僕の可愛い奥さんは……

麻沙綺

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第1章 疫病と言う夫婦喧嘩

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  僕に魔法も才能があったらって、こんな時に思ってしまう。
  
  閉じ込められた部屋から窓の外に目を向ければ、先程通って来た麦畑が広がっています。ここからなら奥さんを見つける事が出きるかもしれませんね。
  

  窓際に近付き、周辺を見渡し彼女の姿を探す。数分見渡した後に見つけましたが、何やら揉めてるようですね。
  僕の知らない男に言い寄られてるんですが、冷たくあしらっているのに男は怯むこと無く彼女の腕を無理矢理掴み引っ張って行こうとして要るのが分かります。
  怒りでどうにかなりそうですが、自分では助けに行けない自分が、もどかしくて堪りません。
  奥さんのピンチだと言うのに……。

  助けに行けない分、胸の内で叫びます。
  
  "僕は此処に居るよ!
   僕の可愛い奥さん気が付いて!!"

  胸の中で叫んでたと思ったのですが、口に出ていたのかもしれません。何せ無意識の事ですから……。
  僕に叫びに応じるように奥さんが此方に振り向き驚いた顔をするのです。
  彼女から見れば、僕は囚われの王子って処でしょうか。
  王女が王子を救うって、何だか情けないですが……。
  それが家なので、仕方ないでしょうけど……。

「旦那様……。」
  彼女がそう口にした気がする。
  そう言えばユリウスが、『父様が、心配』と言ってましたね。この事を指してるとすれば、家の息子凄すぎるとしか言えません。
  何時の間にか、男からの拘束を逃れて、僕の目の前で奥さんが涙をポロポロと溢してるではありませんか。
  一体どうしたと言うんだろうか?
  窓の向こうを見れば、男がキョロキョロと辺りを見回してる姿が、滑稽に思える。
「旦那様……。」
  鼻をグズグズと啜りながら僕に身を寄せながら僕を呼ぶ奥さん。
  何に泣いているのでしょうか?
  余程怖い思いしたのでしょう。
「ジュリー、そんなに泣いたら、綺麗な目が溶けてしまうよ。」
  と言いつつ彼女の涙に口を寄せ吸い取る。
  うん、しょっぱい。
  でも、これで何時もの笑みを見せてくれるのなら良いと思う。
「ジュリー、何があったの? それにその腕の痣は、あの男が浸けたのかな?」
  疑問を口にしてるようで、決めつけてる言動を自分で行ってる事が可笑しく感じる。
「これは……。」
  彼女が慌ててそれを隠そうとするが、僕はそのまま抱き締めた。
「僕には言えない事なのかな? それともあの男と疚しい関係にでもなった?」
  優しい声で耳元で囁けば、慌てて首を横に振る。
「旦那様以外のヒトに触られるなんて、ゾッとしてしまいます。決して身体を許していません!」
  胸を張って堂々と言い切るが、目に涙を浮かべながらでは説得力無いが、それはそれで可愛いと思うんだよ。
  彼女の芯が通った行動は誇りに思いながら、妬ましくも思える。
  こんな彼女を屋敷に閉じ込めておきたいという衝動が起きるが、到底無理だと断念する。
  三人の子供を産んでも魅力的な彼女を他の男が放っておくことなんて、出来ないだろう。
  僕は、彼女の言葉を鵜呑みにすることが出来ず。
「そう、じゃあ確認しますね。」
  と口にしていた。
  嫉妬心丸出しだが、顔には出てないと思います。
  彼女は、自分の潔白を示すために僕の前で恥ずかしそうにしながら、服を脱ぎ出したのだから。
「少し待ってください。」
  陽の光の中で見るのも一興だと思うのだが、流石に彼女の裸体を他人に見られるのは、僕が我慢できないので、カーテンを閉めようと動いたのだが、僕の意図を読んで彼女が一斉にカーテンを閉めた。
「有り難う、ジュリー。」
  僕が言えば、ニコリと笑みを浮かべる。
  そんな彼女に僕は笑みを浮かべて。
「隅々まで見せて。」
  と言えば恥ずかしそうにしながら服を脱ぎ捨てる彼女。
  そして、わずかな光の中で僕は彼女の全身をマジマジと見る(彼女の身体は、恥ずかしさで本の少しピンク色に染まっている。)。
  何処にも痕跡あとは、見当たらないが、万が一ということもある。
「触っても?」
  僕は、彼女の同意を求める。
  彼女は、顔を真っ赤にしてコクりと頷いた。
  そこから、彼女の全身を隈無く触診していく。時折彼女が身を捩るが、逃げようとしてるわけではないのでそのまま触診する。
  彼女が辛そうな顔をしだしたが、僕には関係ない。
「旦…那様……」
  声を震わせて呼ぶので。
「どうしたのですか? そんなに震えた声を出して。これは罰ですよ。僕の言うことも聞かずに飛び出して行ったね。」
  苦笑混じりで言えば、イヤイヤと首を激しく振る彼女。
「我慢してくださいね。ここは他所様のお宅ですから、あなたの可愛い声を誰にも聞かせたくないんですよ僕は。」
  えぇ、独占欲丸出しですが……。
  僕の言葉に、彼女は諦めたのか頷いた。
「もう良いですよ。服を着てください。っと、その前に……。」
  僕は、彼女の彼女が服を着る前に首筋と胸の谷間にくっきりと印を残した。その間、彼女はくすぐったそうに身を捩っていた。


