28 / 31
買い物で遭遇
しおりを挟む冷蔵庫を開けて、中を見たが残り物しかない。
買い物に行けてないからなぁ。
どうしようか……。
「どうしたんだ、夏実?」
背後から声がして、振り返ったらお父さんが居た。
「晩御飯を作ろうとしたら、残り物しかなくて……。」
困り果てて、そう口にすれば。
「ん? それでいいぞ」
私の言葉にお父さんは、別に構わないがって顔をする。
「慶太の友達も食べていくって言うから……。」
あえて、慶太の友達だと言ってはみたものの、なんだか隠し事してるみたいで、罪悪感が芽生えてくる。
「それは、ちょっと困るな。よし、お父さんと買いに行くか。」
と鶴の一声。
でも。
「診察は?」
私が聞けば。
「今日は、午後休診日だぞ。」
と返された。
あ、そうか。
ならば。
「車出してくれる?」
おねだりしてみる。
「ん? いいけど、何を買うんだ?」
お父さんの疑問に。
「重い物?」
って、疑問で返してみたら、察しがついたらしく。
「わかった。」
お父さんが、快く車を出してくれた。
実は、調味料類がもうすぐ切れそうだったのだ。
油とか、醤油やみりんに料理酒も、後お米。
慶太が、沢山食べるからすぐになくなっちゃうんだ。
普段は、私が自転車でえっちらおっちらと運ぶからに往復が当たり前。慶太は、部活があるから一緒に行くことはまず無い。
で、後は冷凍が利く魚介類と肉類。それと野菜や練り物を少々。
うーん。後は何かいるっけ?
「夏実。どれだけ買うんだ?」
お父さんが、カートを押しながら呆れた顔で私を見てくる。
カートを見れば、一台丸々物で溢れていた。
あはは、ちょっと買いすぎ?
でも、仕方ないよね。必要な物だし。
何て苦笑を浮かべながら。
「後ね。お弁当箱を1つ。」
そう告げれば。
「弁当箱って、夏実のはあるだろ?」
怪訝な顔をして言うお父さんに。
「私が使うんじゃなくて、ある男の子に作ることになたらから……。」
本の些細なことだったんだけど、そうなったからには専用のお弁当箱があった方がいいかなって、思ったんだ。
「そうか。なら、お父さんはここに居るから、見ておいで。」
お父さんに笑顔で見送られながら、お弁当箱が置いてあるコーナーへ足を向けた。
うーん。蓮くん一杯食べるだろうから、大きい方がいいよね。
……。
何度も見て回り、これだと思ったのは、シンプルな濃紺の大きめなお弁当箱。
私は、それを手にしてお父さんのところに戻った。
「見つかったか?」
お父さんの言葉に満面の笑みを浮かべて。
「うん。」
って答えた。
「よし、じゃあレジに並ぶぞ。」
お父さんが、カートを押してその後を着いていく私。
「あれ? 結城さん」
声をかけられて、振り返ったが私は小首を傾げる。
どちら様?
私が首を傾げたのを見て。
「えっ、覚えてない? って、仕方ないのか……。慶太の奴が、俺を排除してたし……。」
って遠い目をして言う。
慶太の事を知ってるなら、同級生か上級生だろう。
だけど、私には全然心当たり無いのだが……。
丸顔に茶髪、目はつり上がっていて、鼻は高めで唇は薄め。人懐っこそうな笑顔を向けてくる。
何処かで見た覚えはあるんだけど……。
「……もしかして、新見くん。」
お父さんがそう言った。
新見……。
あっ。
「やっと思い出してくれたか。」
彼が、ホッとしたような顔をする。
新見くんは、中学では野球部に入っていたため丸坊主だった。だから、なかなか思い出せなかった。
お父さんのフォローがなかったら、気まずかったかも。
「先生。その節は、色々お世話になりました。」
新見くんが、お父さんに頭を下げる。
「否、俺は、何もしてないから、取り敢えず頭をあげようか。」
お父さんが、オロオロし出す。
ん?
何かあったの?
「先生のお陰で、普通の生活はできてるんで。」
新見くんが言うから、私はお父さんと新見くんを交互に見る。
「それはよかった。俺たち急いでるから、また。」
お父さんはそれだけ言って、歩き出してる。
「新見くん。またね」
私は、そう声をかけてお父さんの後を追った。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
3年振りに帰ってきた地元で幼馴染が女の子とエッチしていた
ねんごろ
恋愛
3年ぶりに帰ってきた地元は、何かが違っていた。
俺が変わったのか……
地元が変わったのか……
主人公は倒錯した日常を過ごすことになる。
※他Web小説サイトで連載していた作品です
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。
猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。
『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』
一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる