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アピール
しおりを挟むハァ~。
良いことあるかもって思ってたら突然の告白って……。
しかも、人気者の大谷から……。
しかし何で、私なんかに……。
教室に入ると幸子が私のところに来た。
「おはよう。ねぇねぇ、朝から大谷くんが、何のようだったの?」
興味津々で聞いてくる幸子。
その声は、以外と大きくて教室に響いてる。
そして、幸子の言葉に教室に居た女子も聞き耳を立ててるようす。
厄介事になりそうで、頭を痛めながら。
「告白された。」
私は、小声でそう答えた。
「エーーーッ!」
幸子が叫ぶ。
思わず耳を塞いだ。
煩い。
その驚きの声にクラス中が幸子の方に注目がいく。
私だって、信じられないんだもん。
幸子は苦笑いを浮かべながら、周りに頭を下げてから。
「……で、もちろんOKしたんだよね?」
幸子が真顔で私の顔を覗き込んで聞いてくる。
目は、不安そうにしてる。
何で、幸子が不安になってるの?
内心不思議に思いながら私は、首を横に振った。
「何で?」
不思議そうな声でそう聞き返してくる彼女。
何でって……。
「私なんかよりも相応しい娘居るし、私自身が、そういう対象で見れないのに応える事出来ないよ。」
私は、自分の想いをそのまま告げた。
幸子の顔が、ホッとしたような嬉しそうにしてる。
私が断ったことが、そんなに嬉しいわけ?
わかんないよ。
「そっか……。」
どことなしか、弾んでる声に疑問が浮かぶが。
「でもね『諦めないから!!』って、言われちゃった。」
私が、困ったように口にすれば複雑そうな顔をして。
「それって、これから猛アピールするからってことじゃないの?」
嫌そうな、嬉しそうな顔を交互に見せる。
世話しなく顔付きが変わる幸子を見ながら。
「そんなこと言わないでよ。」
私は、そう言って幸子をあしらった。
何か、面倒なことが起きそうだと思った。
昼放課。
私が、幸子とお昼を食べようとした時だった。
「キャー、蓮くんどうしたの?」
女子の黄色い声が教室に木霊する。
声の方を向けば、教室に堂々と入ってくる大谷くんの姿。
今まで、入ってくる事無かったのに。
彼が、キョロキョロと周りを見渡したかと思ったら、私と目が合うと。
「ちょっとごめん。」
囲っていた女子達を押し退けて、こっちに来る。
何だって言うの?
「一緒に食べてもいいか?」
大谷くんが、近くの空いていた椅子を持ってきて、私たち(主に私)に向かって聞いてきた。
断る理由もないし……。
「いいですよ。」
そう答えながら、幸子の顔を伺う。
嬉しそうな顔と邪魔だという顔を見せる。
そんな光景を見ていた周りが、ザワつき出す。
「ねぇ、夏実ちゃん。その卵焼き美味しそうだね。一つ頂戴。」
大谷くんが、私のお弁当箱を覗き込んで言う。
これが食べたいの?
「こんなんでよければ……。」
私は、お弁当箱の片隅にある卵焼きを差し出す。
大谷くんは、嬉しそうに卵焼きを手にして、口に運ぶ。
「甘くて、美味しい。」
大谷くんが、笑顔で言う。
甘い方が好きなのかなぁ?
「お口にあったのなら、よかったです。」
私は、クスリと笑みを溢した。
「大谷くん、私の唐揚げあげる。」
って、幸子がずいっとお弁当箱を大谷くんに向けてて、ニコニコしている。
幸子が、やたらとご機嫌なようだ。
「えっ、あ、ありがとう。」
大谷くんは、戸惑いながら幸子の弁当箱から唐揚げを取り口にいれる。
「……」
「……」
一瞬の沈黙。
その後二人して、楽しそうに話し出す。
何だろう?
この違和感は?
まぁ良いか。
結局、何事もなく過ぎ去る昼食だった。
大谷くんと幸子が、二人でたわいのない話で盛り上がってるのを横でただ聞いてるだけの私。
いや、別に良いんだけどね。
うん。
どうせなら、二人で違う場所で話してくれた方がいいかな。
何せ、先程からギャラリーの目が怖いことになってるんだよね。
まぁ、私は関係ないけどさ。
「夏実。次、体育だよ。急いで。」
幸子が、慌てて私にそう告げる。
「えっ、あ、うん。」
って、幸子が悪いわけで、私は悪くないよね。
慌てさせる幸子を横目に体操服の入ってる袋を手にし、教室を出る。
その瞬間。
「夏実ちゃん。今日は怪我しないようにね。」
って大谷くんが、顔に笑みを浮かべてヒラヒラと手を振っていた。
私の事存在忘れてた訳じゃないのね。
何て思いながら、更衣室に向かった。
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