  その後、ここの義理の息子だと名のって男が入ってきて、ジュリーを連れて行こうとするから。
「僕の婚約者がお世話になっています。彼女、余りに僕が仕事を優先するものですから、突発的にこんな所まで来てしまったのです。僕はそんな彼女を彼女の父親公認(仕事在り気です。)で向かえに来たんですよ。そしたら、この部屋に閉じ込められましてね。しかも貴方の奥さんに。ですから、出して貰えませんか? 貴方が僕の婚約者にした事は、宰相様に筒抜けですよ。何せ、彼女は宰相様の愛娘ですから。」
  僕は一気に捲し立て、最後に爆弾を投下する。
  これ、で大抵は手を退くんだけどね。
  目の前の男は、僕を疑ってるみたいだ。
「証拠なら此方に在りますよ。」
  僕はジャケットの内ポケットから宰相様自記筆の手紙を男に手渡すと男は慌て出し、部屋を出て行った。
  
  若い女性を見れば見境無く手を出す男(現村長)、それに嫌気を出す女(急村長の娘)のゴタゴタに僕の奥さんを巻き込むとは、どうしてくれようか……。


  元は、村長の娘があの男に惚れたのが始まり。
  村長は、反対してたのだ。彼の本質を見抜いていたから。だが、娘がどうしてもと言い張るから許してしまい、家に入った男に仕事のノウハウを村長が教えるも、全然覚えようとはしない。だが、村民には権力を見せびらかす始末。村長も考えを改めて、娘に仕事を教えようとしたが、これまた "何で私がやらないといけないの?" と反抗を見せたために村長は頭を抱えていたところに病が発症し、帰らぬ人となった。後に残る娘夫婦は、どうしたら良いか分からずお互いに仕事を擦り付け合う日々。村民を無視して喧嘩三昧している二人を見かねた村民が、王城に訴状しに来たという、本当に傍迷惑なだけの痴話喧嘩。

  まぁ、最初に旧村長の娘に言わなかった事は、内情を知りたかっただけなんだが、内の奥さんまで巻き込んだ時点で、容赦しないが、な。

  
  キツイお灸を据える為に、鬼教師をこの村長宅に派遣して貰って、夫婦揃って勉強して貰うしかないだろう。村民の為にも頑張って欲しいものだ。
  まぁ、使い物になら無ければ、新たな村長が生まれるだけだし、な。








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