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第1章 疫病と言う夫婦喧嘩
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しおりを挟む可愛い奥さんをたっぷりと堪能した後、僕は子ども部屋に向かった。
五日間もお預けを食らったのだから、仕方ないでしょ。
で、奥さんは気絶するように眠ってしまいましたが、何か。
ともあれ、留守番をしていた子ども達に次の休みは何処に行きたいか聞くためである。
子ども部屋は、二階の南側の日当たりの良い部屋を宛がっている。
部屋のドアは開いており、兄が子ども達と遊んでくれていた。主にユリウスだが。
「兄さん、ありがとうございます。」
僕が声を掛けると兄は振り返り。
「何、良いってことよ。独り身の俺としては、甥っ子と姪っ子が癒しだ。」
ニコヤカに笑ってるようだ。
だがしかし、ガッチリとした体格の上に強面の顔付きの為、笑ってるなんて長年の付き合いがなければ、分かる筈もない。
「父様!!」
「とおたま!」
上の二人が僕に抱きついてきた。
僕は、二人を抱き上げる。
流石に七歳の息子を片腕で抱き上げるのは、辛くなってきたな。
何て思ってると僕の耳元で娘が、キャッキャと喜んでくれている。それに比べて息子は恥ずかしいのか。
「父様。降ろしてください。」
顔を赤らめて、腕の中で抗議してくる。
「降ろして良いのかい? 折角次の休みは何処かへ出かけようと思っていたのですが、無しで良いんですね。」
僕はそう言いながら、息子を降ろそうとすると。
「待ってください。父様は、何処へ行こうと考えてるのですか?」
ユリウスが静止を求めて僕の案を聞いてきたが、今回は留守番をしてくれていたお礼なので、子ども達に行きたい場所を挙げてもらうつもりだ。
「今回は、何も考えていないんですよ。ユリウスは、何処へ行きたい場所が有るのですか?」
そう聞き返すと。
「あのね。僕、湖の畔でピクニックしたい。お弁当をもって、皆で。勿論アーク叔父さんも一緒に。」
頬を蒸気させながら、言う息子だったが。
「ごめんなユリウス。俺は行けそうにないな。仕事が立て込んでいてそう簡単に休めそうに無いんだ。本当にごめんな。」
兄が、息子の目線に会わせて申し訳なさそうに話している。
確か、近々隣国の建国記念パーティーに王太子が招待されていて、その護衛に兄が行くことになっていた筈だ。
今回の休みも、宰相の一声でもぎ取ったと聞いていたので……。
「そうなんですか……。じゃあ、叔父さんの休みの時に一緒に行きたいです。」
少し落胆したものの、直ぐに名案だと言わんばかりの顔をして提案してきた。
「ん? それだと大分先になってしまうぞ。」
と兄に言われてシュンと項垂れる息子。
今までのやり取りを見ていた娘が。
「あのね、とおたま。まちがみわたちぇるおかがありゅって、にゃにーからきいちゃの。わたち、しょこにいきちゃい。」
ニコニコしながら、自分の意見を言ってきた。
兄の意見は却下されたと思い、一心不乱に口にしたのだろう。
まぁ、王都を見渡せる丘は確かに有るが、そこは馬車が通れるように舗装されていない為、途中から歩く事になる。三才のアンには少し厳しいかもしれない。
そんな事を考えていたら。
「あっ、僕も行きたい!観てみたかったんだ、王都を少し高いところから。」
目を輝かせて言う息子。
「そこに行くには、途中から馬車を降りて歩く事になるが、良いのかい?」
僕は、言い聞かせるように口にすれば。
「うん。僕、頑張って歩くから、父様はアンとキースを抱っこして行けば良いでしょ。」
ユリウスが得意気に良い、僕の方を見てくる。
アンとキースを抱いてなら無理ではないと思うが…。
何かあった時の対応が遅れそうだ。
だが、子ども達の期待の目に、ダメとは言いづらく。
「分かった。じゃあ、そうしようか。母様には僕から伝えておくからね。」
了承の言葉を告げる。
「うん。……母様は、大丈夫なのですか?」
先程と討っ手代わり、泣きそうな顔で僕を見てくる息子。
その顔は、彼女にそっくりで可愛い。
コロコロと変わる表情は、僕を和ませてくれる。
「大丈夫だよ。旅の疲れが出て寝てるだけだからね。」
僕は、淡々と告げる。
まぁ、お仕置きの性でもあるが。
「かあたま、ねんね?」
アンが不思議そうな顔をして聞いてくる。
「そう、母様は寝んね中だからアンも静かにここに居ようね。父様も一緒に居るからね。」
娘を諭すように話すと。
「あい」
僕の言葉に素直に返事をするが、分かってないんだろうなっと思ってしまう。
「誰が疲れさせたんだか……。」
ボソリと兄の声が聞こえた。
その声に子ども達が反応して、二人が顔を見合わせながら、疑問符を浮かべている。
僕は素知らぬ顔をしたがね。
その後、二人を降ろし、キースをナニーから受け取り頬にキスを施すとくすぐったかったのか、キャッキャとはしゃぎ出した。
僕は暫くの間、子ども達との触れ合いを楽しみ、離れていた分を取り戻すかの様に過ごした。
一頻り遊んで、僕は執務室に籠った。
今回の報告書と兼ねてからの村長夫婦の現状を終始全てを宰相様への報告に記し、教師の件も一緒に書き連ねた。別紙に奥さんの事もね。
さて、今回の件で家の奥さんは懲りただろうか?
また、何かやらかしそうだが、暫くは大人しくしているだろう。
何せ、あの子達の兄弟が増えるのだから……。
後日談。
奥さんは、やはりと言うか、妊娠しました。
まぁ、あれだけやればなぁ……。反省はしませんよ。
それが分かったのが、子ども達が楽しみにしていたお出掛けの日で、延期が決定した瞬間のがっかりした顔が忘れられません。
奥さんも、子ども達の顔を見て辛そうな顔をしていましたが、悪阻が酷くて外に出かけられないので仕方ありません。
そこで、我が家の広い庭で大きめの布を敷いてピクニックです。
庭なら奥さんも気にせず寛げるかと思ったのですが、どうやら今回は匂いに敏感らしく、バラの甘い匂いがダメで外に出られません。
子ども達も残念がっておりましたが、こればかりは仕方ありません。
この日は、久し振りに子ども達と大はしゃぎさせて頂きました(奥さんが構って挙げられない分も含め)。
奥さんは、サロンから僕たちを見て微笑んでいました(時折子ども達が振り返り手を振ってるのを振り返したりしていた)。
うん、家族が増えることは嬉しいですが、責任が増えることは重苦しいです。
ですが、僕は護るべき者達が居ることで強くなれます。
この子達の成長が楽しみでもあります。
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