下を向いた。
見られたくなかったから、あっ君以外の人に弱味を見せたくなかった。
変なプライドだと思うけど、それが私だから。
「ごめん、先約があるから次回にでも誘って。」
あっ君が、誘いを断ってる。
次回って、その時は行くのかな?
何て思いながら、やり取りをぼんやりと聞いていた。
「ほら、春菜。帰るよ。」
あっ君が、私の鞄と自分の鞄を肩にかけて、私の手を取って歩き出した。
校内を手を繋いで歩くなんて、恥ずかしく顔をあげれない。
しかも、噂されてる転校生と誰からも疎まれてる私じゃあね。
だって、廊下に居る殆どの生徒が、私たちを振り返ってるんだもの。
私は、あっ君がどんな顔をしてるのか気になりチラッと見ると、真顔で視線だけで威嚇していた。
まるで、猫にように……。
普段、茶目っ気のあるあっ君とのギャップがありすぎて、また、ドキドキと心拍が上がる。
何で、こんなに苦しいんだろう?
あっ君と居るだけなのに、嬉しいって思いながら、不安だったり感情が溢れてくる。
あんなに閉ざしていたものが、一気に押し寄せてくるんだ。
なんだろう、この感情の渦。
私には、まだわからない。
これが、なんなのか。
「なぁ、春菜。もしかして、僕が君の友達に要らないことを言ったから、怒ってるの?」
不意にそう言葉が聞こえた。
どうしてそう思ったのか気になってあっ君の顔を見る。
無表情の様に見えるけど少し辛そうな顔をしてる。
怒ってる?
私が?
あっ君には、そう見えるの?
「怒って、無いよ。ただ、誰にも頼れなくて……言えなくて、あっ君が戻ってきてくれたことに安心しちゃった。」
私は、素直に言葉を告げた。
怒っては、いないの。
ただ、友達とどう接すればいいのか、わからなくなってたから……。
「それならいいけどさ。僕は、春菜の本当の笑顔を見せてくれるまで、傍に居るから、ね。あっ……えっと、春菜がよければ、ずっと一緒に……。」
最後の方は、しどろもどろになってて、あっ君の顔を見れば、真っ赤な顔をしてた。
私の視線に気付いたのか。
「余り、見ないでよ。」
そう言って、繋いでない方の手で口許を隠して、そっぽ向いてしまう。
よく見れば、耳まで赤くなってて、そんなあっ君が、可愛いって思えた。
「クスクス……。」
忍び笑いをしてたんだけど。
「な、笑わないでよ。僕は、本当に春菜の事が心配なんだからね。」
あっ君が、慌ててそう言う。
「あっ君。ありがとう、ね。」
自然と溢れた言葉。
その言葉にあっ君が驚いた顔をする。
その顔も好きだな。
何て思いながら、密かに胸に仕舞い込んだ。
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